観劇記録〜忘れる前のメモ置き場(忘れないとは言ってない)
エッセイがお祭りと聞いたので、寄らせてもらいました。
賑やかしにどうぞ。
──あの熱を憶えているうちに、ここに残しておこう。──
公演DATA
Title:『紙芝居の絵の町で』
Act:劇団唐組
At:新宿.花園神社(2006)
***
きっかけは、学生時代の友人からの誘いだった。
──唐十郎の芝居を観に行かない?
二つ返事で了承し、チケットを予約してもらった。
当時、いにしえのインターネッツ予約は無かったような。
電話で手配してもらったのか、友人は演劇関係の伝手があったから、そちらから予約してもらったのか、どちらだったろうか。
唐十郎。
アングラ演劇四天王の、一人。
彼率いる『劇団唐組』といえば、紅テントを張り、その中で摩訶不思議な興業を行うと聞き及ぶ。
しかし、観るのは初めてであった。
不勉強で、彼の作品──台本を読んだ事も無かった。
全く、見当の付かない芝居。
楽しみであった。
当日、新宿駅で待ち合わせた。
新宿は、唐十郎の放つアングラのにおいに包まれたのだろうか。
私と友人は、惑わされたかのように新宿二丁目の通りを抜け、ゴールデン街の隣にある目的地、花園神社に、ほうほうの体で辿り着いたのだった……。
迷ったのである。
時は開演五分前。滑り込みセーフであった。
さて、神社境内には、いかにも怪しい紅テント。
その中に入ると、桟敷席(ゴザを重ねて敷いてある)は埋まり、立見の客でゴザ周りをぐるりと囲まれている。
私と友人は、なんとか下手側(客席から見て左)の立見列に回り込み、今か今かと始まるのを待っていた。
開演時刻よりも、押していたのである。
舞台上には、懐かしの昭和の街の片隅の光景。
紙芝居屋がいる設定なのだろう、紙芝居が置かれている。
さて、物語のあらすじは、こんな感じだ。
以下、チラシから引用。
『使い捨てコンタクトレンズの営業マン・牧村真吾。
彼が肌身離さず持ち歩く一冊『紙芝居集成』には、<題名不詳・作者・作画不詳>という、謎の一枚が掲載されていた。
その絵の謎を知るのは、往年の路地の英雄・紙芝居屋の情夜涙子のみ。
牧村は、その謎を解くべく、仕事もそっちのけ、ホカ弁屋・染井るいことともに情夜の棲む、ひしゃげた老人アパートに通い詰めていた。
ある日、情夜のもとに届いた、往年の好敵手たちからのSOS。情夜は、彼らのために一肌脱ごうと車いすでアパートを飛び出すが、それはヘルパー派遣会社「ネンネコ社」の仕掛けた、情夜を「下ろし屋」に仕立てるための巧妙かつ危険な罠だった──。
牧村と染井は、窮地に陥った老紙芝居屋を救うため、<紙芝居の墓>へと足を踏み入れる……。
染井の持つ、魔法のお弁当箱が鳴る!
「瞳」という名の窓から引き抜かれる何枚もの紙芝居絵!
絵の中から飛び出す物語が現実世界を縦横無尽に縫いつくす!
次をめくれば、身辺が変る、抜くな、めくるな、ホカ弁屋、「恐ろしいこと」の頁がそこに待つ!!』
ふむ、チラシだけでお腹いっぱい。
当時は、公演チラシのあらすじと写真やイラストで、いかにわくわくするか、させるか、が、集客やコストパフォーマンス度外視にポイントだと思っていて、好奇心をくすぐられ、非常に楽しみに向かいました。
結果。
見て良かった。
ほんっとうに良かった。
これだ、これを見たかった……!
終演後、友人と大興奮して、おおいに語って帰ったものです。
***
[印象的なシーン]
『群青』という名の男が、青ペンキに顔を突っ込む。
顔中、青いペンキに塗れて、したたるペンキは、彼の目の前の桟敷にて、前のめりの観客達にも飛ぶのだった。
お客さん大喜びですよ。
この後、唐十郎御大の登場では、「いよっ!」「待ってました!」の掛け声が、観客席から出るわ出るわ。
一体ここは、歌舞伎座でしょうか? と錯覚しそうになりました。
この辺りまで読んだ方、なんとなく見当がついてるのではないでしょうか。
はい、そうです。
紙芝居集成をめくるたびに、新キャラが出て、話が変わるのですよね。
正に、めくるめく、紙芝居のお話し也。
ネタバレしない程度に、中身をご紹介しました。
野外で、人がひしめき合って、唾飛ばして、ペンキ飛ばして、熱量高く濃い〜お芝居。
今ではなかなか、お目にかかれないのかしら。
十六年前の、メモ記録ですが、ここまでお目通し、ありがとうございました。
うっすらとした記憶のメモ書き。
また観に行きたいです。