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第3話 ナターシャの仲間たち(2)

 数日後、ギジロウ達はナターシャの仲間の元を訪ねるために出発する。

 今回の遠征は交渉役でギジロウ、ルース、案内役でナターシャ、馬車の操縦役でレンの4人で向かう。

「そうえいば、馬車で未踏の森を走るのは問題ないのか?」

 ギジロウは馬車を操縦するレンに質問する。

「未踏の森は大型の魔獣が多いですからね。広い獣道も多いので道幅自体は問題ないのですが。」

「問題ないがどうした?」

 そう問いかけた瞬間、馬車が何かに突っかかり急停止する。

「うわ!」

「きゃっっ! 急に止まってどうしたの?」

「あ、すいません。車輪が何かに引っ掛かったようです。」

 ギジロウが馬車から降りて車輪を確認すると、大きな木の根っこを乗り越えられず引っかかっていた。

「あぁ。なるほどね。道幅の問題じゃないと。ルース、ナターシャ、一回馬車から降りてくれ。みんなで手で押して乗り越えさせる。」


 馬車を何とか乗り越えさせ先に進むと、今度は大きな倒木が道を塞いでる。

「これは、一度大きく森の中を突っ切る必要がありますね。」

「しかし、道に迷ってしまいませんか?獣道を外れるのですよ。」

 ナターシャが心配そうな表情をする。

「そしたら、あの方法ね!」

 ルースがギジロウの方を期待した目で見る。

「何か良い方法があるのですかルース様。」

「えぇ、ギジロウが持っている方角を知ることができる道具を使った進み方よ。」

 ルースは、コンパスの使い方をナターシャに披露する。

 ナターシャは感心したようにルースの説明を聞き、最後に「やはりギジロウさんはいろいろな知識をお持ちですね。」とギジロウをほめる。

「えぇ!そうでしょ!」

 ルースがなぜか誇らしげにナターシャに自慢する。


 2日程進むとナターシャが暮らしていたという湖が見えてくる。

「あの湖です、あの湖に注ぐ川の近くを私たちは拠点にしていました。」

「あと少しね、半日くらい進めばほとりまで着きそうね。」

 ルースは腰をさすりながら体を伸ばす。

「そういえば、元々はナターシャがリーダーだったのだよな。ナターシャが抜けた後は、残されていた人をだれがまとめていたんだ。」

「副リーダーがいたので、残った人たちは副リーダがまとめていると思います。」

「なるほどね。名前は何というんだ。」

「フローレンスと呼んでいたました。すごい丁寧な振舞の方でしたので良い家の出身だと思います。」

「家の名前はなんていうのかしら?」

「……実は私も家の名前まで知らないのです。」


 湖に近づきナターシャの記憶を頼りのに目的地に進めむ。

「えーと。あ、この辺りは何回か野草を摘みに来たことがありますね。ということはこっちです。」

「わかりました。」

 ナターシャの指示に従い、ゆっくりとレンは馬車を進める。

「こっちの方も、秋らしい雰囲気ね。っ!」

 ルースが森の中を何かを探すように見回す。

「ルース、どうかしたか?」

「いえ、誰かに見られていたような気がしただけど、気のせいかしら。」


 ナターシャの記憶通り無事に目的地に到着するが誰もおらず静かだった。立っていたと思われる小屋は倒れており、所々燃えて多様な焦げ目がついている。少し前まで人が生活していたような痕跡があり、獣が住み着いている様子はない。

「ナターシャ、人がいないようなのだけど、ここはもう放棄されてしまったのかしら?」

 想定外の状況に不安になったルースがナターシャに問いかける。

「おかしいですわね。フローレンス! 戻ってきましたわ。」

 ナターシャが拠点の中心で仲間の名前を叫ぶ。しかし、反応はない。

「誰もいないようだな。何かあって放棄されたか?」

「そんな、フローレンスはここを守ると約束したのですよ。」

 再度ナターシャが仲間の名前を呼びかける。

「フローレンス! サ―マリー!」


「その声は、ナターシャ様ですか?」

 振り返ると森の茂みから1人の女性が現れた。

「サ、サ―マリーですか!なにがあったのですか。フローレンスは?」

「連れ去られました。」

「つ、つれさられたのですか!?」

「はい、3日ほど前、ファナスティアル王国の捜索隊がこの拠点に押し寄せてきました。」

 サ―マリーはぐったりとした様子でナターシャ達に起こった出来事を説明する。



 フローレンスとサ―マリーが話をしていると、1人の男性が慌てて小屋の中に入ってくる。

「フローレンス様、ファナスティアル王国の兵士が近づいてきます!」

「え、こんな遠くまで捜索しに来たのですか!?」

 建物の外からは馬が近づく音がして、戦う音がフローレンスとサーマリーの耳にも聞こえる。

 建物の隙間から外の様子を見ると既に傷ついた人が倒れていた。

「サ―マリー、応戦しますわ。」

「わかりました。」

 魔法が使える2人は攻撃魔法で攻撃する。しかし、攻撃魔法が効いているな様子はない。

「やはり、正規軍ですわ。対魔法装備を身に着けてきています。」

 敵の矢を交わすために物陰に隠れていると、一筋の魔法が、サ―マリー達の横を突き抜ける。

「攻撃魔法! 魔法使いか、魔法騎士がいるようです。」

「分が悪いですわ、ここは一旦逃げましょう。動ける人は森の奥の高台へと逃げてください。私が最後尾を務めますわ。」

 フローレンスの指示どおり近接戦闘をしていた人々は徐々に森の奥へ逃げていく。

 撤退が進むのを確認するとフローレンスはサ―マリーにも逃げるように伝える。

「サ―マリー、交互に魔法を撃ちながら森へ下がりましょう。サ―マリーから先に下がってください。」

「わ、わかりました!」

 サ―マリーが逃げる方向を振り向くと大きな黒い塊が森から迫ってくるのが見える。その手前には黒い塊から逃げるように仲間が走ってこちらに戻ってくる。

 すぐに動かないサ―マリーにフローレンスが再度同じ指示を出す。

「サ―マリー、聞こえなかったのですか? 先に下がってちょうだい! 徐々に間合いが詰められていますわ。」

「そ、そうではないのです。ブ、ブラックボアが!」

 サ―マリーが声を震わせながら報告する。

「えっ?」

 驚いている間にもブラックボアが速度を上げ、サ―マリー達の元へと迫ってくる。

「よ、よけて!」

 その声が届く前に、進路上に居た人々は避けていき、サ―マリーとフローレンスも身をかわす。

「い、痛い!」

「大丈夫ですか、フローレンス様。」

 ブラックボアはそのままファナスティアル王国の兵士の方へ突っ込んでいく。

 魔法攻撃が止まった隙にファナスティアル王国の兵士が間合いを詰めサ―マリーを地面にねじ伏せ、サ―マリーの首筋に短剣を当て、フローレンスに話しかける。

「……の少女、お前か?」

「き、聞こえませんでした、なんのことでしょうか?」

「話は後で聞く、とりあえず一緒に来てもらおう。言うことを聞かないならこの女性を殺す。」

「い、行ってはダメです。」

 サ―マリーは苦しそうにもがきながらフローレンスに訴える。

「わ、分かりました。分かりましたらサ―マリーを放してください。」

 フローレンスは立ち上がりおとなしくついていく。

「話が早くて助かる。」

 兵士は素早く縄でサ―マリーがすぐに反撃できないように手を縛り、フローレンスを連れてブラックボアの相手をする兵士の元に戻っていった。


 フローレンスを連れた兵士は部下の兵士に話しかける。

「た、隊長、ブラックボア相手では重い鎧は相手が悪いです。」

「安心しろ。目的は達成した。すぐに撤収する。」

「さすがです隊長! 拘束した者を馬車に連行します。」

「馬鹿かお前。たくさんの人を乗せた重い馬車なんかブラックボアに追いつかれて馬車ともどもバラバラになるわ。連れ帰るのはこいつ1人でよい。」

「りょ、了解です、載せている人間は馬車からすぐに降ろします。」

「そうだ、俺が少しだけ注意をひくからすぐに準備ができた馬車からすぐ出発しろ。走りながら不要なものを捨てて軽くして少しでも速度を上げろ。食料や水も限界まで減らせ。幌や不要な骨組みも壊してよい。全力で逃げるぞ!」

 隊長はフローレンスを馬車に預けてブラックボアの注意を引き付ける。

 その間に部隊の全員が慌てて馬車に戻っていく。兵士は捕らえた人を馬車から降ろし、1人の縄をナイフで切る。

「お前の縄を切っておくから、このナイフで仲間の縄も切っておけ。隊長! 準備が整いました! 走り出します!」

 すぐに馬車が出発する。出発した馬車を見た他の兵士も戦いを放棄して慌てて飛び乗る。すべての馬車が走り出したことを確認した隊長も馬で追いかける。


「どうか、どうか、無事に生きてください。」

 全力で森を駆ける馬車の中でフローレンスはサ―マリー達のみを案じて呟く。


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