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05話 「たわわ」

「も、もう一個……欲しい、の」

「もう一個! もう一個ちょーだい!」


「僕ももう一個欲しいな~♪」


「だぁあああああっ! 飴は1日3個まで! お菓子はそんなに食べちゃいけませんっ!」


「む、むぅ~……けち」

「けちぃーっ!」


「ケチ! ケチニンゲーン!」


調子に乗って何度もおねだりしてくるロリっ子2人を跳ね除け、俺は親みたいな言葉を口にする。

ブーイングの中にデケぇ子供も混じってたよーな気もするが……まぁ、スルーで。


「えーっと……姫ちゃんさんも食べますかい?」


いくらか遠巻きに眺めている彼女へ俺は飴を向ける。


「え? あ、ありがとう」


学校のイベント事の時にもこう言う子居たなー。

輪に入りたいけど恥ずかしくてナカナカ混じれず、離れて眺めてるだけな子。


「いえいえどういたしまして―――」


はにかみながらも嬉しそうに飴を受け取る彼女は初々しく、俺は思わず笑みが零れる。

が、

屈んで飴を受け取る彼女の姿に違和感を覚え、いくらか視線を下ろせば無防備に大強調された北半球……。

艶やかさを見せる肌色と桜色2つの色彩は賢者街道まっしぐらな自分には刺激が強すぎで。

水浴びしてるとこに乱入してからそんままだし、そう言う事か、うん、素晴らしく、おっきな、たわわ。


「あ……あの、お姫ちゃんさん、その、えっと、つーか服、おっぱい」


「へ……?」


そしてオーバーヒートを起こした脳みそは言葉を紡ぐ事すらも出来ずに単語だけをボロボロと。

言葉と共に俺の視線を追って彼女はやっと単語の意味を理解したみたいだ。

伸ばした手でゆっくり胸を覆うと青い瞳は潤み、頬は音を立てて染まって行く。


「―――いやぁあああああああああああっ!?」


絶叫プリンセスによる本日2度目のハウリングボイスが俺の鼓膜をブチ抜いて脳を揺らす。

俺の意識は幻想的な肌色映像を最後にログアウトした。






---






「魔法は効かないけど姫ちゃんの叫び声は効くんだね。意外ー」


「し、仕方ないでしょ! 不可抗力なのよ不可抗力!」


アレフの一言に真っ赤になりながら彼女はそっぽを向く。

不本意とは言え、裸を見られた事や気絶させた事に様々な感情が入り混じり、恥ずかしさが顔から噴き出していた。

服をちゃんと着ているがまだ何か落ち度があるのではないかと言う不安もあり、彼女は落ち着きない様子でストールを弄る。


「アレフ。このニンゲンどうする、の?」

「ひどい事しないたげてー!」


「とは言っても姫ちゃんの……竜の生肌を見るって禁忌犯しちゃってるし。かと言って盟約もあるしなぁ~。どーするかなぁー僕には決め辛いなー」


彼は思いあぐねる風を装いながらチラリと見やる。


「……その、2人を助けて貰ったから良いんじゃないかしら。私たちじゃこの程度で止めるなんて到底出来なかったでしょう?」


彼女は大人しく眠るサトルの頭へ軽く触れながらそう答える。

それは昼寝をする仔犬を撫でる様な手付きで、そっと。


「確かにねーって2人とも何してるの?」


「……飴貰ったからの、お礼」

「幸せのクローバーだよ! さっきそこに生えてたの!」


「だからってそんなにいっぱい詰め込んじゃダメだよー。びっくりしちゃうからさー?」


「は、はーい」

「はぁーい!」



サトルのズボンのポッケへ雑草にしか見えない葉っぱをグイグイ突っ込むニーアとアミィ。

沢山突っ込んじゃダメと言う言葉に反して彼女たちは更に葉っぱを手に取り、容赦無くお代わりを突っ込んでいく。


アレフはそんな2人を苦笑しながら見やっては、まだ焦げ臭さが残る辺りへ視線を動かす。

ズメイによって森や湖畔の一部が焼き払われた。

しかしその被害は20m程度で5mを優に超える怪物が暴れた被害としては十分に少ない物と言えた。


「姫ちゃんがそう言うなら仰せのままにーって事で僕は何も無いかな。問題はその後の待遇をどうするかってトコかな」


「しょ、しょけー?」

「しょけいしちゃうの?」


「それじゃ結局一緒だから……。僕の案としてはテイズキに放置って考えなんだけど」


「確かにそれなら。流石に此処には置けないし、ニーレキかトワに連絡しておけば向こうで上手くやってくれるでしょう」


「じゃあそうしますかねー。間違ってもここでルシードに会わせる訳にもいかないし。―――ところで姫ちゃん」


「なに? アレフ」


唐突に疑問を振られ、彼女は何事かと小首を傾げる。

アレフは苦笑を浮かべながら彼女から更に下へ視線を下ろし……地面の上で仰向けに寝かされ、膝枕をされ撫でられているサトルを見つめる。

そんな素振りを前に言わんとした事に気付いた彼女はその手を止め、


「え? このニンゲン、界客そとびとだから白魔法も効かないし……」


「そうだけど、どうして膝枕しながらそんなに優しく撫でてるの……?」


「だ、だって貴方が前に

『男は膝枕されて撫でられると、どんなキズも痛みも立ち所に癒える』って言ってたじゃない?」


「た、確かに言ったけど……ぶっふ!」


「ちょ、ちょっと貴方! だ、騙したのね!?」


「騙しはしてな……アハハハハハハハハっ!!」



アレフの反応に大慌てしながら彼女は声を荒げる。

そして今まで自分がやってた事がたまらなく恥ずかしくなり、勢い良く膝からサトルを落す。

拗ねた彼女は「ああ、姫ちゃん何やってるんだよー」と言われてもそっぽを向いて目を合わせない。

今更ながら長々と膝枕をし、慈しみを込めた手で撫で続けていた自分がこれ以上恥ずかしくなってしまったのだ。

真っ赤に染まる耳を前にどれだけ恥ずかしがっているか察したアレフはそれ以上何も続けず、無言でサトルの身体を肩に担いだ。



「じゃ、行ってくるかな」


「……うん、お願い」


「ルシードには僕が説明するかな。2人とも後の事は大丈夫だから、姫ちゃんと一緒にお留守番しててね」


「は、はい」

「わかったー!」


元気良く答える2人を見やると彼は自分に魔法をかけ、


「あと、も一度確認だけど……姫ちゃんもこれで良いんだよね?」


「個人で仲良く出来てもニンゲンはニンゲンだから。……仕方ないわ」


「―――わかった」


そう返答を受けて納得した様子で頷いた。

そしてアレフはサトルを担いだまま地面を蹴るとそのまま綿毛の様に宙を浮く。


「ニンゲン、ま、またね……」

「ニンゲンまったねー!!」


宙に浮いた2人は強風を受けた木の葉の様に舞い、梅雨に飛ぶ燕の如くその場を飛び去った。

彼女はいくらか名残惜しそうな表情でその姿を見送り、小さく吐息を漏らすと顔を横に振る。


「さて、と。じゃあみんなでルシードが戻る前に元通りにしなきゃね」


2人へおもむろに笑顔を見せると彼女は荒れた森へ視線を向け、ゆっくり立ち上がった。






---






「ニーレキさんニーレキさん。意識が戻ったかも、ですです!」


「おお? やっこさん御目覚めかい」


ぼやけた視界の中で動く肌色……。

自分は聞き覚えの無い声で混濁の淵から目を覚ます。


あれ、俺って確かロリに追っかけられたりドラゴンから逃げ回ったりする変な夢見てたんだっけ。

あとは姫ちゃんとか言う可愛い子のおっぱい見ちゃったりとか。

流石夢だよな。

あんな2次元から来ましたーみたいな美少女の裸をゼロ距離で見れるんですもの。

出来ればこのまま二度寝して夢の続きを――――――



「ニーレキさん、この人すっごーい気持ちわるーい笑顔してるんですけど……ヨダレも凄い、です」


「んー? ああ、男ってのはロクでもねぇ夢見てる時はこんな顔するもんだ」


やっかましいわ。大人しく寝させろ!

ホラ見ろ。

姫ちゃんが恥じらい赤らみながら、たわわでおっきな実りを寄せて上げて待ってるじゃないか。

はい、今すぐそっちに行きます行きます!


俺は微睡みの深くへ誘われるように彼女の実りへダイブ―――


「トワ、よく見とけ。こう言う時はなこうするんだ……ふんっ!!」


しようとしたが、おっさんの声と共に襲う激痛でたわわダイビングに失敗する。



「いっでぇええええええええっ!?」


「……あ、起きた!」


「おう、やっと起きたか?」


痛みに目を開き、女神と無理矢理さよならさせられた俺は怒りを噛み締めながら顔を上げ、そのまま固まった。

鮮明になった俺の視界に飛び込んできたのは……でかいハートのアップリケを付けたエプロン姿のヒゲだらけのおっさんの顔があった。


「ぎゃぁああああああああああああああああああっ!?」


俺の保存フォルダのたわわ映像は濃いおっさんの顔に上書き保存され、気付けばズメイと対峙した時よりもでかい声を上げていた……。

ステータス

 

 名前 :加苅暁カガリサトル

 種族 :人間

 状態 :麻痺

 称号 :【コンビニ店員】

     【界客そとびと】 

     【何も作り出せない者ノンクレイマー】 

 魔法 :???

 スキル:【何も作り出せない者ノンクレイマー】 

 耐性 :魔法無効化 

     魔術無効化 

 特性 :超回復力

    


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