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五話

「あ」

「おっ」


  翌日、朝の電車で珍しく先輩と春野(はるの)先輩に会った。普段はめったに会わない。なぜなら私はいつも遅刻ギリギリに家を出るため、早くに家を出る先輩たちとは乗る時間帯が違うのだ。しかし、昨日早く寝たことが影響して、今日の私はいつもより家を出るのが早かった。そのため、二人に会えたのだ。

 この電車は都心部とは反対方面なので、ほかの電車と比べると、比較的空いている方だ。いつも余裕で座れる。三人並んで、シートに腰掛ける。順番は、私、先輩、春野先輩。

 会話はない。ただ静かに、電車に揺られるだけ。この空間が、なんとも心地よかった。合法的に先輩と肩が触れ合うし。

 窓の外は緑の葉が水をポタポタと垂らしている。私が寝ている間に、雨が降って止んだからだ。

 もうすぐ梅雨。嫌な季節になる。それからしばらくすると、台風が日本を引っ掻き回していくのだから、休む暇もない。

 横を見ると、先輩が眠そうに目をこすっていた。長いまつげが見える。女子としては、この目は羨ましい。私のまつげは短い方なのだ。化粧で誤魔化しているけれど。

 一体、今先輩は何を考えているのだろう。大方、妹ちゃんのことだろうが。全く、こんな美人二人に好かれて振り向かないなんて、男としてどうなんだろう。案外脱がせてみたら付いていないのかもしれない。妹と一緒にお風呂入ってるくらいだし。思春期の女子には兄とはいえ男児の股間にドキドキするものだろう。少なくとも私はする自信がある。だって、女の子だもの。今度、また弟と一緒にお風呂でも入ろうかな。嫌だな。ていうか弟は現在中学2年生だし、向こうも嫌だろう。断られでもしたら、家族間での私の評価が弟に欲情する痴女になってしまうかもしれない。最悪の事態どころではない。

 窓の外には、小さな畑がいくつか見える。このあたりの中途半端な田舎感には、もう飽き飽きしてきた。高校を卒業したら、東京にでも行こうか。お金はないけれど、最悪体を売ればなんとかなるんじゃないだろうか。……もし、そんな事をしたら、先輩はどう思うだろう。叱るだろうか。怒るだろうか。それとも、何も思わないのだろうか。

 きっと、この男はなんの感情も抱かず、いつもと同じように、私と軽口を叩き合うんだろうな。悲しいような、嬉しいような。

 やがて、電車は学校の最寄り駅に着く。改札を出ると、雨の匂いがした。


「午後から雨の予報に変わってるね」


 即座に春野先輩が天気予報を調べる。私が見た限りでは、確か今日の午後は曇り、降水確率も低かったはずだ。なんという変わり身の早さ。


「コンビニで傘買っといた方がいいかもな」


 恐らく私たちが部活を終える頃には雨が降っていて、その際には傘を持たぬ生徒がコンビニに駆け寄るだろう。それを見越して先に買っておこうという寸法だ。それに、これなら学校からコンビニまでの間に濡れる心配もない。

 駅の隣のコンビニで傘を三つ買って、学校を目指す。

 発表はまだなのに、空はすっかり梅雨色だった。

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