偽物アニソンが入ったカセットテープの思い出
子供会の旅行から帰った娘が御土産として手渡してくれたのは、SAで売っていたというアニメソングのCDだった。
「お父さんが子供の頃に見ていたようなアニメや特撮の曲が、沢山入っているよ。」
「どれどれ…『超時空戦艦ミカサ』に『鋼鉄武神マシンオー』…懐かしい番組ばっかりだなぁ。」
ジャケットの裏面に列挙されている番組名を読み上げると、それらの番組を熱心に見ていた小学生時代の事が蘇って来て、思わず懐かしくなってしまう。
「それにしても、このマシンオーは酷いな…線がヨレヨレだ。」
とはいえ、CDジャケットに描かれているデッサンの狂ったキャラクター達の絵には脱力させられてしまうけれど。
「だけどね、お父さん。このCDは一味違うんだよ!」
得意気な娘の言葉通り、それは単なるベスト盤ではなかった。
コーラスはバラバラだし、オーケストラの演奏も稚拙。
奏者の人数と楽器の種類が、明らかに足りてない。
裏表紙にも「オリジナル歌手本人の歌唱ではありません」と注意書きされていたけれど、このCDに収録されているアニメソングは全てパチモンだった。
「凄いでしょ、このパチモンのCD。マシンオーのOPなんか、歌詞まで間違えちゃってるんだから!」
パチモンのCDを好んで買い求め、そのチープさを面白がる小学生の娘。
普通の父親なら、その末恐ろしさに頭を抱える所だろうか。
だが私は、このチープな歌声にひどく心を揺さぶられていた。
何故なら…
「確かに凄いね、京花。少し待ってなさい。」
そう娘に呼びかけると、私は子供時代の品々を収めた物置へ向かったんだ。
「あっ!そのカセット、私が買ったCDと同じ曲目になっている!」
私が持ってきた古いカセットテープを見た娘は、随分と興奮していた。
「小2の誕生日に、両親からプレゼントとして貰ったんだ。京花も聴いてみるかい?」
そうして再生したカセットから流れてくるチープな歌声は、さっきまで流れていたパチモンCDとそっくりそのままの内容だった。
「そっか…御祖父ちゃんと御祖母ちゃんが買ったカセットと、私が買ったCD。どちらも同じ音源を使っていたんだね…」
感慨深げに呟く京花の一言を聞くと、このチープな歌声が不思議と心に沁みて来る。
娘が買ってきたパチモンCDが、まるで若き日の両親と子供時代の私からの激励のメッセージみたいに思えてきたんだ…