十三話
「ただの寝不足っぽいわね」
倒れたのち、保健室に運ばれたらしい俺は、真っ白な部屋で一時間ほど寝かされた後、保険の先生にそう告げられた。
「ありがとうございました」
「ちょっと待ちなさい」
診察の結果はすでに聞いたので、俺は立ち去ろうとしたのだが、しかし止められてしまった。
「倒れるほどの寝不足って相当よ。もう少し寝ていきなさい」
なるほど、貧血とかならともかく、寝不足でぶっ倒れるというのはあまり聞かない。部室で眠るよりも、快適な睡眠が期待できそうなので、甘えさせてもらおう。
薬剤の匂いを漂わせた先生に連れられ、再びベッドに戻った。あまりの白さと、鼻につく薬剤の匂い。ベッドは程よい固さで、すぐにでも眠れそうだったが、それを取り巻く環境が、どうにも好きになれない。いや、使わせてもらっておいて何でこんな我儘なんだって話だけれども。
「私、職員室に戻らなきゃいけないから」
あたたかい布団にくるまれて数分。先生はがらがらと容赦なく音を立てて出ていった。
これで、この部屋には俺一人である。話相手もいないので、おとなしく眠っているほかなさそうだ。
うとうとと、瞳を閉じて、思考を捨てる。寝つきの悪い人種もいるらしいが、残念ながら俺はそんなものとは無縁、5分もあれば夢の中へとトリップできる。
目をつむって、あと少しで眠れるかというところで、からからと扉が開いた。
はじめは、先生が戻ってきたのかと思ったが、しかし入ってきた足音は、迷いなく俺の使用しているベッドの方へと向かってくる。
はふん、とと息が聞こえてきた。そして、俺の手に、人のぬくもりが伝わってくる。誰かが、俺の手を握っているのだ。
「秋都……」
雅の声だ。少し、湿っているように思える。
「死なないで……」
……え?




