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十話

 大人になればなるほど、時間の流れが速く感じるというのはよく言われていることだが、しかしそれは別に年齢だけが関係しているわけではないのだと俺は思う。あくまで、俺の持論だ。これを念頭に置いてほしい。

 例えば、小学生の時、好きな子と一緒にいるとき、妙に時の流れが速くならなかっただろうか。俺の場合は常に妹たちと一緒にいたので、おそらく周りと俺の時間の感じ方は倍ほど違ったと思う。逆に、つまらない奴といるときは、時間の流れは、永遠にも感じられる程遅かったはずだ。こちらはあまり経験がないが。

 つまり、楽しい時間は早く過ぎるし、暇な時間は全然すぎてくれないのだ。悲しいことに。世界三大バグの一つともいえる。ちなみに残りの二つは人類が誕生したことと、昨今の日本の気温だ。夏は暑いわ冬は寒いわ。地球が俺らを恨んでいるのは分かるが、しかし俺は殆ど何もしていないのだから、少しは見逃してほしいものである。まあ、今は春、それも終りかけなので温かく、過ごすにはちょうどいい気候なので、このまま夏に突入してくれるのを願うだけだ。

 さて、いくら土曜日の午後だと言っても、こんなに寝てばかりではいかんだろう。今日もなかなか起きてくれなかった妹たちに見せる顔がなくなってしまう。顔がないというのはつまるところ、俺に外界を見渡す目がなくなってしまうということなので、結果的に妹たちの顔を二度と拝めなくなってしまう。それは困る。非常に。生きている意味の12割を失ってしまう。


「そんなに軽く限界突破するな」


 そんないつも通りの午後三時、俺の瞳に天井以外の物体が映った。


「お前もたいがい暇だな」


 (みやび)である。いつも通り自分の家にいるのが退屈だったのだろう。


「まあ、家にいても勉強くらいしかすることないし」

「俺の読んでる本、貸してやろうか?」

「あんまり興味ないかな」


 それは残念。適当に読んでいても面白い名作がそろっているのに。しかし、俺に自分の好みを他人に押し付ける趣味はないのでこれ以上この話題を広げるのはやめておこう。

 そして、お互いに何もすることがないからここにこうして集っているわけで、故になにをするでもなく、話すことすらやめ、妹たちが部活でいないこの家には、しばしの静寂が訪れた。このまま何時間も過ごすこともざらだ。にある。決して年を重ねるごとに距離間が微妙に分からなくなった仲良しだった男女を現した構図ではないので。そこを勘違いしないように。

 気が付けば、時刻は午後6時。いつも通り無駄な時間を過ごした。俺が思うに、ぼーっとして無駄な時間を過ごすのは精神衛生を保つうえで最適な方法なので、多忙な社畜の皆さんは頑張って日常生活に取り入れてみると良い。


「そろそろ帰ろうかな」


 いつもならもう少し、それこそ俺と妹たちが過ちを犯さぬよう夜中までいることもよくあるのだが、今日は帰る気分のようだ。止める理由もないので、何も言わない。


「じゃ、また明日」


 明日は日曜日。俺は仮病で休むのだが、雅はそれを知らない。


「ああ、今日は早く寝ろよ」

秋都(あきと)もね」


 小さく手を振って、俺と雅は別れた。


「さてと、洗濯物でも取り込むかな」


 誰もいなくなった部屋で、それだけつぶやいて、雅に続いて部屋を出た。

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