第3話 ナターシャの仲間たち(3)
「その後、何とかブラックボアを追い払い、フローレンス様を追おうとしたのですが既に日が落ちてしまったのであきらめました。」
サ―マリーは悔しそうにギジロウ達に言葉を閉める。
「私たちと別れた後、そんなことになっていたのですね。遅くなり申し訳ないです。」
「そ、そんなことはないです! こちらこそごめんなさい。フローレンス様とここに戻る約束としていたのですよね。約束を果たせない状況にしてしまいました。」
サ―マリーが頭を下げる。
「ギジロウ様達、少し2人にさせていただけませんか?」
ナターシャに言われ、ギジロウ達はその場を離れる。
「サーマリーをはじめ、みなさんが生きていてくれて良かったです。」
「ナターシャ様! ありがとうございます。」
サーマリーはナターシャの足元で泣き崩れる。
2人の様子を外で聞いていたギジロウ達はどうしたものかと首をひねる。
「どうするかしら。ここから人を借りてくるどころの話ではなくなってしまったようね。拠点が荒れているのは復旧できそうだけど、彼女達が立ち直るためには、彼女達を率いてくれる精神的な支柱が必要だわ。どうも、あの様子ではサ―マリーへの求心力は少し弱いようね。そうすると、前のリーダーだった、ナターシャがここに居る必要があるわね。」
「しかしそうすると、人が減ってしまうからニーテツ奪還は遠いてしまいます。それを打開するにはーー」
レンがルースに話を合わせ、2人でギジロウの方を振り向く。
「「フローレンス(様)を助けに行くしかないわね(ですね)。」」
息を合わせてギジロウにフローレンスの奪還を提案する。
「いや、いや。まてまて。どうしてこの流れでそうなる。そもそも、ニーテツは敵の勢力下なのだろ。」
「そうですよ。何もニーテツ自体を奪還するわけではないですよ。敵情視察のついでにフローレンスを奪還するだけですよ。」
レンがニーテツに行く意味を説明する。
「よいですか?ニーテツ奪還の前に、ニーテツに駐留する部隊の規模、装備やニーテツ内の情勢は事前に見ておく必要があります。」
「確かにそれはそうだな。」
「今回はその時期が早まっただけです。それに、連れ去られたときの様子からして、フローレンス様は何かしらの理由があって捕らえられたようです。それなら、敵に近いところに居るはずです。取り返せればさらに有利な情報を得られるかもしれません。」
「そ、そうなのか。」
「ぎ、ギジロウが行かないならわ、わ、私が行くわ。ニ、ニ、ニーテツを奪還するためには危険な道でも進むつもりよ。」
ルースは力強くギジロウに思いは伝えるが、その足は震えていた。
(ルースも不安だろうに。俺はルースを、ニーテツを救うのを手伝うと約束したからな。)
「そうだな、ニーテツ奪還に向けて最初の一歩を踏み出すか。」
ナターシャとサ―マリーが話を終えてギジロウ達を小屋の中に呼ぶ。
泣き疲れたサ―マリーの顔は少し腫れていた。
「すいません。サ―マリーを始めこの状態なので、ここから人を借りるというのは難しい状況です。」
「そのことなのだが。」
「どうかされましたか。」
ギジロウは少し溜めてから意を決して続きを話す。
「俺らがフローレンスを取り戻してくる!」
その発言にサ―マリーが顔を上げる。
「ほ、本当ですか。」
「あぁ、本当だ。代わりと言ってはなんだがフローレンスが帰ってきたら俺たちのお願いも聞いてほしい。ここの人たちに協力してもらいたいことがあるんだ。」
「わかりました! 私たちにできることであれば何でもします。ですからよろしくお願いします!」
そういって、サ―マリーは頭を下げた。
フローレンス奪還が決まるとすぐに準備を整える。
ギジロウ陣営からはギジロウ、ルース、レンに加えて、ルッチ、ベン、シノを開拓地から呼び出した。
「ギジロウさんの活躍期待しています。細かい工作なら任せてください。」
「兄貴、よろしくな。頼ってくれ。」
「……よろしくお願いします。」
ナターシャは復興を進めるために、残ってみんなの中心となり復旧を指示する。
「ナターシャ様、戻ってきていただきありがとうございます。」
「大丈夫です。皆さん、前を向いて復旧を頑張りましょう。ルース様がフローレンスを取り戻してくれます。フローレンスが帰ってきたときには明るく温かく迎えられるように、しっかりと復興させておきます!」
フローレンス陣営からはサ―マリーと他に6人が参加した
「ギジロウ様、よろしくお願いします。」
「お、サ―マリーも来るのか頼んだぞ。」
「私たちはギジロウさんの指揮で動きますので、よろしくお願いします。」
ファナスティアル王国の部隊が進軍したことで比較的道が歩きやすくなった道を辿り、ギジロウ達はニーテツへ戻る。
4日後にはニーテツ近郊の森へとたどり着いた。
「この辺りは私たちが、ニーテツから逃げた私たちが一時的に生活していて場所です。」
サーマリーは大きな道から分岐している小さな獣道を入り進んだ先にある、少し開けた場所にギジロウ達を案内する。
「確かに、ここならすぐには見つからないだろうし、道が何方向かに延びてるから逃げやすいな。よし、ここにフローレンス奪還の前進基地を作ろう。」
ギジロウの指示で馬車から荷物を降ろして寝床を整えていく。サーマリー達が1回は住んでいたこともあり、大きな石などがその場にあったため比較的スムーズに整備が進む。
「今回はギジロウが発明してくれた、これを使いましょう。」
ルースが馬車から降ろされた木箱をあけて中身をみんなに見せる。
「この木箱は何だろうと思っていたのですが、中身は粉ですか……。何の粉ですか?」
サーマリーがルースに質問する。
「これはコンクリートの材料よ。」
「コンクリートですか?」
ルースがコンクリートについて説明する。
ルースは前線基地を防備するためのに、道にコンクリートブロックを置くことを考えていた。
「この辺りでは、砂や砂利はとれるかしら?」
「それでしたら、川の方に行けばあるかと。」
魔獣や敵の馬が真っ直ぐ全力で走れないように、そして攻撃魔法から身を隠れる盾となることを期待して、道の真ん中や森のの中にコンクリートブロックを設置する。