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第3話 ナターシャの仲間たち(7)

 ギジロウはサ―マリーがもらってきた布を床に広げて中央に爆弾を置き、ポケットから万能ナイフを取りだしマイナスドライバーを展開する。

「この辺りが継ぎ目かな。」

 マイナスドライバーを継ぎ目にあてて柄の部分を上から叩く。

 ギジロウの行動に驚いたルッチたちが大慌てで叩く手を制止しようとする。

「ギ、ギジロウさん叩いたりして爆発しないのですか!?」

「大丈夫だと思うよ。」

「思うって。ちょ、ちょっと危ないからやめーー」

 ルッチが叩こうとする手を握ろうとする前に爆弾がきれいに2つに割れた。


「きゃーーーーーーー!」


 その光景を見てサ―マリーが悲鳴を上げる。フローレンスは何も言えず口を開けて唖然としており、ベンは腰が抜けながらも爆弾から少しでも離れようとする。ルッチとシノは抱き合いながら爆弾の方を見つめる。

「黒色火薬のペレットが詰まっているな。ペレットにする所まで理解が進んでいるのか。それに中心で爆発するようにちゃんと設計されているな。」

「こ、これが爆弾の正体なのですか?」

 爆発しなかったことに一安心しつつ、ルッチが恐る恐るギジロウに近づいてきて、爆弾の中身を覗き込む。

「そうだ、黒色火薬というやつだ。この粉や塊は火を着けると激しく燃える性質があってだな、密閉空間に詰める火を着けると勢いよく爆発するようになる。」

「ファナスティアル王国はそんな恐ろしいものを作れるのですね。」

「でも、こんなものが自国で作れるようになれば、戦争しても勝てると思って戦争に突き進むのかもしれませんね。」

 爆弾の威力を少しでも肌で感じていたフローレンス達から思い思いの感想がこぼれる。



 トン、トン。

 

 突然、扉を叩く音が部屋の中に響く。


「こんな時間に誰でしょうか? 店主さんかな?」

 サーマリーが扉を開けるため向かう。

「はい、はーい。どちら様ですか?」

 サーマリーがドアノブに手を掛ける直前、シノが大声でサーマリーを呼び止める。

「サーマリー! 出てはダメ!」

「えっ!」

 シノの呼び止めでサーマリーが扉から少し離れた瞬間、扉を破壊しながら斧が振り下ろされる。

「この!」

 サーマリーは怯むことなく扉に開けられた穴から攻撃魔法を撃ち返す。

 サ―マリーが放った攻撃魔法は相手に命中したらしく、扉越しに呻き声が聞こえる。そのまま、サーマリーは扉に開いた穴から襲撃者に向かって攻撃魔法を撃ち続ける。

「た、倒せた。」


「ギ、ギジロウ!」

 窓を少し開けて外の様子を確認したシノが、ギジロウにも窓の外を見るように促す。

「既に囲まれているな。」

 外の様子をさらに見ようと窓をさらに開くと、窓に扉に矢がささる。

「危ないですよ。下がってください。」

 ルッチの言葉に従いギジロウは窓を閉めて窓の側を離れる。

「ギジロウ様、外の様子はどうでしょうか?」

「兵士が集まっているな。今の騒ぎを聞いて集まってきたのかもな。すぐにここを出ないとまずいな。みんな、すぐに出れるか?」

 その場に居た全員が頷き、外にて出る準備を始める。

「しかし、何でここに来たのでしょうかね?」

「爆弾を解体したときのサーマリーの悲鳴が街中に響いたから?」

「ちょっとシノ! 私のせいだって言うの?」

「お2人ともお止めなさい。サーマリーの悲鳴が理由にしては早すぎます。おそらく最初から目星がついていたのでしょう。」


 武器を構えたベンが扉に近づき声を掛ける。

「兄貴、俺が先陣切って出ればよいな?」

「ベン、任せたぞ。ポーラの鍛練の成果を見せてくれ!」

 ベンが勢いよく扉を蹴り開けると、開いた扉に向かって攻撃魔法が撃ち込まれる。

「危ない!」

 すぐ後ろに居たサーマリーが勢いよく飛び出そうとしたベンの首根っこを掴み部屋に引き戻す。

「既に魔法使いが来たようです!」

 サーマリーは壁から身の乗り出して暗い廊下の先を確認する。

「階段の曲がり角に隠れて、攻撃してくるわ!」

 サ―マリーは相手の攻撃が止まった隙に攻撃魔法の発射点に向けて攻撃魔法を撃ち返す。

「暗いから当たっているかよくわからない! だけど、容易には近づいてこられないはず!」

「サーマリー、私も手伝いますわ。」

 フローレンスが応援に入り、サーマリーと交互に対応する。


「すぐに踏み込まれる心配はなくなったけど、すぐには部屋から出れなくなったな。」

「兄貴、どうする? レンガ造りの壁だからしばらくは外からの魔法は耐えられるけど、梯子を掛けられたら制圧されるぞ! それか、下の階から床板ごと攻撃魔法で貫かれちまう。そんなに厚くない。」

 ベンは床を足で床を鳴らす。

「ルッチ、攻撃魔法で木の板を撃ち抜くには時間がかかるか?」

「個人の技量にもよるけど、そんなに長くないです。よく下を見ていれば避けられますが。」

 目の前から敵が迫っている中、下からの攻撃を避けるなどは現実的でない。


「隣の部屋に入られた! おそらく剣士で人数は1人!」

 サーマリーから大声で報告が入る。迷っている間にも敵は着々と距離を詰めてくる。


「この仕切り壁はレンガではなく漆喰壁だな。魔法攻撃にもそこそこ耐えられるが、そんなに丈夫ではないな。シノ手伝ってくれ。」

 ベンが隣の部屋の壁に寄り壁をコンコンと叩く。

「何をする気だ?」

「俺が壁を壊して隣の部屋のやつの注意を引く。その間に屋根裏伝いにシノに不意打ちで倒してもらう。」

 ベンは魔法攻撃の合間を見て廊下に落ちている斧を回収する。

「シノ、できるか?」

「大丈夫。小さい私なら移動は簡単。」

 シノは部屋にあったテーブルの上に椅子をのせ、その上で立ち上がる。

「天井板ならこれで十分。」

 懐から短剣を取り出し、柄で思いっきり天井板に穴をあけていく。シノが通れる大きさまで広げたら、そこから天井裏によじ登る。

(天井裏に界壁はないのか?)


「ギジロウさん、私たちも何かしましょう!」

 ルッチは自分もなにかできないかとギジロウに指示を仰ぐ。

「そうだな、なにか即席で作れる武器はないか。」

 ギジロウは解体しかけの爆弾が目にとまる。

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