四話
二人係りで保健室に運び、一旦部室へと戻った。
「秋都……大丈夫かな……」
心配そうな表情で先輩は部室をうろついている。じっとしていることすらできないくらいに、気が動転しているらしい。
「保険の先生もただの寝不足だって言ってましたし、きっと大丈夫ですよ」
なだめる声も、春野先輩の耳には届いていないらしい。
「秋都、ずっと無理してたから……それだけ自分が疲れてても、ずっと夏花や冬乃を優先してきたから……つらいはずなのに、いつも頑張ってたから……」
「もしかしたら、何か大きな病気なのかも」
どうせ、聞こえていないだろうと思って、私はそうつぶやいた。確率的には低いだろうが、ありえる話だ。
しかし、こういう精神状態のときは悪いことだけはばっちり聞こえているようで、春野先輩は立ち止まってわなわなしだす。
「わ、私やっぱり保健室に行ってくる!!」
そう叫んで、春野先輩はとびらのなくなった出入り口を飛び出していった。なんだか、悪いことをしたな……。
それからしばらくして、廊下からドスンドスンと聞こえてきた。
「あれ?一人だけか」
いっぱいの工具を抱えた氷堂先輩だ。先ほど、扉が壊れたことを生徒会に報告に行ったので、簡易的な修理をしにきてくれたのだろう。このままでは、我が部の怠慢活動が露見してしまう。
とんてんかんとんてんかん。
リズミカルな音がしばし響く。室内なので、反響してちょっとうるさい。
ものの数分で扉は見かけ上は直った。
「多分またすぐに壊れるだろうから、すぐに業者に来てもらおう」
さすがは生徒会副会長。判断が早い。優秀なのは間違いないのだろう。この優秀さを恋愛にも持ち込んでくれれば、私としてはライバルが一人減るのから楽なんだけれども。
「それで、秋都くんは大丈夫なのかい?」
作業中に話した内容も、しっかりと聞いていたようだ。
「多分大丈夫だと思います。体を打ったわけでもなかったみたいなので」
一緒に倒れた扉が、いいクッションになったのかもしれない。
「普段から寝不足のようだし、心配だね……お、噂をすれば」
春野先輩と先輩が帰ってきた。とくにふらついている様子もなく、顔色もいい。
軽く言葉を交わして、先輩が鞄を二人に渡した。二人は、もう帰宅するようだ。
その際、先輩に軽く睨まれた。何か私が余計なことを言ったのではないかと心配しているのだろう。
春野先輩は、ずっと先輩にべったりだった。心底吐き気がする。
「氷堂先輩、私も帰っていいですか?」
「ん?ああ、なら今日はもう終わりにしようか」
二人が帰ってから五分、私も学校から飛び出た。こんな日は、早く眠るに限る。




