パパ頑張っちゃうからね!!
久しぶりの新作短編小説です。
それは、まさに我が家に置ける………いえ、この国に置ける、前代未聞の大事件の始まりだったのです。
◇◇◇◇◇
ゴッホン。私の名は、エルバルト・アイン・ザーベック侯爵と申します。この物語は、私の可愛い、マジで可愛い、目に入れても痛く無い位可愛い、もう一つオマケに可愛い、娘のティアナについてのお話です。
ティアナは、4番目の子で、唯一の女の子。3番目の末兄とは5歳も歳が離れていました。更に念願の女の子。パパだけでなく、家族揃って溺愛しましたよ! 可愛がっても甘やかしはしませんでしたがね!
「ティアナの為に、立派な跡取りになる!」
とは、長男の言葉。実際、立派な跡取りに成長してくれました。
「僕は、ティアナの為に、頭が良くて仕事が出来る、立派な貴族になる!」
とは、次男の言葉です。実際、書類作成のプロになり、内務省で欠かせない人材になっています。腹黒いのは、ご愛嬌でしょう。
「ぼく、ティアナを守る、立派な騎士になる!」
三男は、今では近衛兵として、王宮勤めです。
うん! パパは誇らしいぞ!
……………でもですね? 貴族だから、本当は嫌だったんですが、ティアナには婚約して貰っていたんです。
嫌だったんですよ!? 大切な娘に、バカがくっつくのは!! 無理矢理頼まれて、仕方なくですからね!?その娘の結婚の日程が、そろそろ決まる、そんな時に……………。
そのバカが、ついに、とうとう、あろう事か、うちの娘、以外に! 女を作りやがったんだよぉぉぉーーーー!! 更に、女には子供が出来ただと………………?
それも相手は、うちより下の子爵家のバカ娘だとっ!? 侯爵家を敵に回すとは、野郎共? 覚悟は出来てるんだよなぁ?? あ゛ぁ!?
ごっほん、さて、そんな情報がもたらされたのは、ビックリな事に、ティアナ自身からでした。そして、緊急事態であるが故に、緊急家族会議が開催されている訳です。
「あなた………? 女性側は、任せて頂けるかしら?」
とても素敵な笑顔で言い切ったのは、我が妻、現国王陛下末妹のシャルロット。完全に女性陣の頂点にいる彼女を敵にして、無事で居られる訳がありませんね。
目が笑ってないしなー・・・。
「はい、愛しのシャルにお願い致します」
私も、妻には弱いのですよ? シャルならば、悪いようにはしないでしょうしね。
「ならば、父上………私もコネを少々使っても?」
ニッコリと、長男は私譲りの黒満載の笑顔です。あぁ、この子はティアナを溺愛してますからね。間違いなく、少々どころか、敵の息の根を止める程に、ガチでやるでしょうね…………。
「あー、程々にな?」
それ以外、私も言えません。我が子ながら、末恐ろしい子です。
「父上、私も色々とコネがあります、是非とも協力させて下さい、必ずや、結果を出して見せましょう」
いやいや、発表会じゃないんですからね!? 次男はうちで、一番怒らせたらヤバイのに…………。あの元婚約者、何をやってんですか?!
「あのさ? 皆そろって落ち着かない? んな事しなくても、間違いなく奴は落ちるぜ?」
最後に口を開いた三男に、一同が固まりました。
あー…………、我々は頭に来過ぎて、それを忘れていました……………。我々が動かなくても、問題無かったという事実に。
「嫌だわ、わたくしったら、頭に血が上り過ぎですわね……………ティアナに着いていますわ」
一番ショックを受けたのは、ティアナであるのに、我々が先走るなんて、冷静にならねば成らぬのに………………。
「父上、取り敢えず事実確認しませんか?」
ティアナが話した情報は、浮気した事と、相手の令嬢に子供が出来た事のみ。
「確かに情報が少ない、もう少し確認しよう」
今日は取り敢えず、夜も遅いので休む事にしました……………。パパ、頑張っちゃうからね! ティアナ☆
元 凶 ど も 、 首 を 洗 っ て 待 っ て い や が れ ! !
◇◇◇◇◇
翌日、朝からまたしても緊急家族会議中です。ティアナは部屋で休んでいます。かなりショックな様子です。
さて、うちの密偵は、いい仕事しましたよ・・・?
「まさか、伯爵家側から破棄しようとは……………」
呆れて物も言えません。格下が出来る訳ないでしょうに。だが、子爵令嬢に子供が出来た以上、破棄はするでしょうねぇ。
「父上、朝から怖いです」
三男、いち早く気配を察知しましたか。
「随分と、我が、侯爵家は、バカに、された、もんだなぁ〜?」
私の言葉に、家族一同、賛同しかありませんでしたよ。私の言葉の力の入りように、皆も良い笑顔です。時々、口調が悪くなるのは、ご愛嬌でしょう。愛娘の一大事なんですから。
「あなた、確か子爵て、上昇思考の高い方でしたわね?」
そういえば、妻にも散々迫っていましたね? 更に、娘にも縁談を持ってきてましたねぇ。即刻で断りましたが。
「それを根に持ったのではなくて?」
………………あり得えます。ほー、うちに喧嘩を売ると。よろしい、買ってやりましょう、この喧嘩!
「あ、そういえば…………」
不意に、次男が爆弾を落としました。えぇ、間違いなく爆弾です。
「嫡男はティアナを諦めていませんでしたね」
………………何か? ティアナが婚約破棄されたら、自分が後釜になろうってか?
私の機嫌が零度を越しかけた時、タイミング良く密偵が出現。
「ご報告が」
その報告はまさに、今、話していた内容を裏付けるもので。
「ほお、我が家に喧嘩を売るとは…………覚悟があると見える」
家族一同が笑顔です。でも、目が笑っていません。子爵家、詰んだな。ティアナ、パパ、頑張っちゃうからね!!
◇◇◇◇◇
次の日、伯爵と夫人が、我が家に来ました。二人共、揃って真っ青な顔なのが、事態を理解している事を物語っています。
「「この度は、息子が大変失礼を! 本当に申し訳ありません!!」」
土下座に近い、最上位の謝罪。まあ、二人は昨日知ったばかりでしょう。すぐに行動された時点で、そこの評価はかなり上。
「恥を偲んで、謝罪に参りました、本当に、本当に、うちのバカ息子が申し訳ありません!」
ふむ、悪いと思っていらっしゃるようですし、彼らには軽い罰にしましょう。本命は別に居ますし。
「ティアナはね、可哀想に…………今は部屋から出てきません、余程ショックだったのでしょう――――――裏切られた事が」
最後の言葉に、夫人が堪えていた涙を見せました。
「本当に…………ごめんなさい、侯爵様」
そのまま泣き崩れた夫人に、伯爵が寄り添います。
「うちからは、そうですね、後程、交渉いたしましょう」
これくらいの優しさは、見せてあげましょう。うちの顔に泥を塗った訳ですし、何より可愛い、それは可愛い…以下略………なティアナを泣かせた訳ですから、しっかり罰しますけどね。
「では、後程」
勿論、後程行った話し合いは、かなり、かな〜り有利な交渉をしました。我が家を怒らせておいて、これだけで済ませるんですから、優しいでしょう? 伯爵には、私からお願いも聞いて頂きましたし。
「さて、子爵にはどんな罰がお似合いでしょうね?」
そんな私を、震えて見ている伯爵に、私はただ、ニッコリ笑ったのでした。
◇◇◇◇◇
子爵家への罰は、次の王宮のパーティーで行う事が決定した。どこからか(多分、妻)情報が漏れ、陛下にばれました。あー、陛下は姪のティアナを可愛がっていましたからね……………。子爵、小物なのに、敵が増えていきます。自業自得ですが。
「陛下、いくらなんでも小物相手ならば、私が………」
「そうもいかん、子爵家には帝国との噂があってな」
なぬ!? 話が大事になっていくんですが……………。あー、マジでうちが手出しをしなくてもいいんじゃないでしょうか? きっちりシメるけれどもな!
「えー、陛下? 実は………ゴニョゴニョ」
「ん? 構わんぞ? それぐらいなら、まーったく構わん」
陛下とは、幼なじみですからね。私の考え方に、あっさり賛同。冷や汗をかいているのは、見ないであげますよ。
「では、宜しくお願いします、陛下」
うちの娘を悲しませた輩は、しっかりとシメなければ。ティアナ、パパ、頑張っちゃうからね!!
◇◇◇◇◇
パーティーでは、我等家族は三男以外は全員出席。三男は仕事で会場に出席です。陛下が入場し、面白い話を始めます。
「この場を借りて、新たな貴族の仲間入りを祝おうぞ? 伯爵、そなたからの願いを受けよう」
おや、伯爵は覚悟を決めましたか。―――――息子を切り捨てる覚悟を。
「ありがたき幸せ………」
そう、これが罠の始まり。
「伯爵の長男に、伯爵が持つ男爵位を与える、伯爵家とは縁が切れるが問題なかろう、男爵の妻には………あぁ、子爵の令嬢は既に子を身籠っていたな? 二人で仲良く暮らすがよい」
陛下の言葉に、会場が騒めく。令嬢は真っ青になっています。当然です、陛下の言葉は表向き祝福ですが、裏を返せば皮肉なのですから。会場の騒めきは、結婚前の令嬢が身籠っている事、更に本来の婚約者を寝取った事等への、嫌悪感を表しているのですから。まともな精神をしていたら、耐えられないでしょう。
「本来の婚約者たるティアナには、悪い事をした…………余が結んだ縁談だが、このような事になろうとは……………そなたには最高の相手を探すと、余が約束しよう」
更に続いた言葉に、会場にいた新たな男爵と令嬢、更に子爵は顔色が悪いです。陛下が嫌悪感を顕にしたのですから。これからの社交は日陰の身となるでしょう。
こうして、本日のパーティーは幕を閉じました。
◇◇◇◇◇
「父上! 私が男爵とは、一体どういう事ですか!? 私は伯爵家の嫡男ですよ!?」
会場裏の廊下で、見苦しく喚くのは、男爵です。近くには令嬢も居ました。
「陛下に願った通りだ、男爵位は餞別にくれてやる、我が伯爵家は次男に継がせるから安心しろ、お前とは縁を切る、二度と父上と呼ぶなっ!」
怒りそのままに、会場を後にした伯爵。男爵は呆然としたままです。うちと結んだ契約を白紙にしたのですから、当然でしょう。男爵に成れば、男爵領を与えられますが、今迄のような贅沢は出来ませんからね。
令嬢に至っては離縁も出来ません。陛下の言葉があるのですから。伯爵夫人のはずが下の男爵夫人になるなど、あのバカ令嬢には屈辱的でしょう。
そして子爵は、顔を真っ赤にして怒り狂っていました。当然です、今迄の苦労が泡になったのですから…………。
「伯爵側は終わったな、次は子爵だ」
まだ終わってないぞ? 計画の半分しか終わってないのですから。男爵と令嬢は、ざまぁとなったのですから。屈辱的な方法で。二度と出世出来ないのですから、いいざまです。
「三男、頼んだぞ?」
ニヤリと笑った私に、三男もニヤリと笑います。普段は真面目な三男ですが、キレたら手が付けられないのが彼です。上二人より、手が出る分、優しいかもしれません。精神的には無事なんですから…………。
「勿論、これからがメインだからね」
何、簡単な事です。
人が居る場所で、わざと子爵が犯罪者かもしれないと話すだけ、なんですから。三男は近衛騎士。噂に信憑性が出ます。
さあ、子爵? じわじわと追い詰めてやろう。
◇◇◇◇◇
それから、半年後――――。
男爵は令嬢と結婚し、男爵領へと向かいました。贅沢しなければ、暮らせるのですが、二人にはかなり屈辱だったようです。ヒステリックな喚き声がいつも聞こえるらしいですよ。
子爵は、じわじわした噂により、とうとう失脚し、領地で静養中だそうで、息子が地位を継ぎました。やり手の息子は、奔走しているようです。
さて、私の可愛いティアナは、陛下のお陰で公爵家嫡男と婚約しました。私も安心したよ。良い奴だったからな!!
これにて、お話はハッピーエンドで終わります。可愛いティアナには、ハッピーエンドが当然なのだ! パパ、これからも頑張っちゃうからね!
終わり
読了お疲れ様です。
作者の秋月煉と申します。初めまして〜、な方も、久しぶり〜、な方も、読んで頂きまして、本当にありがとうございます。
こちら、とある方が構想の根本にございます。やっぱり、娘はパパにとって特別なんだなぁって思います。
秋月、ハッピーエンドは大好きですが、パパ視点ってあんまり無いんですよね。楽しんで頂けましたら、幸いです!
次は娘さん視点をしたいなぁと思いますが、しばらくお時間下さいませ。
お読み下さり、ありがとうございましたm(__)m
感想、お待ちしております。なお、作者はメンタル弱いので、優しくお願いします(;^_^A