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第2話 未踏の森へ(2)

 ギジロウとルースはニーテツでカイナとルッチを仲間に迎えて未踏の森を彷徨い、ニーテツ出発から4日ほどで住むのによさそうな土地にたどり着いた。木が生えていない平らな土地が少しあり、すぐに住むに丁度よさそうな洞窟もある。さらに洞窟の中には滝があり飲み水も確保できた。

「これなら、住めそうじゃない!」

 車から降りて一周見て回ったルースが嬉しそうにギジロウの方を見る。

「私たちの反攻の物語ははじまるわ。」

 ギジロウ達は道具もほとんど持っておらず、道具作りからの開始になったが、ギジロウが前の世界から持ってきていた工具を駆使して順調に開拓を進める。

 開拓から1月ほど経った頃、ギジロウはカイナ、ルッチとの間に溝があることに少し悩んでいた。

(話をするときには2人から、少し身構えられているな。)

 また、何かを決めるにしても貴族であるルースの方が2人からは信頼されており、ギジロウの話に2人が同意しているというよりは、ギジロウに同意したルースに2人は同意しているといった雰囲気である。

「はぁ、どうするかぁ。」

「ため息なんかついて、どうかしたの?」

 炭を焼きながらルースが話しかける。

「カイナ、ルッチとの間に溝を感じる。微妙に信頼されていないというか、すべてにおいてルースがいないと円滑に進まないのだよな。」

「そうねぇ、2人にとってギジロウは私のすごい優秀な使用人って認識だから、私の言うことを聞いている感じね。ギジロウは2人に直接指示を聞いてほしいのかしら?」

「いや、そういうわけではなくてだな。なんというか、もう少し仲良くなりたいのだよ。なんかいい方法はないのか?」

「いきなり助言を求めるかしら? いつもみたいに魔導書を使って調べたらどう?」

「載っているわけないだろ。」

「冗談よ。まあ、私から彼女たちに信頼するように伝えてもどうにもならないと思うわ。だからギジロウ自身で信頼を得ていくしかなわね。カイナもルッチも獣人だけど心は普通の人と同じよ。何かあった時に助けてあげれば徐々に信頼してくれると思うわ。」

「なるほどね。少しずつ頑張ってみるよ。」


 ある日、ルースとカイナが2人で森に仕掛けたウサギ用の罠の確認のために森を見回っていると、獣道の真ん中に見慣れない大きな黒い塊が鎮座していているのをカイナが発見する。

「ルース様、もしかしてブラックボアですかね。」

「私は良く知らないのだけど、未踏の森固有の魔獣よね? 強いのかしら。」

「防御力自体は大したことないですが、あの巨体に対して動きがとても速いのです。素早い動きとあの巨体から繰り出される突撃でたびたび死者を出していますね。」

「ところでブラックボアがこちらを見ているのだけれど、逃げた方が良いのかしら。」

「目を見ながらゆっくりと下がりましょう。」

 ルースとカイナがゆっくりと後ろに下がっていると、ブラックボアがルース達に向かって走り出す姿勢を取る。

「カ、カイナ! 逃げるわよ。この距離では魔法を打ち込んでも止まらないわ。」

 ルースが拠点に向かって走り始める。

「ル、ルース様! 背中を見せてはだめーーもう遅いですね。ブラックボアは突撃するときはまっすぐにしか進まないので蛇行しながら逃げてください!」

 2人は全力で拠点に向かって逃げ回る。ブラックボアの体当たりはかなり強く、体当たりが当たった木は直径が30センチ近いにもかかわらず次々に折れていく。

「防御力は大したことがないと言っていったけど、そんなことないじゃない。あんなのに突撃されたら死ぬわぁぁぁ! 助けてぇぇ! ギジロウぉぉぉ!」


 ギジロウがルッチと畑を耕していると森の中から女性の叫び声と木が倒れる音がする。

「ルッチ、何があったと思う?」

「わからないですね。でも、あの声はルース様とカイナのものですね。」

 2人が音のする方を振り向くと森の中からルースとカイナが飛び出してきた。

「2人ともすごい勢いで飛び出してきましたね。何かに追われているのでーー」

 ルッチの言葉を遮るように森の木が倒れて、森の中からブラックボアが現れた。

「ブラックボアです! 魔獣です! 未踏の森にしかいない、すばしっこい奴です!」

 ルッチがまくしたてるように説明する。

「ギジロウ! 助けて! あれに追われているのよ!」

 ルースとカイナがギジロウに寄ってくる。

「事の経緯は後で聞くとして、ルース、奴に魔法は打ち込めるか。」

「とりあえず、態勢を整えて集中できれば打ち込めそうよ。」

 ギジロウがブラックボアの方を見ると、次の突撃に向けて息を整えていた。

「わかった。安全な場所から魔法を打ち込んでくれ。」

「でも、あんな速い魔獣には当たらないわよ。」

「奴の進む先に面で魔法を撃ってくれ。」

「1発の威力が下がってしまうわ。」

「大丈夫だ。1発の威力は弱くても、どれかに当たれば怯んで動きが鈍るはずだ。怯んだところに強力な一撃を頼む。」

「わ、わかったわ。どこに――」

 話の途中でブラックボアが向かって突撃を始めるのをギジロウが見つける。

「全員、逃げろぉぉ!」

 ギジロウの掛け声を合図に全員がブラックボアの進路上から避けようとするが、カイナは足が絡まり転んでしまう。

「カイナ!」

 ギジロウはカイナの腕をつかみ抱き寄せるように無理やりカイナを引き起こす。引き起こした勢いのままギジロウの上にカイナが覆いかぶさるように倒れる。その直後、2人のすぐ側をブラックボアが通過する。

「ギ、ギジロウ様、大丈夫ですか。」

「俺なら大丈夫だ。疲れただろう。とりあえず洞窟に隠れてくれ。ルッチ、カイナを支えて洞窟まで連れて行ってくれ。」

「わ、わかりました。」

 カイナとルッチが安全に洞窟へ向かえるようギジロウがブラックボアの注意を引きながら移動する。ブラックボアが再び突撃してきたところでルースに向かって叫ぶ。

「今だ! やつの進路上に向かって攻撃してくれ!」

「わかったわ。」

 ルースが攻撃魔法を大量にブラックボアの進路上に放つ。攻撃魔法に触れたブラックボアが動きを止める。

「動きが止まった! ルース、追撃を!」

 ルースは全力の攻撃魔法を叩きこんでいく。ブラックボアが力なく地面に付したところでルースがギジロウの元に近づいてきた。

「し、死んだかしらね?」

「わ、分からん。」

 ギジロウが石斧を構えながらゆっくりとブラックボアに近づくと、ブラックボアの目が見開きギジロウを睨みつける。

「こいつまだ生きているのか。」

 石斧で思いっきりブラックボアの頭を叩くが、ブラックボアは立ち上がろうと前足を立てる。

「ギジロウ、逃げてちょうだい。」

 ギジロウが慌ててブラックボアから離れ、ルースが魔法を放つとブラックボアが再び地面に伏せた。

「よ、ようやく倒せたかしらね。」

 ギジロウが再び近づくが、ブラックボアの目が開くことはなかった。ルースとギジロウの活躍で何とか未踏の森で始めた会った魔獣の討伐が完了した。


「ルース様、ギジロウ様、本当にありがとうございます。」

「ルース様の魔法は本当にすごいですね。」

「いやぁ、それほどでも。ギジロウなんて斧を片手に瀕死のブラックボアに近づいて頭を叩いていたからね。瀕死の重傷の獣を相手にすごい度胸ね。」

 お互いに労いの言葉をかけおえると討伐したブラックボアの利用法の話になる。

 ルースとルッチが利用法を話しながら洞窟から出ていく。2人の後を追うために座っているカイナにギジロウは手を差し出す。

「大丈夫か? 足は痛めていないか?」

「大丈夫です。助けていただき、ありがとうございます!」

「君は大切な仲間だから当然だろ。生きて居てくれてよかった。これからもよろしくな。」

「はい! これからもよろしくお願いします! ギジロウ殿!」


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