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第5話 街道と街灯(2)

「てっきり、私かギジロウのどちらかが採掘を率いるものと思っていたわ。」

 ルースは若干頬を膨らませながら、ギジロウに素直な感想を伝える。

(これは……ルースは鉄鉱石の採掘に行きたかったパターンだな。)

「まあ、ナターシャをリーダにしたのはよい案だと思うわ。採掘の行く人たちのはもともとナターシャに付き従っていた人たちだしね。」

 ナターシャをリーダに選抜したことに関しては納得しているという様子からギジロウは胸をなでおろす。

「でも、私も行きたかったわね。」

「ルースならそういうと思ったよ。でも、ルースにはここで一緒にモノづくりをしてほしいと思っただけだ。」

「えっ、えぇ、そうなのね。ギジロウにそう言ってもらえるなら私もうれしいわ。……そ、そういえば、大砲の設計は進んでいるかしら?」

 ルースからの質問にギジロウは大砲の設計の進捗を報告する。必要な素材、加工技術などはおおむね調べ終わっており、生産に必要な設備から順番に作っていくことを話していく。ルースは初めて聞く兵器に物凄い興味を持ちいろいろと質問をしながら説明を聞く。2人で没頭しながら話をしていると、夜の見回り係のシノがやってきて夜が更けていることを伝える。

「遅くなったわね。帰りましょう。また、明日から準備もあるからね。」

 ギジロウとルースはそれぞれの寝室に戻っていく。


 採掘の準備が整い出発となる前日、ナターシャ達の出発に向けた壮行会が食堂で執り行われる。

「それでは、鉄鉱石採掘の採掘の壮行会を執り行います。」

 カイナの司会進行で壮行会が始まる。

「それではルース様、採掘団の出発に向けた挨拶をお願いします。」

 カイナの案内でルースがみんなの前に出てくる。

「みんなにまずはお礼を言いたいわ。一緒にこの何もない未踏の森に逃げて協力してくれてありがとう。これからみんなにはさらに多くの苦労を掛けると思うけれどよろしくお願いするわ。」

 ルースは頭を下げる。

「思い出せば、ここに来てから今までは自分たちが生きるためのことで精いっぱいでとても大変だったわね。」

 ルースは開拓地についてからの大変だったことや楽しかったことの思い出を織り交ぜながら場の雰囲気を和ませる。

(さすが、ルース。演説がとても上手だ。)

 ギジロウはその堂々とした話しぶりにすごく感心する。

「それらの苦労を乗り越えて、これからはニーテツ奪還のための活動の段階に移行するわ。みんなで奪われたニーテツを再び連邦の元に奪還できるように頑張りましょう!」

「「おーーー!」」

 ルースの掛け声をもとに、みんなが気合を入れて腕をを高く掲げ、大きな声で返事をする。

 拍手で送られながらルースは自分の場所に戻る。

「ありがとうございます。それでは、採掘団の団長の任命を行います。ギジロウ様とナターシャ様は前へどうぞ。」

(みんなの前に出るのはとても緊張する。)

 ギジロウはあまりの緊張で立ち上がることを躊躇してしまう。

「ギジロウ様、ギジロウ様。」

 ナターシャがギジロウに小声で声をかける。

「どうした。」

「緊張していますか?」

「そうだな。ナターシャは緊張しないのか?」

「私もです。」

 ナターシャはにっこりとギジロウにほほ笑む。その笑顔でギジロウは少し緊張がゆるむ。

「ありがとうな、ナターシャ。」

「いえいえ。」


「それでは、お2人とも前へお願いします。」

 カイナが前に出るように改めて促す。


 ギジロウとナターシャはみんなの方を向いて横に並ぶ。そして一礼した後お互いに向き合う。

「ナターシャ。」

「はい!」

「貴殿を鉄鉱採掘団の団長に任命する。」

「謹んで拝命いたします!」

 みんなから大きな拍手が上がり、正式にナターシャが採掘団の団長に任命される。

 写真などはないがみんなの前を向いて眩しい笑顔をみんなの方へ向ける。


 その後、採掘計画などが説明され壮行会は終わり、夜は開拓地で採れる食材で豪華な食事が振舞われた。

 翌日、ナターシャ達は鉄鉱石の採掘に向けて出発した。


「みんな、無事に帰ってきてね!」

「はい、鉄鉱石の採掘をもって無事に帰りますよ!」



 数日後、人手が減ったこと開拓地ではギジロウの忙しさがピークに達していた。

 始めはギジロウが自ら様々な場所を回って手伝ったり指示を出していたりしたが、いろいろな場所で質問や指示待ちが発生していたことで、みんながギジロウを探し回ることになり、指示を一番出すギジロウは自分の部屋で設計をしつつ来る人々の対応をすることになった。


「ギジロウさん、畑からの食料の収穫に関しては若干の遅れがありますね。先日の長雨の影響なのか豊作なのは嬉しいのですが一気に実りすぎています。すべて収穫しますか?」

 本日の1番最初は農作物を管理しているレンの妹のアイナである。ギジロウが軽トラに積んでいたため一緒に異世界転移を果たした野菜たちから種を取ったりヘタを再生栽培して作った畑が素晴らしい実りを迎えており、収穫が追い付かないということの相談だった。アイナだけでなく農家出身の人々からも驚きが上がりうれしい悲鳴が響いていることをギジロウに報告する。

「あぁ、それなら大きくなり過ぎたのは、もう食用には向かないからそのまま採種用に大きく育てさせておいてくれ……れば良いと思う。」

 素人のギジロウは魔導書を片手に調べながら指示を出す。

(さすが、品種改良された現代日本の野菜だな。収穫量も申し分ない。)

「人手が足りない分は、子供たちに手伝ってもらってもよいでしょうか。」

「お願いする。アイナならみんな指示に従うだろ。」

 アイナは子供たちからとても好かれており、子供のお世話係担当のようになっていた。

「そ、それは嬉しい限りなのですが、他の人にも懐いてほしいのですが。」

「それはおいおい考えておくよ。」


 アイナと入れ替わるように今度はルッチが部屋に入ってくる。

「ギジロウさん。食材を長期保管するのに燻すだけでは限界があります。何とか塩が手に入らないですかね。」

「ずっとなくて困っていたもんな。海は遠いしな。岩塩とかあればよいが……。すまないがしばらくは全力で燻してくれ。」


 しばらく、今度はカイナがやってくる。

「収穫に人が回っていてレンガの製造がほぼ私1人なので、ギジロウ殿助けてくれない? お風呂の改修も間に合っていないのですが……。」

 悲痛な表情でカイナが訴えてくる。レンガは鉄を製造する際の炉に使用するため増産を依頼していたが全く人手が足りていなかった。

「そ、そうだな。どうにかしたいが。みんなで夜にやりたいが開拓地は暗いから夕方以降の作業もつらいよな。」

 冬に向けて日も短くなり作業時間の確保がどんどん難しくなっていた。


「ギジロウさん!」

 ギジロウとカイナが2人で唸っていると扉が勢いよく開けられレンが部屋に入ってくる。

「ど、どうした!」

「フローレンス様が訪ねてきました! 食堂に案内して、ルース様が対応してくれています。」

「お、分かった。すぐに行く。すまないカイナ、また後でよいか?」

「はい、お願いです。」


 ギジロウは部屋を出てレンに案内されながら食堂に向かう。

「フローレンスの用件は何か聞いているか?」

「いえ、聞いていません。しかし、切迫した状況というわけではなさそうでした。」

「また、ファナスティアル王国が攻めてきたとかでないとよいが。」


 レンは食堂の入り口を軽くノックして中にいるルース達に声をかける。

「ギジロウさんをお連れしました。」

「あら、ギジロウ。早かったわね。フローレンスからお願いごとがあるらしいわ。」


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