八話
「春野さん、ずっとあなたのことが好きだった!!僕と付き合ってくれ!!」
運動場から聞こえてくる、運動部の声がかき消された。愛の言葉で。自分の全てをぶつけるようなその言葉に、俺たちは震えるばかりだった。
「言った……!」
今までずっと応援してきたので、まだプロローグでしかない彼の物語の始まりが嬉しく思える。
これに対して、雅の答えは。
予想はしていただろうが、突然のことを受け止めきれていないように見える。証拠に、先輩の告白を聞いた後、はちょこまかとその辺をうろついている。なんの意思ももたず、ただ気を紛らわすために。
たっぷり30分。それだけかけて、雅は足を止めた。悩みに悩み、真剣に考えた結果だ。誰も何も、文句は言えない。鼻からどんな結果になろうと文句など言うつもりはないが。
30分間、先輩はずっとガチガチに緊張していていた。小刻みに震えていたし、強く目を瞑っている時もあった。どれだけの心労がかかったのだろうか。告白などしたこともされたことも、恋愛的な意味で人を好きになったことのない俺には分からない。
雅も、返事をする覚悟を決めたようで、再びの対峙。そんな二人を嘲笑うように、風が桜の木の葉を揺らした。
雅も先輩も、震えている。お互いに怖いのだと思う。どう転んでも、関係が変わってしまうのが。例えばフラれたとして、せっかく仲良くなったのに、二人がまともに話せなくなってしまえば、元も子もない。俺としても望むことではない。成功したとしても、リア充はうざい。まあそこは、幼馴染の幸せを望んで先輩の手助けをしてのは俺だと言うことで、そこは許容するが。
「せ、先輩……」
ようやく、雅は声を絞り出した。か細く、震えている。スカートを強く握りしめて、雅は続ける。
「私、先輩のことそういう風に見れないので……。だから、えっと、ごめんなさい!!」




