十七話
翌日である。
「これはちょっとやばいな……」
朝からなんだか体が重かったので、体温を測ってみると、38℃を上回っていたのだ。
「学校、電話しようか?」
夏花と冬乃が、心配そうに俺を見ている。自分でするよりかは、二人にしてもらった方が楽だろうから、ここは任せることにした。
弁当に関しては、昨日あれだけ心の中で言っていたのに、さっそく雅に頼る羽目になってしまった。それどころか、消化のよさそうな昼食まで用意してもらう始末。体調不良は仕方のないことなので、今日はおとなしく任せたが。
「何か食べたいものがあるなら、学校帰りに買ってくるけど」
「唐揚げが食べたい」
「今日は我慢しなさい」
怒られてしまった。同い年の人間に。
「じゃあ、桃缶」
無難なところを攻めてみた。これには雅は何も言わず、うなづいて学校へと行った。
夢を見た。
というか、今も見ている。
内容は、前も見た夏花と冬乃が泣きながら俺に抱き着いてきたときの夢だ。
これは、もともと現実であったシーン。時系列的には、俺の中学校の入学式の日だ。つまり、日山家野両親が、子供を置いて海外へと飛び去った、忌々しきあの日だ。
「お兄ちゃん、私、どうすればいいの?」
嗚咽を漏らしながら、冬乃は言う。親に置いて行かれた。普段からあまり会っていないとは言え、それでも冬乃にとって血のつながった家族は大切な存在だった。俺と夏花には、まだお互いという存在がいる。それでも、冬乃にはそれがいない。それがどれだけの苦しさを持っているのか、俺には到底分からない。知らないのだから、分からなくて当然だ。
「俺がいるから、大丈夫だ」
だから、これ以外にかける言葉が見つからなかった。正解だったのか不正解だったのか、祖俺はわからない。だが冬乃の気を静めるには、十分だったようだ。先ほどよりも、ずっと強い力で、俺に抱き着いて涙をぬぐっている。
「あの人達は、泣いてわめいても戻ってきてはくれない。自分たちで何とかするしかないんだ」
二人を慰めるのと同時に、そう自分に言い聞かせた。
俺は、泣かなかった。もともと、親のことは好きではなかった。それもあるが、俺には妹がいる。夏花がいて、冬乃がいる。だから、どれだけ心が痛くても、「お兄ちゃん」である俺が、二人の前で涙を流すわけにはいかない。どれだけこれからが不安で、想像するだけでも辛くても、俺だけは、泣いてはいけないのだ。
零れそうな涙を頑張ってこらえ、二人をぎゅっと、抱きしめて、「大丈夫だから」とささやくしか、なかった。俺が、俺でいるためには




