八話
「兄ちゃん、人間の頭ってスパイクで殴ればどうなると思う?」
「少なくとも大けがは免れないだろうからとりあえず落ち着け」
いくら苛立っても、ここで誰かに故意に怪我をさせてしまえば、夏花が陸上にかけた三年間はすべて水の泡となってしまう。
バンッと机をたたいて、
「でも、そいつ許せない!!」
夏花は声を張り上げた。時刻は深夜。叫んでいい時間ではない。それを視線で伝えると、夏花はふてくされたように目線をはずした。
「そりゃあ、俺だってあの人のことは好かないけどさ」
あの時の俺は、怒っていたからこそ、水をぶっかけたのだ。感情のままに動いた悪手とも言えるが、怒ったやつが悪いんじゃない。怒らせたやつが悪いのだ。冬乃にとって地雷都言うべきところにいきなり触れてきた人間を許せるほど俺の心は広くない。
「そんなヤツに、冬乃は任せられないね!!」
そして、それは夏花も同じだ。
夏花は、冬乃の姉なのだ。とてもかわいがっているし、普段からほとんどの行動を共にしている。たまに冬乃を置いてけぼりにすることもあるが、それは信頼の裏返し、というかまんま信頼そのものだ。つまり、シスコンなのだ。俺と同じように。この妹は。もはやわかりきったことかもしれないが。
そんな妹大好きな姉が、妹を傷つけるような行動をしたものに、なんの感情も抱かずにいられるわけがない。怒りMAXで当然なのだ。
「もちろん、冬乃を引き取らせるつもりはないが」
冬乃自身も、俺たちと一緒にいたいと言っていたし、あとは父親との交渉さえうまくいけば、この話をお流れにできるのではないかと、そういう算段だ。
「ところで夏花、頼みたい事があるんだが……」
「兄ちゃんの頼みなら、なんでもかなえてみせるさ」
「頼もしいな」
「で、どんなプレイがしたいんだ?メイド服くらいならあたしの部屋にすでにあるけど」
「お前は俺を何だと思ってるんだ!?」
メイド趣味はない。俺は妹一筋だ。
何でメイド服があるのかも気になったが、それはさておき。
「いいか、夏花。お前には……」




