七話
ラブホテルではなく、無事に駅前のカラオケへとたどり着いた。実はこのビルの隣がラブホだから、最後の最後までどちらに連れて行かれるか分からず、ツッコミを入れるために身構えていたのだが、それは杞憂に終わった。よかった。
カランコロンと、メロンソーダの中で鮮やかな緑に染まっている氷が音を立てる。それを勢いよく飲み干して、未来はマイクを手に取った。
「未来、それ私のなんだけど」
未来が用意した飲み物はカルピスだったはずだ。その証拠に未来の前には白い液体がなみなみと注がれたコップが置かれている。なぜ私のを飲んだ。
「失礼、キスがしたかったもので」
「昔みたいに直接唇を奪おうとしてこないあたりちょっとは成長したみたいで」
数年前、一度防衛が遅れて本当に奪われた。それが私のファーストキスの思い出だ。なんでこんな奴に私の大切なものを捧げねばならなんのだ。今すぐ返せ。
「ほら光、歌うよ!」
ピッピッピと慣れた手つきで操作して、三曲ほど未来の得意な曲を入れていく。
「私はいい。めんどくさい」
マイクを一本私に押し付けて、デュエットしろと言ってきた。あまり気分が乗らないので、丁重にお断りしてしたが。
「カラオケに来て歌わないとか、頭大丈夫?」
「さっきまで同性をホテルに連れ込もうとしてたやつのセリフとは思えんわ」
割と毎回貞操の危機を感じている。
未来が歌い始めたので、もう一度入れてきたメロンソーダをストローで飲みながら、それを眺める。こうしているとやはり美人だ。黙っていると、普通に過ごしているとか。ザ・女ののという感じで羨ましい限り。よくハーフやクォーターは美人だと言われるが、クォーターである私にはその法則は当てまらないようで、化粧しないとただのブスの私からすれば、未来の容姿は素直に羨ましい。私がクラスのボスだったら、真っ先に虐めてるレベル。せめて、その胸に着いた肉を寄越せと言いたい。
メロンソーダが減り、氷が透明に見えてきたところで、未来の一曲目が終わった。ふぅーと息を吐く姿も美しい。未来がクピリとカルピスを飲むと、次の曲のイントロが始まった。
「さて、光」
歌い出しが近づいても、未来はマイクを持たない。
「近況報告でも、してもらおうかな?」




