第3話 ナターシャの仲間たち(6)
翌日、ギジロウ達は3手に分かれてフローレンスの捜索を行う。
ギジロウはルッチと、ベンはサ―マリーと、シノは1人で町の中へ繰り出す。
捜索を開始して3日目の昼下がり頃にギジロウとルッチで花街の方を歩いているとルッチが1人の女性を見つける。
「キジロウさん、あの銀髪の方はフローレンスさんではないですか?」
ルッチが視線を向けた先ば、ボロボ口の服を着た女性が歩いてくる。
「たしかに髪色と髪と背格好の特徴は一致しているな。」
ギジロウとルッチは女性に話しかける。
「すいません。あなたはフローレンスさんですか?」
「どちら様でしょうか?」
女性は警戒しなから足を止める。
「おっと、すいません。ナターシャさんとサーマリーさんという方に依頼されて、フローレンスという女性を探しております。」
2人の名前を聞いた女性はギジロウの腕をつかんで2人のことを聞く。
「ナターシャは生きているのですか! それにサーマリーも無事なのですか? 他の人々は?」
「落ちついてください。あなたがフローレンスさんで間違いないのですね。」
周囲の人々が怪訝な顔をしながらギジロウ達の側を通り過ぎていく。
「わ、私がフローレンスです。それで、みんなは無事なんですか?」
「ナターシャは、俺達と一緒に未踏の森で暮らしている。サーマリーは一緒にニーテツまで来ている。細かい話は後にして今は俺達についてきてくれないか?」
「あら、サーマリーも一緒に来ているのですか?」
「あぁ、本人たっての希望だ。」
「なんで私のために、そこまでしてくれるのかしら?」
「みなさん。フローレンスさんのことをとても心配をしていましたよ。」
「そうなのですね……わかりました。一緒に行かせてください。」
夕方、帰ってきたサーマリーがフローレンスと抱き合い再会を喜ぶ。
「生きていてよかったです。フローレンス様、お怪我はないですか? お腹はすいていないでしょうか?」
「ありがとうございます。危ない場所まで助けに来てくださり、感謝してもしきれませんわ。」
「感謝なら私でなく、こちらの方々にもお願いします。未踏の森で軍の襲撃を受けて途方に暮れていた私たちを助けてくれた方々です。」
サーマリーがギジロウ達を紹介する。
「助けていただき本当にありがとうございます。拠点にいた他の人達は無事ですか?」
「はい、フローレンス様のおかけでみんな無事です。」
サーマリーはフローレンスが連れ去られた後の顛末を説明する。
「なるほど、みんさん大変でしたか生きていてよかったです。」
「ギジロウ様方、本当にありがとうございます。改めてお礼を言います。」
「無事でなによりだ。しかし、フローレンスさんはなんで花街にいたんだ? 幽閉されているとおもっていたが。」
「それがですね、私は人違いで連れ去られたようです。」
「え、なんですかそれ! ひどい!」
サーマリーが怒りながらフローレンスに続きを聞く。
「どうやら私はルース様と間違えられて連れさられたようなのです。それで尋問されている途中に身元確認が行われて人違いということかわかったので解放されました。」
「ギジロウさん」
ルッチが不安そうな顔でキジロウの方を見る。
「あぁ、彼らはルースを捕まえることを目標にしているようだな。」
夕飯を食べた後、ギシロウは気になっていた事をベンに聞く。
「ベン、お前は剣なんか持っていたっけ?」
「兄貴、ようやく聞いてくれましたか!」
ベンは嬉しそうにギジロウの前に持っている剣を腰から外して見せる。
「今日は鉱山地区へ行ったんだよ。それでお世話になっていた親方に無事といつか助けに来ることを伝えたら親方達がくれたんだ。親方たちも反撃の日に備えて鉱山の中に武器を隠しているらしくて、そのうちの一振を託してくれたんだ。」
「ニーテツの人々も希望を失なっていないのだな。ベン、親方さんを助けられるようにしっかりとポーラに鍛えてもらえよ。」
「任せてくれ。今日の俺は以前よりも断然強いぜ。」
「あの、私もこんなものを見つけました」
シノが直径20センチくらいの黒い塊を見せてくる。
「これは……どっからどう見ても爆弾だな。」
シノは導火線で点火するタイプの爆弾を持って帰ってきた。
「こんな物、どこで見つけたんだ?」
「軍の倉庫に侵入したらあった。」
「そんな危ない場所に一人で行ったのか!?」
「で、でも……。ごめんない……。」
「ギシロウさん、そんなに怒らなくたって。」
ルッチがギシロウをなだめる。
「シノ、ギジロウさんはあなたのことが心配なのです。だからもし危険な場所に行くなら事前に相談してほしいのです。」
「……わかった。次からは気を付けます」
シノはもの凄い落ち込みながら反省する。
「いきなり怒鳴って悪かった。爆弾の本物が手に入ったのは大きい。シノ、ありがとな。君の潜入技術が凄いのは良くわかったよ。これからもその技術を貸してくれ。」
ギジロウはシノの頭を撫でる。
「あ、ありがとう……。」
シノはギジロウが心配してくれたことをとてもうれしく感じ、少し照れて俯きながら少し口元に笑みを浮かべる。
「それが戦闘の時にウワサになっていた爆発する石なのですか?」
「そうだ、爆弾というモノだ。」
「持ち帰ったらルース様が大嬉しそうですね。」
(あの実験好き少女なら絶対、喜ぶな)
キジロウは手にとった爆弾の導火線部分を少しほぐす。すると黒色の粉が少し手につく。
(やはり黒色火薬か。)
「これ、外側は何でできているんだ?」
「スト黒焼きではないですか?」
ルッチが即答する。
「スト黒焼き?」
「東の方の町の名産品ですね。良質な粘土が採れないニーテツでは陶磁器類はすべて他の町から購入しているのですよ。ニーテツで最も使われるのがこの黒い焼き物です。人気な白色の器に比べて安いですし落としても割れにくいです。」
「なるほどね、ということは硬いが脆いのかな。叩けば割れるのか?」
「まあ、割れにくいとはいえ陶器ですし、叩けば割れると思いますよ。」
ギジロウは少しニヤリと笑う。
「いいこと思いついた。サーマリー、布をもらってきてほしい?」
「わかりました。宿屋の店主に聞いてきます。」
「どうするのですか?」
「いや、中身がどうなっているのか気にならないか?」
「た、確かに気になります。」
ルッチが少し興奮気味に答える。シノもうんうんとうなずく。ベン、フローレンスはそこまで興味がないようで特に反応はない。





