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第3話:盗賊スキル

 村を出てからは次の村へ向かうため、森の中に入った。この森には魔物が生息している。奥へ行けば行くほど魔物と遭遇する可能性が高くなる。


 村に物資を運んでくる商人は、必ず冒険者を雇って護衛させているらしい。


 村の近くにやってきた魔物とは戦ったことがあるが、スキルが無かった時でも対処することはできた。人の住む村に近づいてくるのは下級の魔物だから対処は簡単だが、森の中にはもっと高位の魔物が潜んでいるかもしれない。


 常に周りへの注意を怠らない。


「……ゴブリンか」


 少し先の場所にゴブリンが一匹だけいることがわかった。

 緑色の見た目で、小柄なタイプの魔物だ。大して強くはないのだが、戦えない村人にとっては脅威になりうる。


 下級の魔物なので、さっさと倒して先に進めばいいのだが……ちょっと試しておきたいことがある。


 新しく覚えたスキルだ。


 【鍛治】は名前からして明らかに職人用の生産スキルだから、試すのなら【盗賊】か。


 このスキルは無詠唱での使用が可能なので、直前になってから使うことにする。


 俺は油断しているゴブリンにゆっくりと近づいていき、攻撃のタイミングを図る。


 ゴブリンが後ろを向いた瞬間に、飛び出した。

 後ろから頭部をぶんなぐる。隙をついた攻撃のおかげで、かなりのダメージを与えることができた。


 ゴブリンがこちらを振り返り、俺を睨む。

 棍棒を両手に持って、襲い掛かってきた。


「さて、ここからが本番だな」


 【盗賊】スキルを使う。その刹那、俺の右手が白い光に包まれ、ずっしりとした重さを感じた。


「キイイイイィィィィ!」


 棍棒を振るうかと思った瞬間、突如として棍棒は姿を消し、攻撃が空振りに終わる。


 そう、ゴブリンの棍棒は俺の手に渡ったのだ。


「キイイイイィィィィ!?」


 混乱したゴブリンは一歩後ろに退いた。目を動かして、手元から消えた棍棒の位置を探っている。


「お前が探してるのは、もしかしてこれか?」


 俺はゴブリンから奪った棍棒を見せてやる。すると緑色の顔が青くなった。


「キ、キイイィィ……」


 さらに後ろに下がり、逃げようとしているのが伝わってくる。恨みを買ったゴブリンを逃すと、村を襲われる可能性がある。……それだけは避けたい。


 俺は棍棒を右手で持ち、ジリジリと距離を詰めていく。


「キイィィ……キィッ!」


 ゴブリンが背中を向けて駆け出した。――この時を待っていた。


 逃げようとするゴブリンに走って追いつき、頭部に棍棒を当ててかち割る。


「キィィ……キィ……」


「ふぅ」


 即死だったようで、ゴブリンは動かなくなる。

 これで大体【盗賊】スキルというものがわかった。使い方を工夫しさえすれば、格上の敵が相手でも戦えるのかもしれない。


 とはいえ超火力の魔法スキルなどと比べると見劣りしてしまうのも確かだ。冒険者として下級から中級レベルの魔物専門のハンターになるのが、現実的だと感じた。


 【鍛治】スキルもあるから、稼ぎには困らなそうだ。家に仕送りできるくらい稼ぐのが目標ってところかな。


「しかし魔物か……」


 ゴブリンの死体を見て、ふと思ったことがある。

 ……死体に【盗賊】スキルを使うとどうなるんだろう?


 字面がハイエナみたいにも見えるのだが、実際のところ死体にスキルなんて使えるのか?

 例えば火魔法のスキルで死体を燃やすことができる。ゲーム的な感覚なら『対象が正しくありません』的な文言のエラーが出そうなものだが、ここは異世界。現実なのだ。


 やってみても何か損するわけでもないだろうし、ちょっとやってみようか。


 俺はゴブリンに向かって再度【盗賊】スキルを使用する。

 ゴブリンの死体から光の粒子が飛び出し、俺の中に入ってくる。

 嫌な感じはしない。

 ……なんだこれ?


 光の粒子を全て吸収した時、目の前に変な文字が現れた。

 まるでゲームのステータス画面のように見える。


――――――――――――――――――――

名前:アレル・ウォルティーゼ

レベル:9

ステータスポイント(SP):1


ステータス

攻撃力:107+0

防御力:52+0

魔法攻撃力:30+0

魔法抵抗力:20+0

俊敏性:59+0


保有スキル

盗賊Lv1

鍛冶Lv1

――――――――――――――――――――


 さらにポップアップウィンドウが表示される。

 ゲームで言うログのような感じだった。


【ステータスポイント1を獲得しました。いずれかのステータスを強化することができます】


 ……と言われてもどうやって割り振ればいいんだ?

 攻撃力を強くしたい! ……って、馬鹿か俺は。何を本気にしているんだ。そんな都合の良いことがあるわけ……。


【ステータスポイント1を攻撃力に割り振ります】


――――――――――――――――――――

名前:アレル・ウォルティーゼ

レベル:9

ステータスポイント(SP):0


ステータス

攻撃力:107+1

防御力:52+0

魔法攻撃力:30+0

魔法抵抗力:20+0

俊敏性:59+0


保有スキル

盗賊Lv1

鍛冶Lv1

――――――――――――――――――――


 ウィンドウの表示が更新されて、さっきの攻撃力+0の部分が+1になっていた。

 ……盗賊スキルってこういうものなの?

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