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第3話 ナターシャの仲間たち(5)

 サ―マリーと別れた後、ギジロウ、ルッチ、シノ、ベンは商業地区内で町の近況を探る。

「この辺は、戦いので大火災になっていましたが、復興が進んでいますね。」

 焼け焦げた廃材などが1カ所に集められ、瓦礫が取り除かれた場所には新しい建物が立て直されている様子を見てルッチは呟く。

「ルッチは商業地区に住んでいたよのだよな。家のあった場所に寄っていかなくてよいか。」

「……大丈夫です。今、帰ったら悲しくて泣いてしまいます。今は泣いている暇はありません。」

「……そうか。必ず取り戻そうな。」


 復興しつつある商店街を見て歩いていると他の兵士とは少し違う格好の兵士がギジロウ達に声をかける。

「お前さん達、なんでそんなにキョロキョロしながら歩いている?」

「おっと、すまない。あまりにも珍しいもので。」

 ギジロウはとぼけたように答える。

「珍しい? どういうことだ?」

(まずい、余計に怪しまれたか。)

 ギジロウが焦っていると横からベンがフォローする。

「申し訳ないっす。こいつは最近ニーテツの来たんだけど、来てからずっと鉱山で働いていたもんで。初めて街を案内しているのですよ。」

「別の町から来た労働者か。ところで、お前はなんか見覚えがあるな?」

「もしかしたら、鉱山の警備に来た時に見かけたんじゃないですか? 俺、問題児だったのでどこかで見たんじゃないですか?」

 ベンは悪そうな顔をしながら笑顔で答える。

「そ、そうか。まあ、初めて来たならしょうがないな。くれぐれも怪しいことはするなよ。」

「御忠告ありがとうございます。」

 ギジロウ達はみんなで一緒に頭を下げて兵士を見送る。

「無事に切り抜けられましたね。」

「……かなり緊張した。」

「ベン、ありがとうな。助かったよ。」

「兄貴、頼ってくれていいんですよ。」


 夕方、約束した場所でフローレンスを待つ。

「しかし、聞いてい回りましたが全く手掛かりがありませんね。」

「そもそも、フローレンスはどこに住んでいた住人なんだ。」

「少なくとも、私の家の近くに住んではいなかったです。もっといえば商店街にもいなかったような気がします。買い物に来たという記憶もないのですよね。銀髪なんて珍しいのに。」

 ルッチはうーんと唸りながら何か手掛かりを思い出そうとする。

「遅くなりました。」

 みんなで頭をひねっているとサ―マリーが待ち合わせ場所にやってくる。

「私の知り合いの宿屋に泊まらせてもらえるように話をつけてきました。」

 サ―マリーは大通りに面した2階建ての宿屋にギジロウ達を案内する。

「戦いの前はそれなりに活況を呈していた宿屋なんですが、戦いの際に半壊してしまって今はとりあえず使えそうな部屋を順番に修復して営業しているそうです。こんな情勢で来客もまばらで空室もばかりだそうで2階の隅の部屋を使ってよいそうです。また、受け取りに行く必要がありますが食事も用意してくれるそうです。内装も少しボロボロですし、食事代も追加で必要ですが良いでしょうか?」

「いや、屋根がある場所で寝られるだけでありがたい。食事もお願いしよう。」

 ギジロウ達は宿屋に入っていった。



 暗い部屋でフローレンスは取り調べを受けていた。

「ですから、何度も言っておりますが、私の名前はルースではありません! それにオステナートの鉱物保管庫のことなど知りません!」

「まったく、強情な奴だな。いくら、しらを切ったって苦しむだけだぞ。」

 尋問官はフローレンスの体に鞭を打つ。

「尋問官殿、幽閉中の男に聞いてみたらよいのではないですかね。」

 1人の男が尋問中の部屋の扉を開け尋問官に話しかける。

「だれだ! あぁ、掃討部隊の隊長か。確かこいつを捕らえてきたのは貴殿の部隊だったな。こいつがルースではないのか。」

「私への命令は「銀髪の少女を探してこい」だったものなので、合致する人物を探して連れてきただけですよ。」

「そうなのか! それだったら幽閉中の男に聞くか。おい! 連れてこい!」

 尋問官の指示で部下が部屋から出ていく。しばらくすると、両手を拘束された男が部屋に入ってくる。

「おい、そんなに突っつくな! ちゃんと自分の足で歩けるから!」

(なんか、捕らわれているのに威勢がよい人ですわね……ってニーテツ防衛隊の司令官ではないですか。)

 フローレンスは知っている顔が出てきて少し安心する。

「それで、今度は俺に何を聞こうというのだ。」

「そう、睨まないでください。素直に答えていただければすぐに終わりますよ。このルースという女にオステナートの鉱物保管庫について聞いているだけど、分からないふりをしているのだよ。あなたからも話すように説得してほしい。」

「はぁ? ルース様を捕えたのか!?」

 司令官は尋問官の視線の先を見る。

「おまえ、何を見ているんだ。この女はルース様ではないぞ。確かに同じ銀髪だが。」

「えぇ。じゃあ……。」

 尋問官が焦り始める。

 司令官は尋問官のことを無視してフローレンスに話しかける。

「君はニーテツに住んでいたか?」

「えぇ、教会に修業に来ておりました。」

 その言葉を聞いて司令官は少し沈黙し尋問官の方を振り向き迫る。

「おい、貴様! 確かにこいつはルース様ではない! ただの市民だ! 解放してやってくれ!」

「は、はい! お前らそいつを町の方に連れていけ!」

 尋問官は司令官の気迫におされ思わず返事をして、フローレンスの解放を指示する。

「ど、どこにいたしましょう?」

「どこでもよい、人目のつかない場所で解放しておけ。」

「了解です。」

 尋問官はバツが悪くなり部屋から出る。

 司令官は他の兵士につれられて部屋を後にする。部屋を出る直前、掃討部隊の隊長とすれ違った時、話しかける。

「ほかに銀髪の乙女はいなかったのか?」

「えぇ、その場にいたのは彼女だけです。」

「……そうか。」

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