ブルと愉快な仲間たち
私ことブルが体験した数々の冒険を私小説とした。
あれは暑い暑い3月の半ばだった。私は友人から聞きつけた幻の地下都市を探すためにジャングルにきていた。
なんでも、地下都市には今でも手付かずの財宝が眠っているとの事だ。その為ジャングル北東部にあるガゼルの街は一攫千金を目論むトレジャーハンターや商人、泥棒でお祭り騒ぎだ。人類未踏の地は数多くあれど、ここまで人を惹きつけるは幻の名とこの地表を覆い尽くす木々の形相か。未開の部族の村が街に変わるほどの希望。私は屋台で簡易テントと葉巻を買うといよいよ背丈程もある草を掻き分け熱帯の迷宮に足を踏み入れた。
1刻も歩かぬ内に漂う強烈な腐敗臭は近くに死骸がある事を告げる。街からそう遠くない。きっと今晩にでも危険な動植物がやってくる。私は足早に奥へと進んでいった。
程なく日が落ちかける。夜のジャングルは危険な為、木々に紐を縛りテントを吊るす。虫除けの焚き火の煙が高く上がっていく。道中、運良く見つけた名も知らぬ蟲が今夜の飯だ。
ジャングルの地を這うそいつは百足の様でいて大きさは2メートル以上あった。動きの緩慢な獲物を仕留めた時、水分を求めて齧り付いた横腹は非常に美味であった。肉厚でありながら蟲臭くない肉と体液。この炎で炙ればどれほどの味になるのか。私はそいつの足に肉を刺すと火に掲げた。
しかし、これが失敗であった。奴等の燻られた甘美な死臭は危険を寄せ付ける磁石である。吊り上げテントから地面を見下ろすとまるで黒い絨毯の様に黒光りした生き物がひしめき合っていた。肉を投げるとわっと移動する絨毯は虫除けをしていなければ私を餌としていただろう。
火を消した私は横になる。蟲と動物、植物の鳴き声が暗闇に響く。
翌朝、日が昇ると同時に出発した。同じ場所に長くいる危険は昨日の出来事からも明白だ。本日も気温は60℃を超える。体液の満杯に入った水筒は生きる重みを感じさせる。
半日ほど歩くと目の前に聳え立つ崖が現れた。
上方からの水飛沫が地面を濡らしているが、滝はないらしい。見上げても頂上は見えない。断崖絶壁の峰が崖になっている。私は崖伝い進むことにした。
日も暮れかけようとしている時に洞窟を見つけた。
入り口には古い装飾が施されており、左右の対称性もありそうだ。
私はが知らぬだけで未だにジャングルで暮らす部族でもいるのかも知れない。
だが、油断はできない。落ちようとしている太陽を背に洞窟へと侵入した。
洞窟内は淡い光を放つ石のおかげで松明は要らなかった。
少し進むといくつかの横穴があった。過去にここを通った者達の休憩場の様だ。今夜の宿を見つけた私はすぐさま横になる。壁や天井に描かれた壁画は何かの物語りになっている。
このグロテスクな壁画はこのジャングルを讃えるものかそれとも…。
どれほど経ったのか。日の光が無い部屋で目覚めた私は荷物を持ち、奥へと向かっていった。
程なく流れる床に身を任せていると何やら騒めきが聞こえてきた。階下を見てみると機械部族の群れがあった。
知能の高い機械部族は非常に危険だ。地下深くにしか生息しないと知られているが、地上でも洞窟内には残っているみたいだ。ここで見つかると非常に厄介だ。足早に立ち去ろうとする私をセンサーが感知してしまったらしい。錆びたブザーを鳴らした部族の成体がこちらをみている。
私は振り返らずに走った。今は進むしか無い。行手を頭上から落ちる岩が阻む。先程まで押せば開いた扉は固く閉ざされた。振り返る眼前に迫るのは体長30センチほどの機械達。
意味をなさない言葉を囁きながら行進してくる。
彼らの食性は有機生物だ。捕まれば捕食される。
あと10メートル程の距離まで近づかれた時、機械達の様子が変わった。
真っ直ぐにこちらを目指していた機械は方向感覚を失った様にぐるぐると円を書き出した。
何が起こったのか。
どうやら機械達のセンサーを乱反射させる物質がこの場所にはあるらしい。一体また一体と機能を停止させていく捕食者は、とうとう最後の一体まで止まってしまった。
助かった。安堵で気を失いそうだ。
しばらく散策し、別の通路をを見つけた私はこの冒険の最終地点。地下都市を思い描く。財宝とは一体どんなものなのか。私は始まったばかりの冒険に心を震わせていた。
なかなかに厳しい人生だぜ