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君を忘れない  作者: R
1/3

一話

 よく考える時がある。自分は他人に対して必要とされているのか否か。必要とされたいなんてそんなご大層なこと考えてるわけじゃないが、もし誰からも必要とされてないならこうして息を吸って吐いて生きていることに何か意味があるのか。

 放課後、オレンジ空を窓から眺めるこの時間が俺はかなり好きだ。静かな教室は電気も消してあって注がれる太陽の光だけがこの空間を照らしている。黒板にはハートやら星やらが描かれていて端っこに今日の日付と日直の名前が書かれていた。日直は葉暮、俺の苗字だ。俺の次はハ行から飛んでマ行の「丸山」に変わる。そうなると、なんとなく出席番号順に並べばだいぶ後ろの方にいそうな気がするが実際は真ん中の少し後ろあたりに並んでいる。このクラスはマ行からがかなり多い。巻島ときて次に丸山、宮部……と続いている。


 「忘れものーっと、あ」


 閉まりかけのドアがガラガラと開いて廊下から女子が入ってきた。この子と接点は何も無いが名前はたしか藤宮だったと思う。俺を見て止まってるみたいだが何か悪い事をしたわけでもないのでとりあえず気にしないようにする。


 「葉暮くんまだいたんだねー」


 それが最初の挨拶だった。俺は頷いて答える。


 「机の中に携帯入れっぱなしなの忘れちゃってて、門まで歩いたのに戻ってきちゃった。」


 どうでもいいようなこの話のかけ方。この子は日頃からいつもこんな感じだ。それが悪いわけではないがこちらからすればなんと返したらいいのか困る。とりあえず「そりゃあ大変だな」なんて返してみる。


 「なんだか恥ずかしいよね、この時間に教室に戻るのって」


 窓から門を見るとまだ生徒の波が続いていた。たしかに、この時間にあの場所で一人だけで逆方向に進むのはさすがに恥ずかしいだろうな。それを経験したしたことはないが想像だけでもなんとなく気持ちは察することができた。俺はもう一度頷く。


 「葉暮くんっていつも何で帰ってるの?」


 話題が急に180度回転したみたいに変わったな。と思いながら「A路線の電車」と答える。


 「ほんと!? 私もその路線なの! 奇遇だね!」


 「そうだな、ところで門の前でお前の友達が待ってるみたいだけど行かなくていいのか?」


 「あ、そうだった! ごめん、また明日ね! バイバイ!」


 話す気力が無くなってきたので適当に嘘をついたがまさか本当に待たせていたとは。我ながら上手に引けたな。

 教室でいつも誰かと喋ってはいるが今日初めて話しかけた俺にでも同じように来られるとこっちからするとかなりこたえる。まあ、こんな風に自分から遠ざけてるから交友関係も広くないんだろうが、どうもあの最初の掛け合いが俺は苦手だ。人間の第一印象というのはかなり重要らしく、その後の関係性も決めるぐらい左右するらしいが俺の場合第一印象でほぼ全ての人間にこの人とは深く関わらずにいようなんて思われてるんだろうな。

 耳に微かに残るあの子の声があるまま、俺はかけてあったカバンを手にとって教室を出た。

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