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そこに色々な理屈や事情はあれど、世界は大体相対し連関する二つのものに分けられる。
それは、たとえば生と死であったり、男と女であったり、要はアントニムだとかシノニムだとかそういうもののことだ。
だからその二つは白と黒かもしれないし赤と黒かもしれない。その辺りは哲学者や政治家のための些細な問題なので放っておいて良い。
それと同じような考え方でこの世界の森羅万象の事物一切を猫と犬に分別しなければならないとしたら、一体どのように物事を分けられるのだろう。
恐らくキッチンは猫で、書斎は犬だ。
音楽は猫、法律は犬。
旅人は猫、街道は犬。
ショートケーキならば、スポンジが犬でその上に乗ったささやかな楽しみは猫だろう。
人が猫に抱くイメージはどれも軽やかで涼やかだ。自由に満ちていると同時に空虚で脆い。それに対して犬は皿に乗った一枚の厚いステーキ肉のように頑固な概念である。頭上からなだらかに降下してくる特別なソースを待ってひたすら空を見上げ、そこで自分を跨ぐように跳ねる猫を発見し、眩しそうに目を細めたり、恐ろしげに身を縮めたりする。
そう、まさに冬の朝に太陽を見る時のように。
そういった意味で、君と僕を分けるならば、君は明らかに猫だったし、僕は紛れもなく犬だった。