13
気が付くと、こたつ机の両側に、佳織と佳澄がいた。いずれも、机に突っ伏して眠っている。俺のすぐ脇に、孝道が腕を枕にして転がっていた。
俺は、妻に手を伸ばした。
そっと、手に触れてみる。触れられる。温かい。柔らかい。
佳織の手だ!
「佳織!佳織!」
俺は嬉しくなって、乱暴に妻を揺り起こした。
「ん…」。妻は呻いて、ゆっくりと目を開いた。「何?お父さん」
まだ、少し寝ぼけているようだった。
「そうや!俺や!お前の夫の純平や!」
佳織の目が、大きく見開かれる。
「お父さん?!」。そう言って、飛び起きた。俺の方を凝視して、動きを止める。
俺も負けじと、妻を見つめ返した。
「佳織…、俺が見えるんか?」
「何言ってんの、当たり前やないの」
妻の目に、涙が浮かんだ。みるみる表情が歪んでいく。
その顔が、自分の涙で曇った。
佳織は、まるで子供のように、ワーッと泣いて俺の胸に飛び込んだ。俺は夢中で彼女を抱きしめ、その髪に顔を埋めた。
「お父さん…!純平さん…!」
佳織はしばらく、会いたかった、寂しかったと言って、俺の胸で泣き続けた。
「また会えるなんて思ってなかった!嘘やないんよね!夢やないんよね!」
実は夢なのだ。しかし、そんな残酷なことを言えるはずもなく…。
そうしているうちに、佳澄が目を開けた。
「ウソ…、お父さん」。娘は目を丸くして、俺を見た。こちらは、どちらかと言うと、幽霊でも見ているような表情だった。
孝道も体を起こした。
「…親父?!何してんだよ!こんなところで!」。いまいち、事態が呑み込めていないらしい。
しかし、確かに、そこに俺がいると分かると(夢なのだが)、二人とも涙で顔をグシャグシャにして、俺に飛びついてきた。
生きていたときのことを含めたって、これほど嬉しかったことはない。
人生は、例え死んだって愛に彩られている。俺の胸は、幸せでいっぱいだった。




