六話
「これがこうなるから、これの答えはこうで……」
「先生!!分かりません!!」
郡山の丁寧な説明に、夏花は元気よくそう答えた。かなり初歩的な科学の問題なのだが、夏花にはラスボス級の難易度だったようだ。
「えっと、だからこれとそれがイコールで、あれの答えはこれとそれを引き算したら出て……」
「先生!!どれがどれでどうなるのか分かりません!!」
郡山は涙目だ。お気の毒に。
「夏花、これがあれをこうして、それをあれとああするからこれがこるからこれが答えになるの」
冬乃が横槍を入れた。説明的には大差ないのだが、一緒に過ごしてきた年数の差なのか、夏花はコクコクと頷き始めた。
「なるほど、さっすが冬乃!!」
冬乃は満足そうに、自分の勉強に戻った。
「えっと、じゃあ次は国語の勉強しよっか」
理科は諦め、次は国語の教科書を開いた。
「この漢字は人がこうしている動きを表したものだから、こうなって……」
「なんで人が人偏なのか分かりません!!」
夏花に漢字の勉強をさせるのは、至難の技どころではない。自らの命と引き換えにするくらいの覚悟がなければ、このバカには伝わらないのだ。
「人って文字を少し傾けたらこう見えるでしょ?」
なるほど、わかりやすい説明だ。これなら夏花も……。
「なんでわざわざ傾けたんですか!!そのままでいいじゃないですか!!」
俺が思っている以上に、俺の妹はバカだった。果たして、郡山は夏花にまともな教育をできるのだろうか……。少なくとも、俺にはできない。というかしたくない。絶対に。何があっても。
「先輩、私……」
「郡山、辛かったらいつでも逃げ出していい。他人の結果を背負うなんて、お前には重すぎるからな」
なんとなく、名言っぽいことを言ってみる。
「先輩……」
しかし、成績はよくとも中身はバカな郡山には、感動を与えるメッセージだったようで、ウルウルと俺を見つめてきた。
「いつまでもバカやってないで、さっさと真面目に勉強しろ」
そうやって遊んでいると、雅に怒られてしまった。正論に返す言葉ないので、俺と夏花と郡山は、
「「「すみませんでした……」」」
と頭を下げた。
ところで、氷堂先輩が空気すぎるのは気のせいだろうか。




