十二話
6限の睡魔は異常だ。
どれだけしっかりと意識を保とうとしても、無駄な足掻きと嘲笑って襲ってくるのだから。それも、よりによって我が第二学年が誇る鬼教師の数学の授業で。
抗っても抗っても、繰り返し襲いくるし。
全く、なぜ人間は眠くなるのだろう。そりゃあ疲れがたまるからという理由は理解できるのだが、そんなものは妹を抱きしめれば自然と解決する問題ではないだろうか。妹のいない負け組人類は知らんが。
訳の分からない数字の羅列が、さらに眠気の波長を大きくしていく。時計を見ると、チャイムがなるまではあと40分もある。授業開始からまだ10分しか経っていないようだ。なんとも無情な現実。俺はもう負けそうだ。テストの点数は取れているから、一度くらいの敗北は構わないかもしれないが、今も戦っている妹を差し置いて、負けてしまうわけにはいかない。なんとしても、あと40分食いしばるのだ。
舌を強く噛んで、血の味をも噛み締めながら、俺はシャーペンを走らせた。
フラフラになりながら、放課後。
ようやく寝られると安堵しながら、俺は廊下を這った。
キンキンと頭が鳴る。眠気が限界に近い。夏花と冬乃が毎日のように俺のベッドに潜り込んでくるから、夜中まで愛し合っていた(一線は超えていない。あくまで俺たちは兄妹だ)から、少々寝不足だったのだが、まさかこんなにも早く限界が来るとは……。
部活が終わるまでの3時間、ゆっくりと寝るとしよう。
スライド式の扉に張り付いて、体ごと横へ逸らそうとした。しかし、その時中から二つの女の声が聞こえていきた。雅と郡山だ。
「春野先輩、今のところ勝ち目ないですよ」
そんな会話が、微かに聞こえてくる。恋愛相談だろう。それも、俺の攻略の。
「それでも、とりあえず自分の思いは伝えてみようと思ってる」
それだけ聞いたところで、俺の意識は、バタバタンという音とともに、消えていった。




