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02話 「極悪スキル」

「きゃあああああああああああああああ!?」


 お年頃の女の子が裸を見られりゃそら叫びもしますわ。

 キャー変態! と言われなかっただけマシ。


 しかし、だ。

 女の子の叫び声ってこんなに破壊力やばかったっけ……?

 胸やらを隠して叫ぶ少女の映像を前に俺の意識は揺さぶられ、視界が歪む。


「ナ、ナナミおねーちゃん!」

「ナナミおねえちゃん!!」


 この声はツインロリ……。

 ハウリングボイスで痺れた頭を振って後ろを向けばスゲー剣幕の少女の影が2つ。

 ヤバいと思って身構えれば、2人はボロボロと悔し涙を浮かべながら俺を睨んでくる。


「ニ、ニンゲン入れちゃった……ルシードとのお約束破っちゃった……ふっ、ぐすっ……」

「う、うぇええええええええ!!」


 襲ってくるかと思ったらその場で大声を上げて泣きじゃくる。

 いくらか覚悟していただけに俺は逃げる事も忘れ、呆然と2人を眺める。


「2人とも落ち着いて! 私は大丈夫だから、何とも無いから!」


 青髪の少女はすげー慌て具合で2人になだめの言葉をかける。

 しかしそんな言葉で泣き止まず、むしろ泣き声がでかくなった。

 あー……こう言う場合は頭を撫でたりして安心させねーとダメなんじゃないっけ?

 特に大きな声はNGだった気がするぞ。

 あとは甘い物、飴玉の一つでもありゃそれで落ち着いたりするんだよな。


「うわ! ちょっとナニコレどう言う状況なの姫ちゃん!!」


 男の声にこれはマズイと焦る、が上手く動けない俺に何か出来る筈も無く。

 声の主は姫ちゃんの元へ足早に駆け寄り、俺を一瞥する。

 そいつは纏めた髪を銀色に輝かせながら揺らし、視線を向ける瞳は目が覚めるような真紅を見せる。

 俺は現実離れした造型のそいつを前に見とれてしまう。

 モデル顔負けの整った顔に女と勘違いしそうになったが、声からして明らかに男だと我に返る。


「……ニンゲンがどうしてここに!? 結界どうやって抜けて来たの!? って、ニーアもアミィ落ち着きなって!」


「ア、アレフぅう。お、お約束破っちゃったの。

ルシードとお約束したのに、ま、守れなかったぁああ」

「どうしよう、どうしよう……ふぇえええええええ!!」


「うわわわわわ。2人とも落ち着いて! それ以上、共鳴振動させたら―――」


 イケメンが慌てたと同時にロリを中心に炸裂音が走った。

 そして紫色の霧が辺りを多い、泣き声に呼応するようそれは色濃くなる。

 木々はざわめき、辺りの小鳥たちが奇声を上げて一気に逃げ出す。


 ……ヤバイんじゃねコレ?

 状況が把握出来ない俺ですら肌が泡立ち始め、全身がアラートを鳴らす。


「ニーア、アミィ!」


「―――ダメだ姫ちゃん!!」


 駆け寄る少女をイケメンは咄嗟に抱き留め、空中へ跳ぶ。

 一体何が起こってんの? と顔を動かした先には黒霧が濃霧の様に広がり、その中で何かが蠢く。


「くそ、暴走召喚……っ」


 厨二センスな言葉が聞こえる中、晴れた霧の先で金色が輝く。

 未だに聞こえる2人の鳴き声が混じるせいか、それは異様さを一層とさせる。

 動く身体は陽の光を受け、ギラギラと煌めくと身を起こす。

 持ち上がる首を見上げれば、周りに生える木々を優に超える巨体が影を落す。

 その姿はどっかの怪獣映画にでも出てきそうな、いかついビジュアルの三つ首竜。

 そいつは三つの顔をこちらに向けると大きく口を開き、


「「「ギュシュアアアアアアアアアアアアッ!!!」」」


「ぎゃああああああああああッ!?!?」


 ドラゴンの奇声に対して俺も奇声を上げて後ずさる。

 いやいやマッテマッテ。

 ロリ2人が何も無いところから武器出してた辺りでそんな気はしてたけど、マジもんのファンタジー!?

 しかもこいつ俺狙ってる感じがするんだけど……気のせいじゃないよねコレ!


「あ、あぶない!! 浮遊する綿毛フルール!!」


 空中から聞こえる姫ちゃんの声に顔を上げれば、頭上が赤色で染まっている。

 その強い発光で視界がぼやけ、ピントを合せようと目を細めると――――――


 爆風と爆熱が身を包み、衝撃が俺の身体を吹き飛ばした。

 成す術も無く、俺は空き缶の様に吹き飛ぶと地面をバウンドする。


「ど、どうして……。何で浮遊する綿毛フルールが効かなかったの……?」


「姫ちゃん、ぼーっとしないでこっち来るよ!」


「で、でもニンゲンが!!」


「あれじゃ即死だよ!!」


 ―――やべぇ。スゲー身体があっちぃ。

 しかもスゲー痛ぇ。

 原付取った時に調子こいて事故った時とか比べもんになんねーくらい痛い。

 痺れがあるお陰で痛みが紛れてるのが幸いか……ケド、身体が思うように動かねぇ……。


「くそ、2人の周りに拒絶魔法璧シャイマ・ウォリアが展開してる……これじゃ簡単に近付けない」


「ニ、ニーア! アミィ! 2人とも落ち着きなさい!」


「ぐすっ、ひうっ、ふぇええええええ」

「うぁあああああああああん!」


 あーダメだってお姫ちゃん。

 子供は大声出せば出す程、泣き出すんだよ。

 叱られてるって思っちゃって余計パニくるんだよなぁ。

 あと目線も大事な。

 同じ目の高さで話さないと高圧的に受け取っちゃって、拗ねちゃう。


「こ、こうなったら私が始祖竜リントブルム化して―――」


「それこそ駄目だよ!?」


 弟の面倒見てっときに俺もやらかして兄貴にボロクソ言われたのを思い出すわ。


 『ダメっつってるのを全部俺にやってんじゃねーか!!』

 って反論したらぶん殴られたが。兄とは理不尽な生き物である。

 それは良いとして。


 こう言う時、チョコとか飴ちゃんでもあればなぁ。

 ……そうそう。このミルキィーキャンデーとかマジおすすめ。

 あとはそこのキャラメル・チャップスもいいよなー。



「贅沢を言えばジュエリードロップが一番かなー。

キラキラしてっから子供マジあれ好きなんだよなぁ―――って何で飴ちゃんがあんの?」


 倒れた先で見える馴染みある飴ちゃんたちを前に俺の意識は現実へ引き戻される。

 ……てか、さっきの痛みが綺麗サッパリ消えてるしどう言う事だ?

 おもむろに立ち上がって身体を見てみれば、あんな火炎攻撃を受けたのに火傷が一切無い。

 それどころか服も一切燃えていない。


「ニンゲン……? ズメイの攻撃を受けてどうして生きて」


 無事だった俺を見て、驚きの様子を見せるお姫ちゃん。

 束の間、竜の首がこちらを向いて再び俺をロックオンしたみたいで、顔を動かしながら口の隙間から灼熱を覗かせる。


「あぶな―――」


 声が聞こえると同時に逃げる暇も無く視界がまた赤から白色に染まる。

 先程と同じく、全身をやすりで擦られたみたいな激痛が走る。

 が、


「さっき程じゃねぇな。…………でもアツいし、痛いんじゃボケぇえええ!!」


 確信は無かった。

 しかし睨んだ通り、俺は無事だった。

 まぁめっちゃ熱かったし痛かったケド。


 ズメイとか言うドラゴンは何とも無かった俺を前に、スゲー動揺して首を傾げてる。


「まさか、このニンゲンはソーマから来たニンゲン……か?」


 これまた意味深な言葉を口にしてるなと顔を上げれば、宙に浮かぶイケメン銀髪は動揺しながら笑っている。

 隣のお姫ちゃんに関しては、何の事かと可愛らしく小首を傾げてる。


「魔法魔術に基づいた物を無効化にする存在……こいつ、界客そとびとだ」


 そしてそんな中、イケメンの一言で俺の特殊能力が判明する。

 俺はエクスカリバーも最強スキルも持ち合わせてなかった。

 だが代わりに魔法魔術無効化マジックキャンセルと言う……異世界殺しと言っても過言では無い、極悪スキル持ちだった様で。

ステータス

 

 名前 :加苅暁カガリサトル

 種族 :人間

 状態 :麻痺

 称号 :【コンビニ店員】

     【界客そとびと】 ←New!

 魔法 :???

 スキル:???

 耐性 :魔法無効化 ←New!

     魔術無効化 ←New!

    

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