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中学生と小父さんとの哲学的対話  作者: 佐々木三郎
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第3話 脳内ソフト開発システム

第3話 脳内ソフト開発システム

問題を解決しようとする意欲は脳内ソフトを生む



直也:人が発明をしたり、発見をしたりするとき頭の中で何がおこっとんやろか?

師匠:ほう、金を儲ける気になったか。結構結構。

直也:金儲けやのうて、脳の中の話。

師匠:貧弱な脳で何を考える。金儲けが一番じゃ。

直也:ほのうち儲けて師匠にたんと酒を飲ませるから質問に答えて。

師匠:殊勝である。今のことば忘れるな。されば、答えよう。 発明・発見とは問題の解決方法を見いだすことである。 問題とは必要である。必ず、要するから問題となる。

直也:前置きはええけん、早う脳の話をしていた。

師匠:自動販売機のようにすぐ出てくると思うな。慌てる乞食は貰いが少ない。レコードを例にとろう。エジソンは音を記録しようとした。何故か?金になると思ったからじゃ。録音するには先ず、音とは何ぞや、「敵を知り己を知れば百戦危しからず」というてな、

直也:よ、名調子。音とは空気の振動にござりまする。

師匠:空気の振動ではあるまい。振動である。声とは声帯のふるえである。

直也:空気がなかったらキコエンデ。空気の振動や。

師匠:空気は振動の伝達媒体にすぎん。水も、糸も、レールも音を伝える。よいか、『録音するには』という問題に対し、『音とは何ぞや』と考える、

これが脳内ソフトの起動といえよう。


直也:そのソフトはどないして出来るんかが知りたいんじゃ。

師匠:それが解明できればノーベル賞もんじゃ。経験的に事象の本質は何かと考えるのが解決の常套手段ソフト。音の本質は何か、振動である。振動であればそれを記録すればよい。ではいかに記録するか。

直也:糸電話とおんなじか。紙の振動を糸に伝え、あっちゃの紙を振るわす。

師匠:まあ、そういうことじゃが、お前がいうと安っぽいのう。

直也:安うても高うてもええんじゃ。本質が大事なんじゃ。う~ん、音は鼓膜が振動して脳が音と感じる。鼓膜はなぜ振動するか。

師匠:そういうことは分っておるとの前提で話しておる。小学生でも知っていよう。糸電話は音を伝えることはできても記録することはできん。が、解決の糸口にはなるぞ。振動とは震動源の震えが止まると終わるものだ。

直也:当たり前じゃ。振動しっぱなしでは五月蠅うてかなわん。騒音だらけになる。そうか、わかった。振動を凍結する。聞くときは溶かす。

師匠:凍結か、面白いことをいう。どうやって凍結するかの。

直也:糸はあかん。ふにゃふにゃじゃけんのう。振動をすぐにカタマラさないかん、エジソンはスズハクに針を置いたそうやない。なるほど、針の震えをスズハ クに写しとったのか。テープレコーダーは電気信号に、CDは数字にか。

師匠:それでよい。振動を置き換えるというてもよい。算盤は数を珠に置き換えている。これが分かれば録音はできたようなものじゃ。あとは手段と方法の問題となる。


直也:置き換えると言われますが、こんなことは子供でも分かることなのになんでエジソンが出てくるまでできんかったんやろ?

師匠:うむ。コロンブスの卵でないが、『人は過去に対して神になれる』。お前は録音機、CDなど実現されたものを見ているからそういえる。当時の驚きはいかばかりであったか。    

直也:御意。ほらびっくりこいでしもうたやろな。糸電話の糸をナゾったら紙が震えると考えたのやろか。

師匠:そうやもしれぬ。もう一つの理由は材料であろうな。どんないいアイデイアもそれを実現するには材料が要る。それに技術。

直也:そうですね。エジソンもよりよい材料を求めて工夫したといいますね。

師匠:機械工学などアイデイアは出尽くした感があるそうじゃ。新たな発明は新しい材料と技術によるときく。ダイナマイトもニトログリセリンを珪藻に染み込ませたに過ぎんと評価するむきもいるが、数万の材料を試して辿り着いたのが珪藻ということだ。してみれば、『天才とは99%の努力と1%のひらめき』という言葉の重みがしれよう。

直也:御意。エジソンもノーベルもこれじゃ。できた思った時は誰にも相談しとらんやろ?自分で決めなしょうないわな。

師匠:そうじゃのう。人に知られたくない。人より先に成功しなければならん。録音したい、安全なニトロにしたい、という思い・意欲が完成した姿を想像させるのではないかの。とすれば、何故想像できるのか、という本論 に入ろう。

直也:脳の中で変化が起こっておる、ということでありますな。

師匠:強い意欲が問題解決方法ソフトを脳の中で開発させることは経験的に知られていた。最近の医学では神経細胞が新たに生まれ発達していることが分ってきたらしい。やがてソフト生成のメカニズムも明らかになろう。

直也:経験があって科学が裏付けをする。

師匠:そうじゃ。科学の歴史は浅い。昔は経験で事足りた。理屈は必要でなかった。

直也:しかし、科学の発展で世の中進歩した。

師匠:それはいえる。科学は他に応用することを容易にする。エレベーター・ クレーンなどに使われている油圧システムはパスカルの原理を応用している。このアイデイアは古代エジプトですでに使われていた。ダムを数人で開閉していたという話はきいとろう。さらに、天才は経験していないものを想像する。思想というてもよい。

直也:レオナルド・ダビンチの飛行機をライト兄弟が実現した。

師匠:そうじゃ。ワシも最近まで思想なぞなんの役に立つと思うておったが、思想は時空を越えて伝搬するらしい。愛媛県に飛行機ができたのは  ライト兄弟に遅れること1月足らずということじゃ。その男が早ければ   ライト兄弟の名は世に出なかったかも知れぬ。まあ、それはさておき、思想、夢でもよい、が世をかえるといえるであろう。

直也:科学は思想や夢も追っかけるんか。想像は意欲から生まれるかのう。


師匠:意欲と経験じゃろのう。創造的体験。発明家・芸術家をみるとそう思う。

直也:意欲はどうしたらもてるんかの。

師匠:いろいろある。金儲けが一番じゃ。『人間の欲望は黄金に尽きる』と有名な作家がいうておる。エジソンもビル・ゲイズそうじゃ。

直也:急に俗っぽーなったなあ。

師匠:日本人は金儲けが悪いようにいうが、貧乏人の僻みじゃ。金儲けの結果が世に貢献しておればりっぱなことではないか。モーツアルトの作品は人々を幸せにするために書かれたか? 否、金のためである。生活のためである。動機と作品は別のものである。崇高な目的であっても作品自体がくだらないのはくだらない。

直也:おおせのとおりです。でありますが、人は金のために生きるのですか。

師匠:金は手段であって目的ではない。が、生活してゆくのに金なしでいけるか。自給自足の生活ができるか。使う分だけの金は必要であろう。

直也:金持ちでも発明や創作活動に励んでいる人もいますが。

師匠:金は必要なだけでよいのじゃ。つかわん金は邪魔になる(邪魔ではないがのう)。創造的活動は人間の本質的な喜びである。世間の評価など気にならなくなれば本物じゃ楽しいのじゃ。三昧という。悟りの境地じゃ。

直也:普通の人間は金儲けのためにやるのが手っ取り早いですか。

師匠:動機は何でもええ。成功したものが勝ち。成功をかさねると悟りの境地に至る。楽園には芸術も科学も不用である。この世では人生が厳しい故に芸術があり、問題がある故に科学がある。成功は失敗の積み重ねである。失敗で終われば失敗である。成功すれば失敗と言わぬ。何もしない奴は失敗も成功もない。限界に挑み神を知る。神とは人間を越えた存在である。その存在は虚か実か、また後日、改めて論じよう。


直也:うーん。感服致しました。コンピューターは人間を越えるでしょうか。

師匠:コンピューターは人間の道具である。故に人間を越えてはならぬ。とは申せ、記憶、演算、早さなどでは既に人間を越えている。されど『コンピューターは将棋では人間に勝てぬ』と羽生名人がいうておる。

直也:将棋はほうでも、チェスはコンピューターが勝っとる。やがては人間を 越えるのでは、

師匠:黙れ、将棋に勝ってからいえ。コンピューターは経験から推理はできても想像はできん。想像できんものが創造できるか。

直也:学習するコンピューターができとるし、人型ロボットもできとう。創造ソフトを組み込んだらいけるんちゃうん。

師匠:そのソフトは人間が開発したものであろう。ロボットがオリジナルソフトを開発できるのか。

直也:開発手順・手法を教えてやると頑張るやろ。

師匠:諄い。コンピューターは中国では電脳というらしいが人間のインプットした範囲でしかアウトプットできん。人間の脳のように想像し創造するソフトを開発する電脳をつくったらノーベル賞もんの話ではない。人間の根源を揺るがすことになる。遺伝子組み替え以上の問題である。

直也:できんとは断言でけんやろ。

師匠:断言できんでもあってはならぬ。

直也:あってはならんことが起きるんがこの頃じゃ。師匠の思うとおりにはならんかも

師匠:うるさい。コンピューターは人間を越えることは絶対にない。

直也:(師匠も逆らうと感情的になる。大人って冷静になれんのやろか)あいわかりました。ありがとうござりました。



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