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三話

 部活を終え、自宅の最寄り駅へと降り立った。

 最近の日課といえば、ここで家とは逆方向に足を運ぶことである。夏花(なつか)を迎えに行くために。


「今日は早かったな」


 いつもは少し待たされるのだが、今日はすでに校門前で待っていた夏花の荷物を奪い、今度こそ家の方向に向けて歩き出す。


「最近トレーニングのしすぎだって、顧問の先生に怒られた」


 生徒のことをちゃんと見ているいい先生がいるようで、俺としては安心だ。


「怪我しちゃ、元も子もないしな」


 夏花たちの通う私立中学校は、文武両道を謳っているだけあって、運動方面にも力を入れている。なので、その運動部の顧問は、一流の人を雇っていたりするのだ。陸上部も、もちろんそうで、つまり初めから怪我をしないためのギリギリ限界のメニューが組まれているはずなのだ。なのに、最近の夏花は部活の後に一人で練習している。限界のメニューより、多くのトレーニングをこなしているのだ。そりゃあ、顧問からすれば心配にもなる。俺だって、心配だから迎えに来ているわけだし。


「だからしばらくは、ストレッチとか基礎トレに専念しろって言われた」


 一流の顧問というのは流石のもので、誰が怪我しそうかなどはすぐにわかるのだろう。だから夏花に対して、こういう処置をとった。それが、夏花の怪我を防ぐための、唯一の手段だったから。

 俺にはおそらく、夏花が暴走しようと、陸上に関する知識がないものだから止めようがない。顧問の人が止めてくれて、かなり助かった。旨を撫で下ろせる。


「ま、やれるだけ頑張りなさいな。お兄ちゃん応援してるから」


 大会での記録を残したい一心の妹の頭を、軽く撫でてみた。はにかんだように笑う夏花は、心底可愛くて、ブラジルに向けて叫びそうになった。

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