十一話
「えっと、正直に言っていいですか?」
「ああ」
「気持ち悪いです」
まあ、俺がシスコンに目覚めたってだけの話だし、その感想は正常な人間なら誰もが抱く感情なのだろう。
「あと、どんな重いエピソードが来るのかと思って身構えてたのに、何でシスコンになったくだりだけギャグなんですか」
「人間とはそういうものだと思ってあきらめろ」
なってしまったものは仕方ないじゃないか。悪いのは夏花と冬乃の可愛さだ。
「あ、先輩、紅茶もう一杯もらえますか?」
いつの間にか、郡山は紅茶を飲み干していた。お湯はすべて使ってしまったので、またそこから始めることになる。
俺もしゃべり疲れてのどが渇いていたので、自分のカップを空にした。
もう一度紅茶を注いで、仕切り直し。
「郡山後輩よ、お前曰く今日の集会の名目はデートらしいが、俺はデートと言う存在をラノベやアニメでしか知らないのだが。ましてや、家の中となると無知と言っても過言ではない」
「残念ながラノベやアニメでつけた恋愛の知識を知識とは言わないんですよ。ご都合主義のもとに築かれたストーリーですから。その前提が崩れている現実世界で通用すると思ったら大間違いですよ。ちなみにおうちデートと言うのは特に何をするでもなくただゴロゴロするだけのことです」
「それをデートと呼ぶとは、人類も変わっちまったな」
「またの名を夫婦ごっこです」
「帰れ」
とりあえずゴロゴロした。目いっぱいゴロゴロした。一年分くらい。紅茶を飲んだり、クッキーを食べたりして、ほとんど会話もなかった。郡山は何がしたかったのだろう。よくわからない。
そして午後6時。そろそろ妹たちが帰ってくる時間だ。つまり、邪魔者にはおかえり願わなければならない。
「郡山、そろそろ……」
「あ、はい。帰る準備は出来てます」
なんという用意の良さ。感服だ。
すたすたと来た道を引き返し、郡山は足早に玄関へと向かった。
「では、お邪魔しました」
「おう、次はないと思え」
今回は出血大サービスだ。許可したころの俺の機嫌がよくなければ叶わなかっただろう。
「あ、そうだ、先輩」
ヒールを履いて立ち上がったところで、郡山は俺の方を向いた。
しかし、言いにくい内容なのか、待っても言葉は続かない。
「どうした?」
俺が急かすと、郡山は大きく息を吸って、ようやく口を開いた。
「どうして、春野先輩を傷つけるようなことを言ったんですか?」




