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十八話

 目が覚めたのは午後3時。最後に時計を見たのは午前10時だったので、かなりの長時間眠りこけていたことになる。それも、リビングの机で。

 幸い、机によだれは垂れていなかったので、そのまま(みやび)が作ってくれていたおかゆを温めて食べる。程よい塩味に、舌が喜んでスプーンが止まらない。

皿の中を綺麗にした後で、冷蔵庫にあった麦茶をコップに注いで一気に飲み干す。ここでようやく、眠気が完全に取れた。

 コップを机に置いた時、テレビの横にかけられた一枚の写真が目に入った。

 そこに写っているのは俺と夏花(なつか)冬乃(ふゆの)。それに、俺たちの両親だった。確か、俺が9歳の時に行った、最初で最後の家族旅行の時のもの。広い温泉だったり、巨大な滝を見た記憶がある。確か、その脇にある小さな滝に、三人そろって打たれたりもした。

 あの頃は、まだ夏花と冬乃の仲はそこまでよくなかった。いまでこそ、仲良し姉妹だが。

 この写真は、俺が戒めのために、ここに置いたものだった。二人へあてたこの感情を、忘れてしまわないように。この写真を見るたびに、俺は二人への怒りをばねにして、頑張ってきたのだ。

 最近は、めっきりこれを見る機会が減っていた。というか、もうほとんど忘れていた。ここに置いたことすら、きれいさっぱり。

 それをもとの場所に戻すと同時に、玄関の方で扉の開く音がした。時計を見ると3時半。誰が帰ってくるにしても、早すぎる。


「ただいまー。って、兄ちゃんもう大丈夫なの?」


 夏花だった。軽く息が切れている。


「兄ちゃんが心配で、走って帰ってきたんだよ」


 勝手にそう答える夏花だったが、絶対部活さぼってるなこれ。


「ちなみに、冬乃は?」


 夏花がここにいるということは、高確率で冬乃も部活を休んでくるはずだ。ここで大事なのは、夏花が「サボる」なのに対して、冬乃は「休む」であるところ。


「道端でへばってたから、置いてきた」

「お前な……」


 冬乃はただのマネージャーだ。夏花と違って普段から鍛えていない分、体力も走力も相当劣るのだから、一応お姉ちゃんである夏花には気遣いというものを教えてやらなければならないかも知れない。


「そんなことより、兄ちゃんは大丈夫なの?」


 再度、質問を繰り返してくる。


「朝よりはましだが、まだ熱はあるっぽいな」

「なら、寝とかないと」


 背中を押され、階段を上がる。


「今日は家事とか全部任せてもらっていいから、早く治すんだぞ!!」


 押し切られて、俺は自分の布団で再び眠ることになった。

 いや、いま目が覚めたところなんだけど……。

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