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第2話 未踏の森へ(5)

 ギジロウ達は入手した粘土をもとに土器や焼成煉瓦を作成する。最初はうまく焼けず割れてしまうものもあったが何度か繰り返しているうちにコツをつかみ効率よくレンガを作れるようになる。ある程度形の揃ったレンガを製作できるようになったら、レンガを積んでかまどを作り火にかけて問題ないことを確認する。

「まさか、未踏の森に来て二口のコンロが使えるなんて思いませんでした。」

 意外と料理が好きなルッチが感動しながら出来上がったコンロに火をくべる。

 せっかくコンロを作るなら炊事小屋がほしいということになり、合わせて一緒に食事ができる食堂元話がとんとん拍子と進み、お風呂に湯舟を作る前に数日掛けてみんなで大きな食堂を作った。

「これで、料理をすると洞窟の中が煙臭くなる問題は解決されるかしら。」

「そうだな、洞窟の入り口で煮炊きをしていたから危なかったし、これからは食堂でごはんをたべるようにしよう。」


 食堂作りが完了したら当初の目的だったお風呂作りを再開する。

「作ったレンガをそのまま積むだけだと目地から水があふれますね。」

 ギジロウは、ルッチと一緒にレンガを何個か組み合わせて小さな模型を作ってテストをする。当然、水を注ぐと埋められていない目地から次々に水が抜けていく。

「当然と言えば当然だが、目地を埋めないと水が抜けるな。」

「それに勢いよく水が当たった場所はレンガが動いてしまっていますので人が寄りかかるのはとても無理かと思います。現状のレンガを積んだだけのコンロだって、レンガがずれないように慎重に扱っているわけですし。」

「そうだよな、やっぱ目地を埋めるためのモルタルが必要だよな。」

「ギジロウさんは、モルタルを作れるのですか?」

「いや、わからない。ちょっと調べてみるな。」

「お願いします。」

 ルッチはそう言い残して畑の様子を見に行く、入れ替わるようにルースがギジロウの元にやってくる。

「次にやるべきことは、決まったかしら?」

「あぁ、それならモルタルを作らないとなという感じだ。」

 ギジロウは魔導書を見てモルタルの作り方を調べる。

「モルタルはセメントと砂と水を混ぜたものか。砂は拠点の周辺でもまだ採取できるし湖の方にもまだありそうだから良いとして、問題はセメントだな。」

 次にセメントについてさらに調べていく。

「セメントは石灰石と粘土が主原料らしいな。粘土は湖で採取できるから問題ないが、石灰石は今はないな。ルース、この辺りで石灰石を見てけていたりするか?」

「いえ、森の中などを歩いている限りは見つかっていないわね。ニーテツからここに来る途中で見かけた記憶もないわね。」

「そうだよな。となるとやはり石灰石を探すためにまた、少し遠出が必要かな。」


 その夜、ギジロウは3人に石灰石を探すためにニーテツに戻る方向に探索をすることを説明する。

「ギジロウ殿、石灰石を探す意味は分かりましたが、なぜニーテツへ戻る方向へ探索をするのでしょうか?」

「いい質問だ、カイナ。俺らがここに逃げてきた目的は覚えているか?」

「えっと、いつかニーテツを奪還するための準備を整えるためでしたっけ?」

「そうだ、つまりいつかはニーテツに戻る予定だ。そのときの道を今のうちから少しずつ切り開いていくことも必要だと思う。だから、今回の探索はニーテツへ戻る道の開拓も兼ねようと思う。」

「なるほど、そういう意図でしたか。それなら私は反対する理由はありません。」

 カイナはギジロウの説明を聞いて納得する。

「ルースとルッチはどう思う?」

「探すのは、石灰石だけですか?」

「そうだな。せっかく探索するのだから、金属を取るための鉄鉱石や銅鉱石、そして燃料にするための石炭も見つかればよいかと思う。」

 ギジロウの言葉にルースが質問する。

「石灰石や鉄鉱石、銅鉱石はわかるけれど、石炭とは何かしら。」

 ギジロウはルースからの意外な質問にそんなことあるかといった思い逆に質問をしてしまう。

「ルースも石炭を知らないのか?」

(鉱物大好きに女子っぽいのにそんなことがあるのか。)

「えっと、良く知らないわね。それは何かしら。燃料になるといっていたけれど、石が燃えるのかしら?魔石の中にはそういったものはあるけれど。」

「ルースが考えているとおり燃える石だ。色は基本的には黒いよ。オステナートの鉱物保管庫にはなかったのか?」

「黒い石はいくつかあったと思うのだけど、あまり見た目がきれいではなかったし、私は特に気にしていなかったわ。そんなにすごい鉱石だったのね。」

 ルースはオステナートの保管庫から石炭を持ってこなかったことを少し後悔する。

「探索の経路はどうするのかしら?」

「それについては、明日、ルースと相談させてくれ。」

「わかったわ。」


 翌日、探索ルートをルースに空から確認してもらう。

「南方にしばらく行った先に大きな川が合流している場所があるわ。歩いたらかなり時間が掛かると思うわ。川の側は広くなっていそうだからその付近に一時的な拠点を築くのが良いかもね。」

 

 数日後、準備を整えギジロウ達は探索に出発する。今回は新たにハイスも一緒に連れていく。

「ハイス、獣の匂いを一番嗅ぎ分けられるのはお前だからよろしくな!」

 ギジロウの問いかけを理解したのかハイスは鳴き声で返事をする。


 半日ほど歩くと目的地にたどり着く。

「ここが、目的地よ。早速野営の準備に取り掛かりましょう。」

 立木や落ちている木の枝を活用し簡易的な小屋を作る。

「出発するときは晴れていたのに、なんか雲が多くなってきましたね。」

 作業をしながらカイナが空を見上げる。

 幸い、屋根ができるまでには雨が降ることはなく無事に火を起こして夜を迎える準備ができた。

「では、順番に火の番をしましょうか。どういう順番にしますか。」

 話し合いの結果、ルース→ギジロウ→カイナ→ルッチの順番で火の番をすることに決めて就寝する。


 明け方、カイナは火の番をしていると寒気を感じる。

「夏ですけど、なんか寒気を感じます。」

 ルッチが屋根の下からでると、顔に水滴が当たるのを感じる。

「あ、雨が降ってきましたね。」

 最初は弱い雨だったが、少し経つとあっという間に強くなり強風も吹いてくる。壁のない小屋の中に雨が入り込む。

「ギジロウ殿! 暴風雨になりました!」

「な、なんだ。天気が急変したか?」

「はい、せっかく起こした焚火に水が入りそうです。周囲を囲ったりして火が消えないようにしてください!」

 カイナの大声でルースとルッチも起き上がり対処を行う。夜明けとともに雨風は勢いが弱まり朝を迎える。


「はぁ、はぁ、ギジロウさん、起き上がれないです。」

雨風に当たったルッチは体調を崩し起き上がれなくなってしまう。

「これは、探索どころではないわね。ギジロウ、採掘は中止してしっかり休みましょう。」

「申し訳ないです。」

「気にするなルッチ。とりあえず元気になってくれ。」


 ルッチの体調はなかなか回復せず、3日が経過してしまい持ってきた食料を食べ尽くしてしまったためギジロウとルースは拠点に食料を取りに行く。

 ギジロウとルースは急いで拠点に戻り、追加の食料を持って帰ってくるとカイナとハイスの姿がなかった。

「ルッチ、カイナとハイスはどうした!」

「ブ、ブラックボアが現れて動けない私を助けるために囮になって川の方へ。」

 遠くから木が倒れる音が聞こえる。

「ルース、俺らもカイナのところへ向かうぞ。」

 音のする方へ向かうとカイナが知らない誰かと一緒にブラックボアと対峙していた。

「カイナ、大丈夫か?」

 近付いて顔を見るとカイナは頭から血を滴していた。

「転んだ際に少し擦りむきましたが、何とか大丈夫です。ハイスもいますし、あちらの方々が助太刀してくれたので致命的な状態はなっていません。」

 カイナが指差す方を見ると、ブラックボア相手に槍で戦いを挑む4人の男性がいた。


「みんな下がって」

 ルースは4人の男性が下がらせて、今まで経験を生かして面で魔法を打ち込む。

「怯んだ! 今のうちだ!」

 ギジロウの掛け声をもとに、ギジロウとその場にいた男性全員でブラックボアに襲いかかる。

(ブラックボアの相手も手慣れてきたな。)


「俺の仲間を助けてくれてありがとう、俺はギジロウだ。この女性たちと一緒にニーテツから逃げて森の中で暮らしている。」

「俺はベンだ。俺たちもニーテツから逃げてきた。」

 ベンの後ろには3人の男性と3人の女性の6人が並んでいた。そして、さらに奥には馬車が置かれている。

「ベンと呼べばよいか? 何かお礼がしたいが何が良い?」

 ギジロウから急なお誘いにベンは答えに詰まってしまったようで側にいた男性に話しかける。

「マイヤー兄さん何が良い。」

「隊長、今は食料が少ないので食料を要求してはいかがでしょうか?」

「そうだな、ギジロウさん、聞こえていたと思うが、俺らには食料がないから食料がもらえると嬉しい。」

「わかった、今は手持ちがないから拠点まで戻ってからでよいか?」

「それでいい。連れて行ってくれ。」

 ギジロウはベン達にお願いをしてルッチを馬車に載せ、みんなで歩いて拠点に帰る。

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