七話
「やっと終わったー!!」
日常というのは意識していないとあっという間に過ぎていくもので、すでに時はテスト後である。
思わず叫んだ郡山を筆頭に、全員疲れ気味の顔なのは、それだけ今回のテストがハードだったことを証明している。実際、俺も今回は自信がない。結構勉強したんだけどな……。
「よし、先輩!約束通りデートしてもらいますよ!!」
「ちっ覚えてやがったか」
「忘れるわけないじゃないですか」
というわけで、俺は近いうちに郡山を我が家に招待しなければならないようだ。
こんな会話をしていると、部室にガタンと椅子から立ち上がる音が聞こえた。氷堂先輩だ。思いつめた表情で、雅を見ている。
「僕も、そろそろ覚悟を決めなきゃな」
そう小さく呟いた後、氷堂先輩は、雅に向かってこう言った。
「春野さん、今からちょっと僕についてきてほしい」
思わず、俺と郡山は顔を見合わせる。これは、つまりそういうことなのだろうか。ついに、告白してしまうのだろうか。俺的には、もう少し後だと思っていた。かなりのヘタレだから、あの人。それが、俺の予想をはるかに上回るスピードで、覚悟を決めてくれた。
突然のことに雅は、状況を飲み込めていないようだ。目がキョロキョロと動いていて、どうすればいいのか分からなくなっている。最終的に、言われるがまま氷堂先輩についていった。
「郡山、もちろん行くよな?」
「ここで行かないやつは高校生じゃありませんね」
満場一致である。ちなみにどこに行くのかというと、もちろん告白のシーンを見に行くのである。野次馬根性丸出しで、覗きに行く気満々である。こんな面白そうなイベント、逃すはずがないじゃないか。果たして、俺の幼馴染はなんと答えるのか、見ものである。俺としては、ここでめでたく幸せになってほしいものだが……。
「ちなみに勝算はあると思うか?」
「五分五分ですね。そもそも春野先輩、表にそういう感情出すタイプじゃないですから。二人の距離感も普通ですし。どっちに転んでもおかしくないです」
雅と同じJKという存在に聞いたところ、とのことだった。俺もさして意見は変わらない。成功失敗の両方が、見えてこない。どちらも高確率で低確率。すなわち50:50だ。
気づかれないように少し時間を開けて部室を出て、一本道の廊下を歩いていると、二人の声が聞こえてきた。まだ移動中のようだ。
氷堂先輩が告白の場所に選んだのは、中庭のようだった。大きな桜の木が生えているのだが、五月も終わりに差し掛かった現在では、その姿を確認できない。
しかし、緑がいっぱいあって、ここが嫌いという人は少ないだろう場所なので、告白にはもってこいだと思う。実際、俺の唯一のクラスの友達も、何度かここで告白されている。やつはモテるのだ。俺とは正反対に。もっとも、俺は妹にだけれモテていたらそれでいいのだけど。
郡山と二人で草陰に隠れながら、桜の木の前に立つ二人を見守る。雅も流石に何が起きるのかは理解しているようで、少し緊張しているのように見える。しかし、氷堂先輩はこれの比ではないくらい、ガチガチである。
そのまま、数分。氷堂先輩は、深呼吸を三つして、ついに口を開いた。
「春野さん、ずっとあなたのことが好きだった!!僕と付き合ってくれ!!」




