十二話
氷堂先輩のスマホが、目玉アトラクションである白いジェットコースターへと向かっていく。
それを追って、俺と郡山も同じ列へと並ぶ。
「一番並ぶアトラクションに、人の少ない開店直後に行くとは、なかなかの手練れですね」
「昨日夜遅くまで研究してたらしい。絶対成功させたいとか言って」
今日の朝、LINEで交わした内容である。報告・連絡・相談は大事だ。忘れっぽい人はほうれんそうでおぼえるといい。
「全く、高校生の恋愛とか、一体なんの意味があるのかねぇ」
学生時代の彼女となんて、どうせすぐに別れるだろうに。お互い、青春という熱に浮かされているだけなのだから。青が冷めれば、赤も冷めてしまう。対局というほどではないものの、似てはいないこの二つの色を同時にしますとは、社会には一体どんな魔法がかかっているのだろう。妹と冷めない愛を築いている俺を見習ってほしい。
「でも先輩、制服デートとか憧れません?」
「いやそれめっちゃ人に見られるから。視姦されまくりだから。好きな人は俺にだけ見えてれば良い派なんだよ」
「それはまた、凄い派閥に所属してますね」
「好きな人が俺以外の生物に触れられたら、俺は発狂するぞ」
ただし、妹同士の絡みは除く。あと雅もギリギリセーフだ。
「恋愛向いて無いどころじゃないですね」
「向かなくていい。もうすでに、相手はいるから」
妹相手の恋愛なら、恋愛への適正なんて関係ない。初めからお互いのことをよく知っているのだから、相手がなにを思ってどう行動するのかなんて、大体わかるからな。この状態から他の女に乗り換えるとか、なぜそんな無駄なことをしなければならないんだろうと思う。
「シスコンも、大概にしておいた方がいいですよ~。あんまりこじらせると、妹ちゃんに相手ができたときが大変ですから」
「やめろ。間違ってもそれを口にするな。俺の精神がどうなってもいいのか」
そんなことはないと頭では分かっていても、結構傷つくからな。それ。妹に捨てられるとか、想像もしたくない。
「その時は、私が付きっ切りで看病してあげますよ」
俺はそんなこと、絶対に望まないのだが……。それでも、そういうときに誰かがそばに居てくれるのは、ありがたいものなのだろうか。
「てか、いつになったら乗れるんだろうな……」
「空いてるって言っても、一時間以上並びますし、気長に待ちましょう」
これに一時間も並ぶとか、いつの間に日本人の頭はそんなにおかしくなったのだろうか。どう考えても、俺には理解できない。妹にせがまれない限り、多分二度とこんなところには
こないだろうな……。




