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第4話 森の中の戦い(6)

「うーん。対魔法装備が投入されたようね。攻撃魔法が拡散しているわ。」

 魔法が拡散した光が森の中をフラッシュのように照らす。

「ルース様、いったん攻撃をやめて少し動きましょう。」

 ルース達は少し場所を動いて敵の影を改めて確認する。

「距離がさらに詰められているわ。攻撃魔法を受け切りながら、距離を詰める気ね! すぐに下がりましょう!」

「ルース様、落ちついてください。これ以上後ろに撤退してしまうと、ギジロウさんとの距離が離れすぎてしまいます。」

「そ、そうなのね。あと、どれくらいかかりそうかしら。」

「準備が整ったから徐々に撤退しろって。追いかけられないように張ってある罠を利用しながら逃げろって。」

 丁度、シノがギジロウからの伝言を伝えにやってくる。

「シノ、ありがとう。ルース様罠の位置はわかりますか。」

「1か所分かれば、一定間隔で仕掛けてあるからわかるわ!」

「では、ルース様が罠の位置を思い出しながら先頭に立って逃げてください。ルース様でないと罠の位置はわかりません。」

「わ、わかったわ。援護は頼んだわよ。」

 近づく敵が罠にかかるようなルートで選んで撤退していく。

「ルッチ、あれ敵の司令官では?」

「どれどれ。」

 ルッチは敵の先陣を切って迫ってくる人物を良く見つめる。

「確かに服装が少し違いますね。指揮官に一発あてれば、戦意を挫けないですかね?」

「魔法装備で受けきってしまう気がする。それより分断して指揮を混乱させるのはどう?」

「確かに、ちょっと分断するように魔法を撃ってもらいましょうか。どちらにせよ、罠に誘導するために居場所を少し知らせないといけないです。」



「流石、隊長だ、こんな暗い中でも先頭に立って進むなんて度胸がある。」

 隊長の後ろにいる兵士達はこの人の元で働くことができて良かったと感じ安心して隊長について行く。すると前を歩く隊長と兵士の間を攻撃摩法が通過する。

「敵、再度攻撃をしてきます。」

「かなり、近いな。ただちに応戦しろ。」

 兵士達は攻撃の発射点へ向を向け攻摩魔法を撃ちこむ。

(これは最後の抵抗での奇襲か? それとも罠にさそいこんでいるのか?)

 隊長は攻撃を部下に任せ周囲の様子を観察する。すると、攻撃の発射点とは違う位置に人影が見える。

「別の位置から俺らを狙っている人物がいる。こちらの対処は任せた。俺はそっちに行く。」

 隊長は、見つけた人影の方へ盾を構えながら素早く詰め寄っていきお互いの顔か見える距離に近づき立ち止まる。


 ギジロウが暗闇の中で敵の隊長らしき男と対峙する。

「あなたが、隊長か?」

「いかにも、私はファナスティアル王国遠征隊の掃討部隊の隊長だ。君がそちらの大将か?」

「まあ、そんな感じだ。」

「なんか含みのある言い方だな、ようやく追い詰められたと思ったようだが残念だったな。あちらの攻撃部隊に気を取られている間に横から攻撃するつもりだったのだろうが、私はこの盾で攻撃摩法を防ぎつつ、君を殺すさ。」

「いや、そもそも俺は攻撃魔法が使えない。」

「そうか、ならお手製の小型爆弾で攻撃するか? 見たところ火種を持っていないようだし、どうやって点火するんだ?」

「…………。」

「黙秘するか。しかし、君の技術には驚いたよ。まさか、軍の倉庫にあった爆弾を盗み出して解体して小さい爆弾に作りなおしたのか? そもそも、そこんなことができるなんて知らなかったよ。」

「これはあなた方が扱っている武器ではないのか?」

「使い方は知っている。使いどころも知っている。しかし、作り方や仕組みなんてのは知らない。大抵の兵士はそうだ。自分たちの武器がどのよう作られていまるかなんて大雑把にしかしらないさ。」

(やっぱり、そんなものが……)

 ギジロウの間に少しの沈黙が流れる。遠くでは森の中で魔法の青白い光が瞬く。

「教えてれ、なぜあなた方は、執拗に逃げた人々を捜索するんだ?」

「命令がでているからだ。」

「命令? 森で逃げたニーテン市民を捕えることか?」

「いや、それは副次的な目標に過ぎない。」

「なら、なぜだ。」

「爆弾を小型化できるということを示してくれたお礼に少し教えてやろう。」



――オステナート陥落後の伯爵系の邸宅

「隊司令、屋敷内を捜索したところ、鉱物倉庫の管理人をとらえました。領主の次女がやっていたようです。」

「そうか、逃亡馬車を襲った際に死んだと思ったが屋敷に残っていたのか。次女は鉱物に明るいらしく殺すのは少し惜しかったからな。」

「どうやら、屋敷の人間に協力を得て20日近く潜伏していたようです。次女の生存を本部には報告しますか。」

「この情報を知っているのは誰がいる。」

「私と部下の数人ですが噂が広まっている可能性はあります。」

「お前との付き合いも長いよな。」

「かれこれ、10年ほどになります。」

「では、次女をここに連れてこい。処刑する。」

「……殺すのは惜しかったのでは。」

「報告上だけは殺すのだよ。この場でお前が執行人で俺が立会人で見届けたことにする。証拠を求められたら適当にでっち上げろ。」

「本部のには利用できるのから拘束したと報告すればよいのではでしょうか?」

「お前はわかっていないな。彼女が優秀なことは本国の何人かの貴族は知っている。本国に報告すると我々が彼女を利用することができなくなってしまうではないか。」

「さすがは司令官! 分け前はいただきますよ。」

「当然だ!」


 部下が領主の次女を司令官の前に連れてくる。

「いや、離して!あなたが司令官ね!解放しなさい!」

「元気が良い娘だな、お前たちは下がってよいぞ。」

「わかりました。」

 部屋には司令官と直属の部下が1人、そして次女の3人になる。

「さて、お前に一つ提案がある。」

「なによ。」

「お前には今からここで死んでもらうのだが、生き延びたいとは思わないか?」

「それはそうよ。」

「なら、取引だ。お前のその知識を俺のために貸してくれないか。」

「いやよ、あなたたちに手を貸すなんてしないわよ。」

「でも、生きていれば姉に会えるかもしれないぞ。」

「どういうこと!?」

「お前の姉、ルースは西の町を襲撃の際にニーテツへ逃亡している。その後のニーテツ攻略時にもお前の姉の死体は発見されていない。どうやら未踏の森に逃げたようだ。だから生きていれば姉に会えるかもしれないぞ。」

「お姉ちゃんに会えるの?」

「我々の部隊が姉を捕らえた際には必ずお前の元に連れてくると約束する。代わりにお前の知識を俺たちに教えてくれ。我々は戦闘の専門家だから学者ではない。お前にとっては些細なことでも私たちは知らないことが多い。」

「本当に、それだけでよいの。ほかにも何かやらせようとしていないかしら。」

「そうだな、あとは俺の子供や知り合いの軍人の子供達に勉強を教えてほしい。最近、本国では、優秀な人物を登用するための試験という制度ができたらしく、それに合格すれば一気に一族安泰ということだ。それに合格できるように勉強を教えてほしいと考えている。」

「あとは、何かあるの?」

「あとは、何もない。当然、身分を隠して生きてもらわなければいけないが衣食住は保証しよう。」

「わかったわ。その話に乗りましょう。」

「交渉成立だな、早速、1つ聞きたいのだがオステナートの鉱物保管庫に保管されていた溶けづらい銀というのはどこに保管されている?」

「銀? 銀ならたくさんあるじゃない。」

「どうやら本国が探しているのは通常の銀ではないらしい?」

「珍しい鉱物なら研究のためにお姉ちゃんが持って行っていると思う。」

「やはりそうだったか、分かった。」

 司令官はその後少し大げさに処刑のふりを行った。

「本部へは次のように伝えろ。倉庫管理人から例の銀はルースが持って行っている。妹の方は抵抗したの処理したと。」

「わかりました。」

「これで、お前は死んだ。これからもよろしくな。」

「……えぇ。」


 数日後、オステナート占領部隊の報告からニーテツ占領部隊の元へルースの捜索の指令が出された。

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