一話
窓側の一番後ろ。黒板の目の前の席の俺と違い、良いポジションに座るそいつの席には、俺が学校についたころには、すでにたくさんの人たちが集まっていた。具体的には6人。我が二年C組が誇るリア充グループだ。男女比はちょうど半々、誰にでも優しく根暗オタクどもからも人望のあるそのグループの中心に、そいつは位置している。
俺が視線であいさつを交わすと、イケメンスマイルでウインクを返してきた。少し待っていろの合図である。
待つこと数十秒。仲間との談笑を終え、そいつはこちらに向かってきた。
「おはよう、日山」
「今日もうざいくらいにイケメンだな、お前は」
さわやかな金髪に、を揺らしながら、ニコニコと笑う男の名は青葉 清。俺や雅とは中学の頃からの同級生だ。
「で、なんかあったのか?俺に頼るってことは、恋愛とかそっち方面なんだろうけど、告る告られるのどっちかでもしたのか?」
口が上手いので、ひっきりなしに言葉が出てくる。どこかで適当に区切ってやらないと、いつまでたってもしゃべり続けているような、そんなヤツ。こいつとつるんでいるだけで自然とクラス内での立場は守られるので、少なくともあと一年は付き合っていくことになるそうだ。
「雅が氷堂先輩に告られた」
「ありゃ完全に脈なしだろうに、思い切ったことをするもんだね、あの人」
けしかけたのが俺だとは言えなかった。それにしても、結果を決めつけているあたり、本当にこっち方面には強いやつなんだなと思い知らされる。
「で、諦めの悪い先輩の恋が実るような秘策を教えてほしいってわけだ」
「無理だろ」
言い切られてしまった。どれだけ絶望的なのだろう、この恋愛。
「春野の気持ち、考えてやれってのが俺の率直な意見だな」
「雅の気持ちって?」
「……殴っていいか?」
「仮にOKしたところで保身的なお前がこの場で殴り掛かってくることなどないだろ」
「世の中には男子トイレという場所があることを知らないのか?」
「すまん、普段妹の付き添いで女子トイレにしか入らないもんで、男子の方は存じ上げない」
「今すぐ出頭しろド変態」
話が脱線しすぎたな。
「で、雅の気持ちって?」
「無限ループを始めようとするな」
「いや、本当に分からんのだが」
いまだに俺、雅の性格とかつかめてないし。優しかったり怖かったり酷かったりする幼馴染って認識だし。そこに別の感情があったとして、俺にはなんら関係のないことだし。青葉のいうような、「雅の気持ち」とは、一体全体なんなのか。
「まあ、分からないなら分からないでいいが、もう少し春野に寄り添ってやれ、とだけ言っておく」
青葉は席に戻って、リア充どもの会話に入り込もうとしていく。
「おい、本題についてのアドバイスがまだだぞ!!」




