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一話

 遅咲きだった桜は、入学式の日、まだ少しだけ残っていた。

 別にこの学校に来る必要はなかったけれど、仲の良い友達に連れられ、私はここを受験した。設備もいいし、制服、主にリボンが可愛い。おまけに、校則は緩かった。特に入る理由もないけど、入らない理由もないって感じ。

 ただ、校則は緩いと言っても、口うるさい先生は存在するわけで──


「そんな髪じゃいかん!!黒じゃなきゃ学校には入れんからな!!」


 私はしょっぱなから、逆モヒカンといういかにもおしゃれな髪型をした中年のおっさん教師につかまっていた。後ろはバーコードだろうか。


「だーかーらー、生まれつきだって言ってるじゃないですかー!!」


 かれこれ数十分。そろそろ入学式が始まるころだろう。その証拠に、しわ一つないスーツを着た先生が、顔をひきつらせている大量の生徒を引き連れて廊下を歩いている。それなのに、私はまだ茶色く塗装された門すらくぐれていない。


「そんなの、信用できるか!!」


 入学早々怒鳴られた。思いっきり、遠慮もなしに。このはげ、一発チ〇コでも蹴ってやろうかな。そう思ったが、初日から問題を起こすほど私も馬鹿ではない。問題と言ったら、ここで止められている時点で周りからは素行不良の問題児に見えるのだろうが。

 念のために用意しておいた子供の頃の写真も無駄。ああ、私はどうすればいいのだろう。

 その時だった。


「先生、落としましたよ」


 正門で新入生の案内を行っていた、背の高い先輩が、先生のズボンから、ハンカチを抜き取って、そしてそれを先生に渡したのだ。何たる早業。それも、先生が怒鳴って意識が私を向いている一瞬の間に。


「ああ、ありがと……」


 先輩は、その瞬間私に向けて手をひらひらさせた。あっちいけのポーズだ。

 先輩に感謝しながら、私はハンカチを受け取ろうとしている先生の後ろを走った。


「あ、君のクラスは5組だよ!!」


 先輩は最後に、そう叫んだ。

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