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第5話:ゴブリンキャンプ

 底上げした俊敏性に任せて猛ダッシュで走ること三十分。半分くらいの距離を進むことができた。……正直、かなり無理をしている。ステータスで移動速度を底上げできたとはいえ、たった30だ。俺は息を切らして、へたりこんだ。


 少し休憩して体力が回復したら、すぐにまた走ろう。

 俺はバッグの中から水筒を取り出し、水を飲んだ。


「……あれはゴブリンか?」


 少し落ち着くと、茂みの奥に数体のゴブリンの姿を確認できた。まだ小さな子供のゴブリンが、戯れている。この森ではゴブリンの姿を見ることは珍しくない。


 でも、子供のゴブリンが数体いるというのは、ちょっと特殊なケースだ。

 この近くに『ゴブリンキャンプ』があるかもしれない。


 ゴブリンキャンプ……つまりゴブリンの巣というわけだが、そこには何百というゴブリンが集って、子供を育てている。大人になったゴブリンはこのゴブリンキャンプを作り始める習性がある。


 巣立つ前の成人ゴブリンも混じっているので、発見した場合は速やかに退避して集団で潰すのが決まりになっている。


 だが、俺はチャンスだと思った。


「100ポイント……いや、50ポイントあればリーン村にはすぐに戻れる」


 俺には、ゴブリンがステータスポイントにしか見えなくなっていた。

 一刻も早く村へと戻らなければならないという状況ではあるが、ゴブリン共を殲滅した方が結果的には速いかもしれない。


 それに、攻撃力にもまだ不安がある。村は危機に瀕した理由すらもわからない。……力は必要だ!


 そうと決まれば、やることは一つしかない。


「うおおおおおおおおお!」


 俺は戯れていた子供ゴブリン四匹を瞬殺する。


【ステータスポイント4を獲得しました】

【ステータスポイント4を俊敏性に割り振ります】


 すぐにポイントを割り振り、茂みの奥へと進んでいく。

 ゴブリンキャンプはすぐに見つかった。木の陰に隠れてわかりにくい入り口ではあるが、まず間違いない。崖に小さな穴が開いていて、その中は洞窟になっている。


 棍棒で叩いて穴を広げてから、中に侵入した。

 バッグの中に入れていた洞窟用のランプを取り出して、辺りを照らす。通路はそれなりに広く、戦闘になっても十分に戦えることが分かった。


 この規模のゴブリンキャンプなら大体二百体のゴブリンがいるはずだ。


「ふっ……200ポイントか。美味いな」


 俺は不敵な笑みを浮かべて、奥へ奥へと進んでいく。


 二匹のゴブリンが俺に気づいて、殴りかかってくる。今日は散々ゴブリンと戦ったせいで、こいつらがどういう動きをするのかがわかってきた。


 軽やかな身のこなしで攻撃を避けて、鉄の棍棒で殴打する。すかさず【盗賊】スキルでステータスポイントを掠め取り、2ポイントを俊敏性に割り振った。


 その後も飛び出してくるゴブリンを返り討ちにすること約五分。この洞窟の最奥である大広間が見えてきた。ここに最も多くのゴブリンが集まり、守りを固めている。……情報通りだ。


 気づかれないように大広間を観察する。ざっと100匹かそこらといった数だ。俺がここに来るまでに倒したゴブリンが60匹。ここは少し規模が小さいキャンプだったのか?

 ……いや、次の村へ向かう途中に外のゴブリンをかなり倒したから、数が減っているだけなのかもしれない。


 子供ゴブリンが30匹。大人ゴブリンが70匹くらいだ。……これならいける。

 今現在のステータスはこんな感じだ。


――――――――――――――――――――

名前:アレル・ウォルティーゼ

レベル:9

ステータスポイント(SP):0


ステータス

攻撃力:107+20

防御力:52+0

魔法攻撃力:30+0

魔法抵抗力:20+0

俊敏性:59+80


保有スキル

盗賊Lv1

鍛冶Lv1

――――――――――――――――――――


 とはいえ、念には念を入れて……。

 俺はバッグから閃光石を取り出した。見た目はその辺に落ちてそうなものに見えるが、便利な代物だ。この石は地面に落とした瞬間、ホワイトアウトするほどの光を放つ。目を閉じるか、専用の眼鏡を掛けていないとしばらく目を開けられなくなる。


 洞窟はただでさえ暗い場所だ。

 閃光石の威力は強烈なはずである。


 俺は用意していた専用の眼鏡を掛ける。サングラスと同様に、少し視界が暗くなる。

 大広間に閃光石を投げた。地面に落下し、強烈な光を放つ。


 そのタイミングで俺は駆け出した。

 一匹、二匹……三匹!


 ホワイトアウトの間に、三匹のゴブリンを倒した。

 予定通り、ゴブリン共には目潰しが聞いていて、目が見えていない。


 その隙にどんどんゴブリンを葬っていく――。


 目潰しが回復するころには、残り十体まで数を減らしていた。


「ゴブリンキャンプ、楽勝だな」


 俺は鉄の棍棒を強く握り直し、残ったゴブリンを全て殺した。

 最後に、忘れず【盗賊】スキルを使っておく。


【ステータスポイント109を獲得しました】

【ステータスポイント109を攻撃力に割り振ります】


――――――――――――――――――――

名前:アレル・ウォルティーゼ

レベル:9

ステータスポイント(SP):0


ステータス

攻撃力:107+129

防御力:52+0

魔法攻撃力:30+0

魔法抵抗力:20+0

俊敏性:59+80


保有スキル

盗賊Lv1

鍛冶Lv1

――――――――――――――――――――


 俺の唯一の長所だった物理攻撃力。これが二倍以上強くなったのはとてつもなく大きい。【鍛冶】スキルで手に入れた鉄の棍棒も、厄介なゴブリンを一撃で倒せる力がある。


 努力を重ねればさらなる高みに上ることもできる。

 ――このスキル、なかなかいいじゃないか。


 外れスキルだと思って絶望していた俺だが、いつの間にか俺は自分のスキルを好きになっていた。

 俺は拳を握りしめる。


 いける。リーン村を、俺の故郷を救ってやる!

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