十四話
ぐるぐると回りながら進む、宇宙空間飛行を模した室内ジェットコースター。
マスコミになり、事件を追う途中で死にかけるが蜘蛛の糸に引っかかって助かる乗り物。
今までゆっくりと進んでいたのに、最後の最後で急に落下するアトラクション。
他にも、スケートボードに乗らされ、そのままぐるぐる回されたり、空を横回転させられたりした。風船で浮かんだりもした。
そこそこ満喫した頃には、日はすっかりと沈んでいて、一部を除いては、園内は暗くなっている。
そう、一部を除いては。
幻想的な光を放ちながら、更新してくる軍団がいる。大きな乗り物を引き連れて。そう、夜はパレードの時間である。家族連れからカップルまで、色々な人で、通路がごった返している。動こうとしても動けない。パレードのルートは塞がれているので、しばらくここで見守っておくことにした。
最前線にいる、徐々に徐々に、雅に手を近づけている氷堂先輩を。
俺も郡山も、パレードよりそっちに興味津々だ。なるほど、あの初々しい恋愛が世間に受けるのか。これでは、高校生の恋愛もバカにできない。見ているぶんには、とても面白いから。
「いけ、氷堂先輩!!そこで一気に攻めろ!!」
などと、郡山は小声で声援を送っている。女子としては、こういうところでやられるとドキッとするものなのだろうか。だとしたら、ここで一気に攻めねばなるまい。俺も拳を握って、心臓を高鳴らせながら視線で背中を押す。それが届いたのかどうかは、確認のしようがないが。
あと少し、というところまで、二人の手が近づいていく。しかし、不意に宙に静止していたはずの手が、離れた。
雅が、手を旨の前まで動かしたのだ。先輩の気持ちなど知らず、パレードだけに釘付けになって。
「あらら……」
それまでテンションの高かった俺たちも、少しがっかりとした顔になる。
「まあ、しょうがないよな、これは」
また次のチャンスを待つしかない。人生とは、そういうものだと、割り切っていこう。
「春野先輩って、あんな風にはしゃぐんですね」
「その日のテンションにもよるが、結構子供っぽいところもあるぞ、あいつは」
逆に、辛辣で暴力的な言葉を全速力で投げつけてくる日もある。というかこっちの方が多い。俺に対しては。まあその辺りは、幼馴染の信頼関係によるものだと勝手に解釈しておこう。日によっては、女神にもなり得る存在だし。
「それはそうと氷堂先輩、随分とヘタレですよね」
「本人もそれが彼女が出来たことのない原因だと言ってたな」
せっかく容姿は整っているのに。知力も身体能力も、抜群だというのに。
思い切りのなさ、肝心なところで何も出来ないのが、自分の悪いところだと、常々言っていた。
「あの様子じゃ、一生できないでしょ、彼女」
「向こうから来てくれれば、そこそこうまくいくと思うんだけどな」
しかし学生の間では、男の方から告るのが当たり前な雰囲気も未だに流れている。女側から告らせるのは情けないと、クラスの男子が言っていた。
「今回の場合、雅には全くその気がないから大変だな。そもそも、先輩の好意に気づいてないだろうし」
「あの人も、そういう鈍感なところで損しそうですよね」
好き勝手に言い合いながら、時間の経過を待つ。雅が、次のチャンスを与えてくれるその瞬間を。
どれほど待っても、そんなチャンスは来てはくれなかったが。




