十一話
「悪い、風邪ひいたみたいだ……」
翌朝、むかえに来た雅に、そう伝えた。わざとかすれた声を出すのが思った以上に大変だっただけで、他はなんの苦労も無く俺は飄々と嘘をついて見せた。これほどまでに堂々と嘘をつけば、逆にばれないんじゃないかというくらいには、胸を張って。
「大丈夫?看病しようか?」
だがしかし、仮病だとばれないように頑張りすぎたのが災いしてか、逆によわよわしくなりすぎてしまったようで、雅に心配されてしまった。
「まあそこまで酷くないし、一日寝てれば治りそうだから看病はいらん」
なので、きっぱりと断った。ここで雅に看病につかれては元も子もない。氷堂先輩に一人で遊園地を歩かせるわけには行かないのだ。そんなシーン、誰も望んでいないし。
「そう?じゃあ私、行ってくるけど何かあったらすぐ連絡してね」
「おう、楽しんで来い」
チケットはこの間の部活の時に先輩に渡してあるので、雅はなんの心配もせずに駅に向かって住宅街を歩いて行った。なんとなく、その背中が見えなくなるまで手を振り、家のとびらを閉じた。
そして、服を着替えてすぐ、また扉を開いた。
無論、尾行するのである。目的地はわかりきっているので、ものすごく楽な上に万が一の時のために氷堂先輩のスマホにはGPSをつけておいたため、どこに居ようとすぐに分かってしまうのだ。技術の正しい応用方法だ。
先輩に渡したチケットは二枚だけなので、残りの二枚は俺の手中にある。
「お、先輩。準備万端ですね」
「悪いな、わざわざこっちまで来てもらって」
もちろん、俺が使っても余ってしまう残りの一枚は、元の予定通り郡山のものになる。なので、今から二人で尾行だ。こいつの家は一駅分ほど離れたところにあるのだが、駅で鉢合わせなどが起こらないように歩いてきてもらった。
「よし、行くか」
満を持して、尾行の開始だ。人生初の展開なので、割とわくわくしている。まあ、行き先はただのテーマパークで、追っている人物も怪しい人という訳でもないので、少しスパイスが足りないように思えるが、幼馴染がちゃんと恋愛できるか、見守ってやろうではないか。




