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七話

 俺が郡山 光(こおりやま ひかり)のことをどれほど理解しているかというと、ほとんど理解していない。

 そもそも俺の脳みそは愛すべき妹たちに使うためのものなので、他の人間に記憶の容量を奪われるなんてことはしたくないので、基本的に入ってきた情報は液体のように流れ出ていくようにしているのだ。初めから覚える気がないのでもちろん覚えられないし、(みやび)のように長い時間を共に過ごしていれば少しは変わるのかもしれないが、郡山とは出会って半年も経っていないので、俺が郡山について知っていることといえば名前と年齢、所属している部活くらいのものなのだ。実をいうとクラスすら知らない。他人に興味なさすぎじゃないか俺。

 なので二人に迫られた場合、選ぶべきは雅の方だったのかもしれない。けれども、俺が選択したのは郡山の方だった。

 しかし質問内容は「どちらに腕を掴まれたいか」「どちらのおっぱいが好きか」であった。単純に見た目で選んでもよかったのだが、それでは一つ大きな問題が残る。

 どちらを選んだとしても、面倒なことになるのだ。

 雅は俺のことが好きだし、郡山についても悪くは思われていないだろう。こうして迫ってくるくらいだし。

 なぜ俺が雅ではなく郡山を選択したのか。

 それには、俺が郡山について知っている、もう一つの情報が関係してくる。

 雅はたとえ選ばれなくても、それが俺だと身をもって知っている。だが郡山は選ばれなかった場合、何をしでかすかわからないのだ。きっと一生グチグチ言ってくるし、それはなるべく避けたい。妹と気持ちよくイチャイチャできなくなる。

 普通に考えて、俺が一番楽なのは郡山を選ぶことだった。

 俺の答えを聞いて、雅は肩を落とし、郡山はニンマリと笑顔を浮かべる。


「これで、賭けは私の勝ちですね」


 はて、賭けとはなんのことやら。そういえば最近二人がどんどん距離を詰めてくるなとは感じていたけれど、ひょっとしてこれは、「俺となにかをする権利」を賭けての勝負だったというのか。ならば俺は俺の意思によりそれを拒否するし、そもそも俺の預かり知らぬ所で何をしているのだこいつらは。


「残念ですけど、先輩に拒否権はないですから」


 まだ何を賭けているのかは聞いていないが、嫌な予感しかしない。全身鳥肌が立ったし、汗がだらだらと流れて止まらなくなっていた。

 視線で説明を求めると、雅はため息をついた。


「どっちが秋都と夏祭りに行くかを賭けてたの」

「俺は夏花(なつか)冬乃(ふゆの)の三人で行きたいんだが」

「残念だけど、夏祭りの日は二人とも合宿だから」


 雅が夏祭りのポスターを見せてくる。スマホの中に入っている陸上部の予定表を確認すると、その日は確かに夏花と冬乃が所属する陸上部の合宿三日目で、大会の前日だった。


「どうせ二人がいなきゃ、秋都やることないでしょ?だから」


 確かにそれはそうだが……。何か拒否する口実を探すが、どこにも見当たらなかった。雅の言う通りだし何より俺はすでに選んでしまった。郡山を。前言撤回は許されない。それが後出しじゃんけんだとしても。特に、この二人の前では。やはり女子の結託力というのは恐るべきもので、男であり獲物である俺は、牙を研ぎ澄ました二匹のチーターの前では無力なのだ。


「というわけで先輩、よろしくお願いしますね」


 悪魔のような後輩は、天使のような笑顔で微笑んだが、俺にとってはやっぱり悪魔だった


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