二話
無事、入学式が終わった後、親だったり新入生だったりでごった返す中、私は先ほど覚えたばかりの顔を探していた。人混みの中でも、知り合いの顔というのは目立つもので、その姿はすぐに見つかった。
先輩は、変わらずに正門の前に立っていた。先に、ペコリと頭を下げる。
「さっきは助かりました」
「郡山さんこそ、災難だったな。あのクソ教師、自分の気に入らないことは何でもああやって怒鳴るからな。髪のことだって別に校則違反でもなんでもないうえに、生まれつきだってわかるように写真まで持ってきてくれたのに……」
その先生の変わりになのか、先輩も頭を下げてきた。なんて人間のできた人だろうか。
一瞬、なぜ私の名前を知っているのかとも思ったが、それもそのはずで今日は胸に名札が付いていた。初めて顔を合わせる人が多いので、名前を早く覚えやすいようにという理由で、四月いっぱいはつけなければならないらしい。
「あの、先輩の名前、聞いてもいいですか?」
ここで名乗るほどのものじゃないと言われればそれまでだけれども、先輩は素直に教えてくれる。
「日山秋都。二年だ」
よく見ると、そこそこ顔だちは整っている。私好みのイケメンだ。アイドルグループに居たら、一番埋もれていそうだけれども、そこそこにイケメンだった。少なくとも、この高校ではトップクラスなんじゃないだろうか。
「部活とかは入ってるんですか?」
「青春研究部。おすすめはしない」
「じゃあ今から、職員室で入部届けもらってきますね」
「とりあえず、君が話を聞かないタイプの人間だということはわかった」
はぁ、先輩はため息を一つ。
「職員室は、廊下を右に曲がって三つ目のところだ。保健室の横」
それでも、ご丁寧に職員室の場所まで教えてくれた。良い人だ。
「ありがとうございます!!」
入学して数時間。私の高校生活の目標が決まった。
日山秋都を、恋人にすることだ。
そのためにもまず、先輩好みの女に化けるか。




