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逆立ち

明日、体育の授業で逆立ちのテストがある。


ぼくは逆立ちができない。ならば、練習あるのみだ。クラスのみんなの前で、逆立ちを失敗する無様な姿を見せてたまるものか!


家に帰ってすぐに、ぼくは部屋の床を片づけて、そこで逆立ちの練習を始めた。本当なら、校にいるときに、体育館や校庭のような広い場所で練習したほうがいいのかもだけど。でも、逆立ちを失敗する姿は「見せてたまるものか!」なので、どうしても人のいないところで、一人きりで練習がしたかった。



えいやっ。どてん。とりゃっ。ばたん。……




そうして、練習を始めてから、何十分たった頃か。


数えきれない失敗の末に、とうとうその瞬間が訪れた。


で……できた! 生まれて初めての、逆立ち成功だ!




――ところがである。

 


そのとき、思いもよらないことが起こった。



体を支えていた手が、不意に軽くなって、その手のひらが床からはがれた。


かと思った直後。ぼくは、足からどすんと、天井に着地したのだ。


「え? ……ええっ?」


なんだなんだ。いったい、何が起こったんだ。


混乱しつつ周りを見回す。そこは、間違いなく自分の部屋だった。見慣れた机。見慣れたベッド。見慣れたカーテン。――ただし、それらはすべて、上下さかさまになっていた。


いやいや、そうじゃない。さかさまになってしまったのは、こうして天井に立って床を見上げている、ぼくのほうなのだ。なんてことだ。どうしよう。これは困ったぞ……。




けれども、解決策は簡単だった。


つまりは、天井に手のひらを突いて、もう一回逆立ちをすればいい。ただそれだけのことだった。もっとも、もう一回逆立ちを成功させるのには、けっこう時間がかかってしまったけど……。




生まれて二回目の逆立ちを成功させて、ぼくは、どすんと床に着地した。


さかさまのさかさまで、やれやれ、これでもとどおりだ。




――ああ、よかった。


何がよかったか、って。そりゃあ、逆立ちを練習した場所が、ぼくの部屋だったってことだ。


もしも、ぼくの部屋よりずっと天井が高い体育館なんかで、逆立ちが成功してしまっていたら。



いや、それより。

もしも、天井のない校庭で逆立ちの練習をしていたら、と考えると……。




【終】

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