十話
先輩から順に、春野先輩、氷堂先輩、私と時計回りに机の中央に置かれた缶の中の割りばしを一本ずつ取っていく。
先輩は自然な動きで、先端が赤くなった割りばしを引いていた。それを誇示するように、机の上にぽいと投げ捨てる。
「王様だーれだって言いたかったんですけど」
「悪いな、気の利かない先輩で」
行動のすべてがわざとらしい。
「じゃあ、二番が三番に一つ秘密を教える、で」
私は一番だ。つまり、いきなり二人の距離を縮められる。
「三番は僕だね」
「私は二番」
二人が名乗り出たところで、春野先輩は氷堂先輩の耳に顔を近づけた。耳打ちをする気なのだろう。
「……」
私と先輩は、黙ってそれを見つめている。なので、この場に存在する音は春野先輩が小声で喋るときに漏れる微かな音だけ。
途端に、氷堂先輩の頬が、朱に染まった。告白するときの女の子みたいだ。目は大きく見開いて、心底驚いた顔をしている。
一体、どんな内容だったのだう……。
考えているうちに、春野先輩の唇が氷堂先輩の耳から離れていく。こっちもこっちで、顔が真っ赤だ。
続いて二回戦。今度葉私から反対に、割りばしを引いていく。その際、一本だけ横に入った、不自然な傷のついたものを選んだ。これが王様の証拠だ。とても見にくいし、絶対にばれないだろう。
「私が王様ですね」
王様だーれだの声が聞こえてこなかったので、自分から手を挙げた。
少し考えて、内容を決めた。ここは女子らしく、うざい後輩らしく、ぶっ飛んだ内容でなければ。
先輩に目線で合図すると小さく二本の指が建てられた。先輩は二番か。
「一番と三番がじゃんけんして負けた方が勝った方に抱き着く」
「なっ……」
「え……?」
先ほど恥ずかしい思いをした二人が、そろって顔を真っ赤にした。
「ほら、早く」
先輩は私の味方なので、二人を急かす。
「……」
無言でじゃんけんを始めた。手の上げ下げだけで、タイミングを計っている。
敗者は氷堂先輩。春野先輩に抱き着くために、席を立った。
「長さは?」
抱き着く時間の長さの事だろう。あまりに長いと可愛そうだし、アウト判定を食らってしまうかもしれない。
「十秒以上で」
これでも、刺激は十分だろう。
ゆっくりと、氷堂先輩の太い腕が、春野先輩の首に巻きついていく。二人とも、耳まで真っ赤だ。
「ん……」
春野先輩が、エロい声を漏らした。音だけなら完全にアウトだ。この世界に視覚というものがあってよかった。
「いーち、にー」
ゆっくりと、先輩がカウントしていく。一秒数えるのに三秒ほど要している。
「さーん、しー、ごー」
二人は固く目を閉じている。体は小刻みに震えて、まるで何かにおびえているようだ。
「ろーく、しーち、はーち、きゅー、じゅー」
ようやく、先輩の十秒のカウントが終わった。
即座に二人は離れる。息は荒い。今まで呼吸を止めていたようだ。
「じゃ、三回戦しましょうか」
「まだやるの!?」
二回連続罰ゲームを受けた春野先輩が不満を漏らした。
「これで最後でいいですから」
何とか納得させ、ゲームを再開する。
割りばしを引く順番は、じゃんけんで決めた。運のいいことに、一番初めは私だ。勿論、王様を引いた。
先輩の番号は三番。残りの二人はどちらが一番でどちらが二番かはわからない。
ここは、どちらに転んでも私としては望ましい結果に転ぶ、あの質問をするしかないだろう。
「一番の人は、好きな人に告白!!あ、ちなみに私は全員分把握しているので、いないとか言ったら相合傘を描いた紙を掲示板に張り付けるんで覚悟しておいてくださいね」
「子供かお前は」
先輩からのつっこみを華麗にスルーして、私は笑顔で一番が名のり出るのを待った。
数秒して、氷堂先輩は、意を決したように、立ち上がった。
」




