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第6話 眠らない熊(1)

 銅を製錬し、フィラメントを作って開拓地に灯りをともしたギジロウ達。明るくなった開拓地内ではニーテツ奪還に向けたモノ作りが徐々に動き出すが……。

「採掘団、ただいま帰りましたわ!」

 祝勝会の席で、最初の挨拶でナターシャがみんなの前で大きく手を振り上げる。その勇ましい声に合わせてみんなが拍手をして、近くにいた人同士で抱き合い握手をしと喜びを分かち合う。

 季節が過ぎ去り雪が降り始め開拓地に居たギジロウやルースが採掘団のことを心配していると採掘団が帰ってきた。

「途中で体調を崩して戻ってきた人もいたけど、全員が生きて帰れてよかったわ。」

 続くルースの挨拶ではみんなが無事に帰ってこれたことに感謝を示す。

「そして、素晴らしい採掘の成果をありがとう!」

 ルースはテーブルに積み上げられていた鉱石に手を添えて成果を紹介する。

 当然テーブルに積み上げられている鉱石がすべてではなく、木箱に収められて拠点に増設された倉庫に保管されたり、拠点の隅の方に野積みされたりしている。

 和気あいあいとした祝勝会の場では、各々が武勇伝を語ったり、考えた採掘の詩が披露されたりした。

「ギジロウ様、私を採掘団の団長に任命してくださりありがとうございます。」

 ナターシャが飲み物を片手にギジロウに話しかける。

「いや、俺の方こそ引き受けてくれてありがとう。いきなり大役を任せたが無事にやり遂げてくれて安心した。また、次もよろしくな。」

「はい、春になったら採掘団の活動も再開ですね。」

「そうだな、といってもここからが大変なのだが。」

 ギジロウは今後の工程をナターシャに大まかに説明する。

「確かに、加工が追い付かなければ開拓地に鉱石が積みあがる一方ですね。」

「ギジロウ! 何を話してるの? 鉄をナターシャに売っちゃうの!?」

 上機嫌なルースがギジロウとナターシャの会話に入り込んでくる。

「そんなことは、しないぞ。次の採掘の話だ。」

「そうですよ。あぁ、でもニーテツが奪還出来たら余った鉄は組合をとおして販売するのもよいかもしれないですね!」

「夢があるわね! 連邦の全領土奪還のための資金にしましょう!」

 場が盛り上がったところで、ギジロウが締めの挨拶をする。

「いろいろあったが、明日からのみんなの頑張りが無事に結実することを願って1本締めをしたいと思います。」

 ギジロウは気分が良くなり唐突に日本の風習を持ち出す。

「なにそれーー!」

「なんなんだ?」

 聞きなれない言葉にその場にいるギジロウ以外が戸惑う。

「手を3回、3回、3回、1回のリズムで叩くんだ。」

 ギジロウはお手本として手を叩く。

「俺の居た場所では、みんなそれぞれがそれぞれに対して感謝を示すという思いでやっている、ぜひやってみてくれ!」

 ギジロウの急なわがままにもかかわらず、その場にいたみんなが静かに首を縦に振る。

「それではお手を拝借。」

 ギジロウが拍手の構えをすると、全員が同じように構える。

「よーお」

 パンパンパン・パンパンパン・パンパンパン・パン

「ありがとう!」

 みんなの拍手で祝勝会は幕を閉じた。



「うぅ、寒い寒い。」

 雪の降る開拓地の中をギジロウが自分の部屋から別の小屋に移動する。

(ここは、人が多いな。)

 雪が降り続き寒いため、多くの人が熱の出る場所や人が集まる場所で作業をして過ごしていた。

(まぁ、燃料の節約になるから良いが。)

 製錬小屋とは言いつつも空間に余裕があるため、製錬作業をする人だけでなく、端の方で縫製をしたりする人たちもいる。

(今日も無事に炉は稼働しているな。)

 新たに建てられた製錬小屋の中には実験小屋の外に作られていた銅の窯を改良した炉が設置されている。カイナ1人ではとても仕事を捌ききれないため、みんなに手順を教えて分業している。 

 ギジロウの目も前では孔雀石から粗銅が取り出され線や延べ棒に加工されていた。


「ギジロウ様、こんな形で砂型に入れて棒状にしていますが、よろしいでしょうか。」

「問題ない、なるべく同じ重さ・大きさで作ってくれよ。」

 ギジロウは作業中の人々に作業の様子を見ながら声をかけていく。

「カイナはどこに行ったか知っているか?」

「カイナさんは、本日は見ていないです。実験小屋の方ではないでしょうか?」

「そうか、ありがとう。引き続き頑張ってくれ。」


 ギジロウは実験小屋に向かう。

 扉を開けるとルースとルッチが作業をしていた。

「カイナならここには来ていないわよ。ルッチ、何か知っている?」

「私も分かりません。第2製錬小屋じゃないですか? 自室にはいなかったので。」

「そうか、作業の方は順調か?」

 ルースは最近作った魔法発電機に魔力を流している。発電するために大規模に攻撃魔法を撃っていては気軽に発電できないということで、コイルに対してうまく魔力で発電できるように魔法を改良していた。

「なかなか、難しいわね。魔力の流れがイメージしづらいわ。」

「うまいこと、手元だけで発電できるといいな。ルッチの方はどうだ。」

 ルッチはミトウ竹のフィラメントをガラス瓶にいれた電球を、箱で覆ってボタンを押すとシャッターが開く仕掛けを作っている。

「ギジロウさんが以前に言っていた信号灯を作っています。細かい部品が多いのですが銅の刃物ができたので以前よりは楽ですね。」

 ルッチが組みあがっている信号灯のボタンを押すとシャッターが開き中が見えるようになる。

「わかった、引き続き頼むよ。」


 外に出たギジロウは第2製錬小屋がどこにあるのかわからず、彷徨っていた。

(レンに開拓地の拡張の計画を丸投げしているから何がどこにあるか追えなくなってきたな。そろそろ地図が必要か。)

 いろいろな人に聞いて辿り着いた第2製錬小屋にはルッチの予想通りカイナが居た。

「ここも、火を使っているから暑いな。」

「ギジロウ殿、お疲れ様です。昨日から炉を作って、鉄も製錬できるように準備をしています。」

 フローレンスの拠点から運び込まれたレンガ、鉄、炭が小屋の中にはおかれている。

「明日くらいには火を着けられると思います。」

「わかった。ルースとかも読んで鉄の試作を明日から始めるか。」

 翌日から3日程かけて鉄と炭を投入し銅と同じ要領で鉄を溶かすが……。当然うまくいかない。

 出来上がった黒い塊を見てギジロウは頭を悩ませる。

「カイナ、ここからこの塊を高温の中に入れて柔らかくして叩けるか?」

「いわゆる、鍛冶ですか?」

 カイナが炉で塊を熱してハンマーでたたいてみると。


 塊が割れて鉄鉱石の断面が現れる。


「全く反応していないな。ただ炭を燃やしただけっぽいな。」

 ギジロウは実験小屋でいつも通り魔導書を調べていると温度が足りないことが分かる。

「ニーテツでは魔法を使って温度を上げていたようなのだがわかるか?」

 ギジロウは魔法に詳しいルースに何か知らないか確認する。

「連続稼働方式の魔法陣よね。温度を操作する魔法ってあまり使わないから、私も詳しいことはわからないけど……。」

 ルースはコイルに魔法を込めるのを中断してギジロウの方を向く。

「面白そうだし、一緒に何か考えてみましょう!」


 どうやって温度を上げるのかを話していると、実験小屋に街道工事を行っていたロンが飛び込んできた。

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