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第4話 森の中の戦い(7)

「我々は処刑されたルースの妹の情報をもとに、オステナートの鉱物保管庫から持ち出されたとある鉱物を探している。銀色の金属らしいが銀ではない。ルースが住んでいた町はずれの小屋を捜索したが当該の鉱物は見つからなかった。」

「それと俺達になんの関係が…………、まて、オステナートだと!」

「なかなか察しがよいな。目的の鉱物はオステナート伯爵領の領主の娘、ルースは持ち出したという話だ! 我々の目的はルースの確保なのだよ。」

「…………!」

「その反応ルースのことを知ってるな! 教えろ! 今なら見逃してやる!」

 隊長の気迫にギジロウは思わず後ずさりする。

(怖っ! よく現場監督にどやされて書いたけど、命かかかっているからその比じゃない!)

「い、いや、俺はルースを助けると約束したんだ。だから、お前に渡さない。」

「なかなか勇敢だな君は、その隠し持ってるナイフで挑んでくるか?」

(なぜ、ナイフがあることがわかる?)

「なぜ、分かるとでも思っているのだろう。君のような戦いの素人の動きなど見ていればわかる。」

 隊長の後から兵士たちがやってくる。

「遅れてすいません。また、攻撃魔法を撃っていたやつらは取り逃しました。」

「そうか、追いかけた先にも罠があったか。」

「はい、何人か罠にかかり重傷です。手当てのために戦力が割かれてしまっており、追撃できるだけの人員が不足しましたので追撃を中止しました。」

「お前ら、目先の目標達成に固執し過ぎて焦ったな。まあ、よい。目の前にいる男が敵の大将らしい。彼を捕えれば我々の勝利だ。」

 ギジロウはその会話を固唾をのんで聞いていた。

(ルース達は逃げきれたか。それなら俺も無理せずに逃げたいが手伝ってくれているサ―マリーにどう伝えよう? 目的の場所まではあと少しだからそこまで誘導したいが……)

 ギジロウが頭を整理している間に隊長は会話を終わらせ再びギジロウに話しかける。

「どうやら、君の仲間は逃してしまったようだが、せめて君だけは捕らえていくことにしよう。最後にもう一度聞くが、本当にルースの情報を渡す気はないのか? 今ならルースを匿っていたことを黙ってくだけでなく、君を我々の仲間として迎え入れよう。君の知識は素晴らしい、その知識を生かせる席を用意するようにかけあおうではないか!」

「何度言われても同じだ。俺はルースを守ると約束している。断るよ。」

「そうか……、拷問してから聞き出すことにするか。捕らえろ。」

 兵士たちが隊長の前に出る。

「よし、かかかれ。」

 兵士たちがギジロウの前を目掛けて走り始める。

 隊長とギジロウののちょうど中間くらい兵士たちが差し掛かった時、一発の攻撃魔法が兵士たちの少し前の地面スレスレを通り過ぎる。

 兵士たちは驚きその場に立ち止まる。

「お前自身が囮か! 動いている俺らに攻撃が当たるかよ! しかもたった1発で!」

 兵士たちは直ぐにギジロウに向かって再び一歩を踏み出そうとする。

「ま、まて、すぐに下がれ。お前、それをそんな風に使うのか?」

 隊長はギジロウの狙いに気付き兵士たちを呼び戻そうと部下に向かって叫ぶ。

「大変悲しいことに、俺の居た場所ではよく見慣れた使い方の1つだ。」

 ギジロウはすぐ後ろにあるコンクリートブロックの後ろに飛び込み隠れる。そして目と耳を塞ぎ、口を開ける。

 勢いに乗り始めた兵士たちは隊長の言葉に従うために身を翻すように体勢を変えようとする。

 そして隊長は本能的に爆弾の方に足を向けるように地面に伏せる。


 導火線の火が地面の中に潜る。


 そして、閃光が発せられ、それと同時に大爆発が森の中に轟く。


 とてつもない爆圧と熱がその近くにいた人たちを襲い、更に真空となった爆発地点へ空気が戻る圧力が追加で襲う。

「く、くそぉおぉ!」

 爆発の圧力差で呼吸が苦しくなった隊長が振り絞るように叫ぶ声が森の中にかすかに響く。


 馬車で遠くに離れていたレン達、森の中にいたルース達はそれぞれの場所で立ち昇る黒煙を立ち止まって見ていた。



 爆発から少し経った頃、隊長の部下たちが爆発現場に大慌てでやってくる。

「た、隊長、大丈夫ですか?」

 部下は地面に伏せていた隊長を仰向けに抱きかかえる。

「う、う、ここはどこだ。」

「まだ、未踏の森の中です。大爆発に巻き込まれたようですが、生きています。」

「そ、そうか。」

 隊長は声が出せるようになったことに一安心する。

「おい、俺以外の奴はどうなった。」

「そ、それは……。」

 質問された兵士は思わず口を塞ぐ。

「そうか、助からなかったか。」

 隊長は爆発が起きた場所に視線を移す。そこには大きなクレータが開いていた。兵士の装備が散らばり、魔法攻撃を防ぐ盾は遠くに飛ばされており爆発のすさまじさを物語っている。

(あんな、重い盾が吹き飛ばされるとは、爆弾は恐ろしいものだ。)

「やはり、もう1個爆弾を持っていたか。そこの大きな壁の後ろに誰かいなかったか?」

 隊長はコンクリートブロックのを指差し、確認するように指示を出す。

「先ほど確認しましたが、誰もおりませんでした。すでに逃げたようです。逃げる様子をだれも確認できておりませんので、これ以上は追撃するのは困難です。」

「そうか、これ以上の追撃は不可能だ、これより撤退する……。」

 隊長は撤退の指示を出すと再び気を失う。

「撤退の指示が出た! 大急ぎで基地まで戻るぞ。それに、隊長が再び気を失った! 誰か運ぶのを手伝ってくれ!」

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