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九話

 日曜日を愛で満たし、月曜日。昨日のうちにコンビニで買ってきた、4枚のテーマパークのチケットをカバンに潜めて、部活動に挑む。必要なのは2枚だけだが、一応「部員全員で」と言う建前がある以上、必要のない2枚を買わなければならなかった。かかったお金は後で請求することになっているので、俺の負担はゼロに近いためさほど気にすることはない。


「やあ、みんな揃ってるね。じゃあ部活動を始めようか」


 そんな号令で、部活が始まる。あとはここで、自然な流れを作るだけ。なのだが、テーマパークのチケットに繋げる話など、俺にできるのだろうか。誰かに貰ったと言う設定にするため、どうしても唐突に切り出すことになる。誰か助け舟を……と思って郡山に視線を送るが、嘲笑うような表情で、こちらを見ているだけだ。


「そういえば、今日友達にこんなチケットを貰ったんですけど、よかったらみんなで行きませんか?」


 なので、もうここは自分から行くしかないと思い、意を決して話始めることにした。


「え?先輩友達いたんすか?」

「どこに驚いてんだお前は」


 流石に俺にも友達はいる。(みやび)を除いても一人くらいなら。先輩後輩の仲でも友達と呼んでいいのなら、氷堂(ひょうどう)先輩や郡山(こおりやま)も一応は友達になるので、俺の友達は約4人ということになる。

 ひらひらと、わざとらしくチケットをなびかせておく。


「へぇ、遊園地か。しばらく行っていないな」


 先輩にも事前に話は通してあるので、こんな感じで行く方向へと誘導してくれる。この空気で一人が断るなど、したくてもできないものだ。


「いいじゃん。楽しそう」


 と、雅が言ったことにより、テーマパークに行くか行かないか議論は全会一致で可決したのだった。


「じゃあ早速今週末にでも」


 このチケットは日付を定められていないので、向こう一年以内ならばいつでもいいのだが、遅く行く理由がないので、合理的に考えて早めに行くべきだろう。恋愛は早期決着が大前提だ。少なくとも、学生のうちは(そもそも恋愛をしていない俺が言えたことではないが)。


「一つ、提案があります」


 ここでビシッと腕を挙げたものがいた。郡山光なる人間である。


「せっかくなので先輩とデートがしたいです。なのでここは私と先輩、そちらのお二人の二グループに分けて行動するべきではないでしょうか」

「馬鹿は黙ってろ」


 いうまでもなく、これは雅と氷堂先輩を二人きりにさせるための方法を論じたわけではない。いつものノリで、俺を誘っただけだ。あくまで当日のドタキャンでこそ、これは意味を成す。そもそも初めから二人とわかっていたなら、応じてくれない可能性すら出てくるのだから。デートで失敗するならまだしも、そこで否定されて再び立ち上がれる男が果たしていくらほどいるのだろうか。


「でも、珍しいよね。秋都(あきと)夏花(なつか)たち以外と出かけようとするなんて」

「誘ったんだが、しばらく部活が忙しいらしくてな」


 夏に最後の大会があるらしい。春に結果を残せなかったから、そこで……という考えのようだ。なので、しばらく帰りは遅くなると言われた。今日だって朝練があるのに、部活が終わった後も励むつもりでいた。心配ではあるが、妹の気持ちを精一杯尊重してやりたい。なので、俺は黙って見守ることにした。

 しかし、そもそも誘っていないので後で口裏を合わせておかなければならない。嘘も方便なのだ。


「じゃあ、日曜の9時に現地集合でいいかな?」


 高校生ともなると、みんな住んでいるところがバラバラなのでどこかに出かける時は現地集合になることが多い。しかし、電車の中でもアピールしておくことは大事なのではないだろうか。


「住んでる場所もそこまで離れていないし、どこかの駅に集合した方がいいんじゃないですか」


 乗り換えの時に使う電車は同じのはずだ。あのテーマーパークの最寄駅は、一つの線しか走っていないのだから。


「なら、○○駅に一回集まろうか」

「りょーかいです!」


 こんな感じで、話がトントン拍子で進んでいく。かなり望ましい展開だ。

 さて、俺の役目は終わったも同然だし、帰宅時間になるまで本でも読もうかな。

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