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三話

 頭をかかえている(みやび) に、さらに追い打ちをかける

「それに、俺には夏花(なつか)冬乃(ふゆの) がいるからな。俺は二人を幸せにするのに精いっぱいなんだよ」


 今さら俺たちの間に誰かが割って入るなど、想像もできない。俺たちは、俺たちとして、すでに成り立っているのだから。安定している希ガス族には付け入ることができないのと同様、すでにこのスタイルで固まっているものが、崩れるなんてことはない。よほどのことがない限り。


「日本じゃ、兄妹じゃ結婚できないよ」

「俺の将来が政治家になりそうだな」


 婚姻の自由をさらに自由に。


「そもそも、俺はあいつらと結婚したいわけじゃないからな」

「でも、狂ったように愛してるよね?」

「家族愛はどこまで高まっても、家族でしかないんだよ」


 思えば、家族というのは不思議なものだ。生まれた瞬間から愛を注いでくれる、唯一無二の存在なのだから。もっとも、昨今の日本ではそれすら崩れ落ちているのだが。


「俺は妹という概念を愛しているが、それは家族だからだ。つまり、すでに家族である俺たちの間に、結婚なんてものは必要ない」

「それをドヤ顔で言われてもね……」


 ドヤるような名言を生み出してしまったのだから仕方がないだろう。


「そういえば、夏花は?」


 何も言い返せなくなったのか、雅は唐突に話題を変えた。


「リビングにはいなかったな」

「あの子に似合いそうな服が合ったから持ってきたんだけど……」


 言いながら、雅は持っていた鞄から明るい色のワンピースを取り出した。時期的には少しい早いが、夏らしい服で、つまりは夏花に名前も性格も容姿もぴったしということだ。


「夏花なら、まだ学校」


 発言の主である冬乃は、依然としてベッドに寝っ転がっている。


「なんかあったのか?」

「夏の大会が近いから、一人で居残り練習」


 冬乃は夏花のクラブでマネー―ジャーをしているのだが、先に帰ってきているということは、夏花が冬乃も一緒に残るのを拒んだのだろう。


「ほかの部員は全員帰ってるんだな?」


 先ほど冬乃は、「一人で」と言ったことから、答えは分かっているようなものなのだが、一応確認しておく。


「夏花を除けば私が最後だった」


 もちろん、肯定の意である。

 時刻は午後七時。すっかり日も落ちて、街灯と月の明かりだけが頼りになる時間帯である。


「ちょっと迎えに行ってくるな」


 これだけ帰りが遅いと、心配になるのが兄というものだ。


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