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さがしています。

 電柱に、おかしな貼り紙がしてあった。


「さがしています。」という、その一言と共に、キツネの写真が印刷された貼り紙。


 それだけならば、ただの迷い動物の捜索ポスターだ。探している動物が、犬や猫ではなく、キツネというのは珍しいけれど。でも、それのどこが「おかしな貼り紙」だったかというと。


 その写真のキツネは、生きている本物のキツネではなかったのだ。


 それは、真っ黒な、影絵のキツネだった。


 人差し指と小指を立てて、残り三本の指をくっ付けて作る、手遊びの影絵。向きからして、これは右手の影だろう。白い壁の中に浮かぶその影は、指の節や、皺や、爪の形まで、余さずくっきりと写し取っていた。


 同じ貼り紙は、その先も、数十メートルに一枚の間隔で貼られていた。


 それを横目に、しばらく歩いていくと。


 何やら、電柱の前で、立ち止まっている人がいた。


 どうやら、その人が、貼り紙の主のようだった。


 その人は、影絵のキツネが印刷された「さがしています。」の紙を広げると、その紙の裏にスプレー糊を噴き付けて、それをぺたりと電柱に貼り付けた。


 ぺたり、ぺたり。


 その人は、両手を使って、貼り紙の全体をまんべんなく、しっかりと押さえ付ける。


 やがて、紙を貼り終えたその人は、電柱を離れて歩き出した。


 逆光に眩むその後ろ姿を、少し眺めたあと。


 何気なく、地面に目を落として、それに気づく。


 その人の影には、右手の手首から先がなかった。



【終】

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