羊の流星ちゃんは、クリッとかわいい赤い目がチャームポイント。でも、天然パーマが気になって、鏡を見るのがちょっと憂鬱です。
寒空の年末。
小さな少女が一人、マッチを売っていた。
父親に叱られるっ。売り切るまで家には帰れない。
夜も更け、少しでも暖まろうと、少女はマッチに火を付ける。
マッチの炎と共に、七面鳥などのごちそうや、クリスマスツリーが現れた。
ふと、天を向くと流れ星が流れる。
少女は、可愛がってくれた祖母が「流れ星は誰かの命が消えようとしている象徴なのだ」と言ったことを思いだした。
次のマッチをすると、その祖母の幻影が現れた。
あぁ、おばあちゃん・・・
火をつけると、望むものが見えるマッチがもたらす事件とは?
流星ちゃんは、顔立ちの可愛らしい羊。仲間の羊だけではなく、牧羊犬からも好かれています。
しかし、1点、自分の体で嫌いな部分があります。
それは、クセッ毛。
天然パーマのクルクルとした白い毛を、いつも犬にバカにされるのです。
そうして、毎日 鏡を前に メェーと ため息をついているのでした。
ある日のこと。流星ちゃんは、お酒を呑んでいました。
蒸留を70回繰り返し、度数を96度にまで高めているポーランド製のウオッッカは、流星ちゃんのお気に入りです。
飲み方は、もちろん ストレート。
おーい、流星、面白いモノを盗って来たぞ。
そこへ、犬が 街から帰ってきました。
流星ちゃんは、お酒の瓶を倒されないよう、きちんとキャップを閉めます。
犬が、持ち帰ったモノ。
それはマッチ箱でした。
小さな女の子が、マッチを売っていたんだ。
誰も、買わないなぁって見てたんだけどさ。
そのうちに、少女が、マッチに火を付けはじめたそうです。そうして、「七面鳥やクリスマスツリーが見える」と、女の子が言い出したとか…。
危ない薬でもやってたんじゃないの?
流星ちゃんは、身も蓋もないことを言いました。
違うっ。きっと、見たいものが見えるんだ。
わざわざ、倒れた少女の手元から取って来たんだぜ。
犬は、不思議なマッチが、幸せな光景を見せてくれると言い張ります。
しかし、余計なことも言ってしまいました。
お前のパーマがストレートになって、見えるかもな。
流星ちゃんの赤い目が、吊り上がります。
気にせず犬は、マッチに火をつけようとしました。
ちょっと、待って。
流星ちゃんは、ウオッッカ瓶を持ってきて、グラスに1杯注ぎ、ゴクリと一口飲みました。
きっと、アルコールが切れたのでしょう。
じゃ、つけてみて。
流星ちゃんは、うながします。
犬がマッチをつけようとした瞬間、流星ちゃんは、ダッシュしました。
犬から遠ざかるように、全速力です。
酔いが回らなければいいのですが…。
ボンっ!
その時です。度数96度のウオッカが、火を噴きました。
犬の頭が、火に包まれます。
おいっ! 流星、火傷したらどうすんだよっ。
犬は、流星ちゃんを怒鳴りつけました。
あら?見たいものを見せてくれるんでしょ?
あなたの天然パーマ、良く似合っているわよ。
鏡を取り出して、犬は、自分の姿を見ました。
自慢の毛は、黒くチリチリに焦げ、流星ちゃんと同じ、パーマになっていたのでした。
牧場の空の下に、メェェという嬉しそうな羊の鳴き声が響きました。
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こちらは『冬の童話祭2022』用、超短編小説です。
くわえて、こちらは『第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』用、超短編小説です。